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連載

#14 大河ドラマ「光る君へ」たらればさんに聞く

「推しに褒められ、寿命が鶴ほど延びた」清少納言は〝オタクの元祖〟

清少納言が「四月、祭りのころいとをかし」とつづった「葵祭」。2024年の葵祭で「糺の森」を進む牛車
清少納言が「四月、祭りのころいとをかし」とつづった「葵祭」。2024年の葵祭で「糺の森」を進む牛車 出典: 2024年5月15日、京都市左京区の下鴨神社、朝日新聞・新井義顕撮影

目次

大河ドラマ「光る君へ」。中宮定子さまに仕える清少納言が「枕草子」を書いて励まし、定子さまが読み上げるシーンも話題になっています。最新回では「うつくしきもの」の段が読み上げられ、清少納言を推す編集者・たらればさんが感じたことは……。そんなたらればさんに、枕草子で特に気に入っている章段を聞きました。(withnews編集部・水野梓)

定子さまから「姿が見えるようね」

水野梓・withnews編集長:大河ドラマ第23回「雪の舞うころ」では、出産を間近に控えて白装束の定子さま(高畑充希さん)が、同じく白装束の清少納言(ファーストサマーウイカさん)の枕草子を読み上げ、「姿が見えるようね。さすがである」と声をかけましたね……!たらればさん……!!!

たらればさん:突はい…この回は……本当に、、、突然の供給で、、、心が、、、いっぱいに、、。。
たらればさん:(一呼吸おいて)定子さまがドラマ内で読み上げていたのは、「うつくしきもの」の段ですね。
鶏の雛(ヒヨコ)が、足が長くて白く可愛げに、まるで着物を短く着たような恰好で「ぴよぴよ」とやかましく鳴きながら、人の後ろや前を歩いてゆくのは趣深い。また、親鳥と一緒になって連なって歩いてゆくのも、なんともかわいらしい。
たらればさんXのポスト
たらればさん:定子さまが「あの頃のことが、そなたの心の中で生き生きと残っているのであれば、わたしもうれしい」とおっしゃって、ききょう(清少納言)が「しっかりと、残っております。しっかりと」と言いますが、私も「わたくしの心にも残っております!!!!」と申し上げたいです。

定子さまが続けて「あの頃のことが、そなたの心の中で生き生きと残っているのであれば、わたしもうれしい」とおっしゃって、ききょう(清少納言)が「しっかりと、残っております。しっかりと」と言いますが、私も「わたくしの心にも残っております!!!!」とテレビ画面の前であらぶっておりました。

あんまり嬉しくて、寿命が鶴の齢に…

水野:今後の展開も気になるなか、枕草子を愛するたらればさんに酷な質問をリスナーさんからいただいています……。

枕草子の中で、好きな章段は何でしょうか!?

たらればさん:これはねえ、悩みますよ。

「新訂 枕草子」(著:河添房江・津島知明)が角川ソフィア文庫から出たばかりなので、ここから紹介する章段は、それにもとづくものです。

それが上下巻に分かれているので、どうしよう、上巻、下巻、どちらかに偏らないよう満遍なく……などと考えていたら本当に時間がかかってしまいまして……。

水野:(笑)。たらればさんの苦悩が伝わってきます。
出典: Getty Images ※画像はイメージです
たらればさん:悩みに悩んで、最初に挙げるのは261段「御前にて人々とも」です。内容をざっと紹介します。

清少納言がほかの女房と雑談しているある日、定子さまが入ってきました。

そこで清少納言が、「世の中が腹立たしく、どこへでも行ってしまいたい、消え去りたいと思うことがあるんです、と説明します。そんな時でも、真っ白で「何を書いてもいい」と言われた紙があると、そういうしんどい気持ちがすっかりなくなってご機嫌になります」、と言います。

定子さまは「そんなことで気持ちが上がっちゃうなんてずいぶん簡単ねえ」と言うんですが、それからしばらくたった後日、清少納言に心悩むことがあり、里下がりした時のことです。

(※この里下がりの理由にはいろんな説がありますが、周囲の女房から「清少納言は道長のスパイではないか」と噂され、「いま自分は定子さまの身近に居ないほうがいいのでは」と考えて里に下がった説があります)

すると、清少納言のもとに、以前の雑談を覚えていた定子さまから真っ白い上等な紙が20枚ほどバサッと送られてきました。

その贈り物には、「寿命を延ばすお経は書けないだろうけど、紙を送るから早く私の元に戻ってきてね」という定子さまからの手紙が添えてあって、清少納言は感動して、
かけまくも かしこき神のしるしには 鶴の齢(よはひ)となりぬべきかな
という和歌を詠んだそうです。

「あんまり嬉しくてわたしの寿命が鶴になりました(=千年延びました)!」。

つまりこれ、「オタクが推しに褒められて寿命が延びる」の元祖なんですよ!

