連載
#4 U30のキャリア
前向きだった就活が〝恐怖〟に 「早くやめたい」一心でもらった内定
「就活サイト恐怖症になっていました」
最初は就活に前向きだったのに、途中から「就活サイト恐怖症」に。内定を得ながらも、卒業後のファーストキャリアに正社員を選ばなかった理由とは――。
現在、都内で2つの仕事を掛け持ちしている23歳の女性。
昨年の春から、都内のコワーキングスペースでフルタイムの契約社員として働きつつ、月に2回ほど、別のコワーキングスペースでアルバイトとして働いています。
「最初は就活に対してすごくやる気があったんです」
自身の就活を思い出しながら、女性は振り返ります。
大学3年生になりたての頃、大学から就活にまつわる情報が共有されるようになったという女性。適性検査「SPI」の講義があったり、インターンに行くことを勧められたり……。就活に便利なサイトの紹介もあったそう。
「勧められたサイトは全て登録していました。『就活嫌だなあ』という気持ちはありつつも、『やるか!』という感じで始めました」
「最初は何の疑問もなかった」という女性ですが、インターンの選考を機に考えが徐々に変わっていったといいます。
3年の夏にあった、企業のいわゆる「サマーインターン」に複数申し込んだ女性。クリエイティブな業界に興味があったこともあり、広告やエンタメ業界など数十社に申し込みをしたそう。
ただ、すべて、書類選考で落ちてしまいました。
「興味のある会社はあったけど、上には上がいるというのを実感してしまったんですよね。私の大学は名の知れたところではなく、留学のことを話す他大学の友人もいる中、私はコロナ禍で過ごした大学時代にがんばったこともなく……」
他方、バイト先の友人からは、インターン先での出来事を聞かされ、「だいぶ落ち込んでしまいました」。
「この先どこにも就職できないし、働けない」と思い込んでしまったという女性。
「もう無理」という気持ちを抱えながらも、3年の冬の時点では業界を絞らず、いくつかの会社にエントリーをしていました。
ただ、その頃にはインターンでの挫折のショックや、就活の「作法」を知り、「就活自体に嫌悪感を持ってしまっていた」といいます。
「リクルートスーツを着ないといけないとか、髪色は黒じゃないといけないとか、『そこを気にしないといけないの?』と思いはじめると、就活が宗教のようにも感じ始めてしまったんです」
そうなると、就活にも身が入らなくなり、就活に使っていたアプリをすべてスマホから消してしまいました。
「就活サイト恐怖症になっていました」
「就活を早くやめたい」一心だったという女性。1社のみ最終選考まで残り、「落ちても受かってもここで絶対に就活をやめる」と固く決意して最終面接に臨み、結果としては内定をもらいました。
ただ、就活をやめたいという気持ちを優先させた結果、中途半端な形でもらってしまった内定でもありました。
内定を辞退するかどうか迷う中、4年生になってから女性は新たなバイトを始めます。それが、いま契約社員として働いているコワーキングスペースです。
ここでの仕事にやりがいを感じたという女性。
スタッフから進路を尋ねられ、内定先に就職するかどうか迷っていることを打ち明けると、契約社員としての選択肢を示されたといいます。
コワーキングスペースでのコミュニティー作りに興味を持ち始めたこともあり、内定を辞退し、現在に至ります。
学生時代、女性は80人規模のシェアハウスに半年ほど住んでいたことがあります。そこには、学校の先生や会社員、IT企業に勤めつつ副業でYouTuberをしている人、フリーランス……様々な人がいました。
「会社に属さない生き方もあると、いまとなってはこのときから気付いていたのかも知れません」と女性。
「いまは自分の軸を少しずつ探している感じです」
今後は個人事業主として生計を立てられるようなキャリアを考えたいといいます。
また、女性は自身の就活を振り返り「失敗だったとは思っていない」と話します。
「『いいな』と思う働き先に出会うタイミングは人それぞれ。最初に就いた仕事を一生続けるという時代ではなくなっていることはすごくありがたい」
まだまだ「新卒カード」が強い時代ですが、「自分のタイミングで、希望する就職先を選ぶことが普通になればいいなと思います」。
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連載「U30のキャリア」
コロナ禍を経験、オンラインコミュニケーションが増加、混迷を深める社会情勢――。
そんな令和の時代を生きる20代以下のみなさんは、人生をどう選択し、キャリアをどう考えているのでしょうか。
経験談やデータを元に、多様な側面から見つめます。
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