梅雨に活躍する折りたたみ傘。しかし、便利な“ジャンプ式”の製品には実は危険なものがあります。飛び出した手元の部分が顔や身体に衝突し重篤なけがをすることもあるとして、独立行政法人・国民生活センターが注意を呼びかけています。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
6月、国民生活センターはSNSで「雨の日が多い季節です」「ジャンプ式折りたたみ傘の収納時に、顔などにけがをする事故が発生しています」として、注意喚起をしました。
動画ではガラス板に向けられた折りたたみ傘の手元の部分が飛び出し、「ガシャーン」という激しい音を立ててガラス板を破壊する様子を紹介しています。SNSには「慣れないとケガする」「これはなかなか怖い」と驚きの声が集まっています。
同様の動画を配信する同センターのYouTubeアカウントでは、“驚異の破壊力”として警戒を呼びかけています。
同センターは2008年5月にジャンプ式折りたたみ傘の危険性について注意喚起を公表。2013年には家庭用品品質表示法が一部改正され、ジャンプ式折りたたみ傘は「傘の開閉時およびシャフトの伸縮時には、顔や身体から離して使用する」ことを表示するよう義務づけられました。
しかし、注意喚起の実施後も、同センターなどにはジャンプ式折りたたみ傘に関する相談が寄せられ、2014年度以降は危害・危険情報が13件、商品テスト依頼が3件あり、そのうち2件は治療に1カ月以上を要する事例だったということです。
近年では、手元の部分を収納する途中で手を放しても、手元の部分が飛び出さずに止まる機能を備えた商品も販売される一方、この機能を備えていない商品も販売されており、市場には両方混在している状態であるため、消費者への情報提供をすることにしたといいます。
ジャンプ式折りたたみ傘では、手元の部分を収納する際、傘本体および手元を持ち、手の力で押し縮めて収納します。中にはバネが内蔵されており、押し縮められたバネが伸びようとする力で傘本体を開いたり、傘の骨組みを伸ばしたりする仕組みです。
そのため、手元の部分を収納する途中で手を放すと、縮められたバネの力で手元の部分が飛び出し、顔や身体に衝突し、ケガをする危険性があります。
同センターの実験によれば、手元の部分を収納する力は最大で4~8キログラム重と大きく、また継続的に力を加える必要があるため、力の弱い方は収納しづらい可能性がありました。
さらに、飛び出した手元の部分が衝突したときの衝撃力は62~159キログラム重と大きく、顔や身体に衝突した場合、重篤なケガにつながる可能性がありました。
参考として、厚さ約4mmのガラス板に、飛び出した手元の部分を衝突させたところ、ガラス板が破砕しました。
同センターは対策として「使用する際は取扱説明書をよく読み、十分に注意しましょう」「飛び出し防止機能が備わった商品を選択するようにしましょう」と訴えています。