人気のサウナ、しかし、入り方によっては健康を害することも――。近年、やけどなどの外傷の事故が倍増し、脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などを引き起こす「ヒートショック」が発生するおそれもあるとして、消費者庁が注意喚起をしています。どんな危険があるのでしょうか。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
サウナは健康への効果だけでなく、爽快感やリラックス効果などが注目されています。入浴施設だけでなく、スポーツ施設などにも普及しており、近年のメディアでの流行もあり、日本でも社会に浸透しています。
一方で、サウナ浴をする人に事故が発生するケースもあります。その内容はやけどや打撲といった外傷から、心筋梗塞などの重篤な病気までさまざまです。
消費者庁などが運営する事故情報データバンクによれば、2024年4月末日時点で、サウナ浴に関する事故情報が78件登録され、受傷者数は82人です。事故情報を年度別にみると、2014年度から2021年度までは平均して4件程度だったものが、2022年度以降はそれぞれ10件と倍増しています。
受傷内容は「やけど」が31件、「切り傷・擦り傷等」が24件、「骨折・打撲」が14件の順に多く、受傷者の年齢は「40~59歳」が28人、「60~79歳」が25人です。
このうち40歳未満の受傷内容は「やけど」や「切り傷・擦り傷等」などの外傷がほとんどですが、40歳以上の受傷内容は、外傷のほか、「めまい・意識障害」や「循環器障害」なども含まれています。
傷病の程度は、不明なものを除くと「1~2週間」が18人と最も多く、次いで「治療1週間未満」が14人、「1カ月以上」が13人。比較的、軽傷者が多いものの、重傷のケースも一定の割合で発生していることがわかります。
中には、70代の受傷者が、意識を失っていた時に接していた部分に重度のやけどを負い、右足の指を5本切断し、皮膚移植のため2回手術したケースもありました。
消費者庁は「掲示されている入浴上の注意事項を確認し、正しい利用を心がけましょう」とした上で、「体を温度に慣らさずいきなりサウナ室に入る」「我慢して長時間のサウナ浴をする」「飲酒後にサウナ浴をする」などについて、「危険な入り方」として注意喚起をしています。
また、最近では、サウナ浴後に水風呂に入り、その後、外気浴を行う入浴方法を何回か行い、爽快感やリラックス効果を得る=“整う”ことを目的に、サウナを利用する人もいます。しかし、この入浴法には危険性があります。
消費者庁によれば、脱衣後にすぐサウナ室に入る、サウナ室から出てすぐに水風呂に入るなどといった「急激な温度変化を伴う行為」は、「いわゆるヒートショックのような状態を自ら起こすことにもつながり、大変危険」です。
ヒートショックとは、暖かい場所から急に寒い場所に行ったり、逆に寒い場所から暖かい場所に行ったりすると、急激な温度変化で血圧や心拍数が大きく変化すること。
サウナの場合は熱により一旦は血圧が上がるものの、体が温まるにつれ血管が広がり、血圧が下がります。そんなときに急に水風呂に入ると、また血圧が急に上がって、血管が破れる脳出血、血管が詰まる脳梗塞や心筋梗塞などの危険性が高まります。
消費者庁は、過去に心筋梗塞を起こしたことのある50代の受傷者が「スポーツクラブのサウナを利用中、心臓発作を起こし3日間入院」「医師からサウナ等は利用しないよう言われた」という事例を紹介しています。
消費者庁は、サウナ室や水風呂に入る前は「シャワーで体を流すなどして、徐々に体を温度に慣らしましょう」と推奨。
「個人差はあるものの、若年層に比べて血管が硬くなる傾向のある高齢者は、急激な温度変化に伴う血管の伸び縮みに対応できず、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞などにつながるリスクが高いといわれています。
水風呂が苦手な方や入ると体調が悪くなるといった方は、無理に水風呂に入る必要はなく、自身の体調に合わせ、サウナ浴と外気浴を交互に行うなどの入り方なども検討しましょう」
また、「サウナ室内で体調に異変を感じるなどした場合は、すぐに周囲の人や施設の従業員に知らせましょう」と呼びかけています。