連載
#20 宇宙天文トリビア
激レアな「流星クラスター」撮影できた! 世界で10例ほどの報告
ハワイ上空に出現 5秒で15個ほどの流れ星
これまでに世界でも10例ほどしか報告されていない激レアな天文現象「流星クラスタ-」が、ハワイ上空に出現しました。どんな現象なのでしょう。(デジタル企画報道部・東山正宜)
日本のすばる望遠鏡があるハワイ諸島の最高峰マウナケア山(4200メートル)。
ここに国立天文台と朝日新聞社が設置している超高感度の星空ライブカメラが7月11日未明(日本時間11日深夜)、わずか5秒間に約15個もの流れ星が飛んだのを撮影しました。
そもそも、流れ星は、宇宙空間を漂っていた天体が地球にぶつかって大気圏で燃え尽きるときに光る現象です。
その天体が、あらかじめ何らかの理由で分裂していると、一度に複数の流星が相次いで飛ぶように見えます。
流星クラスターは1997年、日本流星研究会の木下正雄氏らがハワイ島で世界で初めて観測しました。このため、木下現象とも呼ばれます。
非常に珍しい現象で、これまでの報告は世界でも10例ほどしかありません。
今回の流星クラスターについて、国立天文台の渡部潤一上席教授は、1週間くらい前に分裂した天体だったのではないかと見ています。
「計算上、それくらいの時間があると、バラバラになった天体が100~200キロの範囲に散らばります。数秒間で相次いで流れ星になるように見えます」
いまは、みずがめ座δ(デルタ)南流星群が活発な時期で、確かに、今回のクラスターもみずがめ座の方向から飛んできているように見えますが、まだ由来ははっきりしていません。
朝日新聞宇宙部の星空カメラが過去にとらえた流星クラスターは、2021年7月、今回と同じように、みずがめ座の方向から10秒で10個ほどの流れ星が飛んだのが観測されました。もう1回は2023年4月でした。
こうした珍しい現象は、YouTubeライブを見ている常連の視聴者が見つけ、専用の掲示板に報告してくれています。
YouTubeチャンネル「朝日新聞宇宙部」は4月にチャンネル登録者数10万人を達成しました。一般の人たちが研究に貢献する「市民科学」のすばらしい舞台になっています。
国立天文台の渡部さんは「やっぱり、これだけ高感度で夜空を常時監視していると、いろんなものが見えますねぇ」と話します。
「カメラもすごいけど、3年で3回観測したということは、今まで見えていなかっただけで、かなり高頻度な現象なのかも知れません。今後、流星の軌道が分かったらますます面白いでしょう」としています。
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