水野:ここに元祖があったか!

たらればさん:私は常々「オタクは尊死している場合じゃない、長生きして推しの尊さを広めるべき」といっていますが、その元祖は清少納言先輩だったと。

ちょっと不思議な性癖の清少納言

水野:次の好きな段はどうでしょうか。

たらればさん:二つ目も下巻からになってしまったんですが……182段「病は」です。

胸、もののけ、食欲がない感じ。病といえばこれこれこれ……と紹介するんですが、清少納言はちょっと不思議な嗜好を持っていまして。

いきなり「髪の毛が丹精でふさふさしていて、栄養状態がよく、美しく見える上級の姫君が、歯をひどく病んで、顔を真っ赤にしている姿は風情がある」と書き始めます。

水野:ふ、風情がある…?

たらればさん:ここまで詳細に書いているということは、この歯痛に苦しむ人、具体的なモデルがいたんだと思うんです。

誰なのかは分からないんですけど、ここに枕草子の特徴のひとつがあると思っています。清少納言は観察力があって表現力がありすぎるので、ちょっと変な話でもふんふんと読めてしまうという。

水野:たしかに、ちょっとおかしいのに具体的に想像できてしまって面白いです。
京都市右京区にある車折神社の「清少納言社」。清少納言がまつられています
京都市右京区にある車折神社の「清少納言社」。清少納言がまつられています 出典: 水野梓撮影
たらればさん:このすぐあとに、「そんな女の人が、気分が悪くなって伏せっているとき、吐くために起き上がって(邪魔にならないように)髪の毛を後ろ手で結んで吐く様子がいわたわしい」とか、そういう時にお見舞いのやり方で男の人の普段見られない趣向が出てくるよね、とか。「マニアックすぎない、それ?」という。

観察眼が鋭い人は、弱っていることもこんなに克明に書けるんだと思いましたね。

水野:(笑)。

たらればさん:いま日本中の枕草子のイメージが「美しい」だと思うので、「そればかりではない、もっと深くて味わい深いぞこの沼は」というのを伝えたくて。

きっと、「そうだな~」「分かるな~」だけでなく、「変だなぁあっはっは」とか「こ、この作者、ここまで言っちゃって大丈夫??」というところがあったからこそ、枕草子はここまで広がったのだと思うんですよね。

そういう意味で、清少納言は一流のエンタメ作家でもあるのだと思います。

「自分のためのおしゃれ」を書いた人

水野:ほんとにそうですね。何かを笑い飛ばす観察眼もあったんだなぁ、と思います。三つ目はどうでしょう。

たらればさん:27段の、「心ときめきするもの」です。上巻からも入れてみました。

「雀のひなを飼う、幼児を遊ばせているときに前を通る、上等な焚き物をたいてひとりで寝っ転がっているとき、ちょっと曇っていたとしても上等の鏡をのぞき込んだとき……」。

そのうえで、これが世界で最初かどうか分かりませんけど、ここで清少納言は「お化粧やおしゃれ、清潔にしていることは、異性のためじゃなくて自分のためだよ」という趣旨の文章を書いています。

「頭を洗って、かぐわしい着物を着ているとき、見ている人がいなくても、誰に見せるわけでもなくても、心はとても好ましくなる」と。

水野:自分のためのおしゃれ~! すごく共感します!
たらればさん:「別に化粧や香水は、おまえらのためじゃねえよ」、「自分の気分を上げるためにやってんだよ」と、そういうことをハッキリ言うところが、清少納言の本領発揮。彼女が自立している女性というところがたくさん出てくるんです。

水野:清少納言のイメージが、今年に入ってどんどん変わっています…!

たらればさん:ぜひ改めて、枕草子を手にとってみていただきたいですね。
◆これまでのたらればさんの「光る君へ」スペース採録記事は、こちら(https://withnews.jp/articles/keyword/10926)から。
次回のたらればさんとのスペースは、7月7日21時~に開催します。

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