ネットの話題
「懐かしい」緑色の〝鳥〟今どこに? はっさくや甘夏むくとき大活躍
実は「ミニー」という名前がついています
ネットの話題
実は「ミニー」という名前がついています
はっさくや甘夏の季節です。甘味と酸味、ほんのり苦みもあっておいしいけれど、厚めの皮はむきにくい……。そんな時に大活躍する〝プラスチック製の鳥〟が、SNSで「懐かしい~!」「すごく便利だった」と話題になりました。筆者が子どもの頃、実家でも使っていたあの鳥。実は「ミニー」という名前がついているそうです。製造元を取材しました。
幼い頃、筆者の実家や祖父母の家には〝緑色の鳥〟がいくつもありました。子どもの手では硬くてどうにもうまくむけない厚皮みかんが、〝鳥のくちばし〟を借りて切れ目を入れるとむきやすくなるのです。
実家を離れてからというものその存在を思い出すことはほとんどありませんでしたが、今年1月、SNSで話題になっている〝鳥〟を発見。そこで初めて「厚皮みかんの皮むきミニー」という名前がついていることを知りました。
いつ発売して、今はどうなっているのか。もっと「ミニー」のことを知りたい……。どうも製造元は農業機械メーカーのようです。なぜ農業機械メーカーが……?
「ミニー」を製造販売するのは、大阪府八尾市の農業機械メーカー向井工業です。
担当者によると、「ミニー」は先代の社長がデザインした商品。先代は20年前に他界しているため、詳しいことは不明としつつも取材に答えてくれました。
「ミニー」が誕生したのは今から60年ほど前の1965年頃。現在は農業機械を製造販売していますが、1960年の創業時はプラスチック成型加工販売をしていたそうです。
「当時は個人事業主で、プラスチック成型の下請けを行っていました。下請けですと取引先からの受注待ちで主導権は取引先にあります。『オリジナル商品を作って、儲けの少ない下請けから脱したい』という思いから『ミニー』を商品化したと聞いています」
先代がデザインをして、名前も付けました。
「果物が好きな先代でしたので、厚皮みかんの皮むきを思いついたのかもしれません」と担当者。しかし、「なぜ鳥の形にしたのか、『ミニー』という名前にしたのかは分かりません」と話します。
「ミニー」は、商社を通じて愛媛や和歌山などのみかんの産地から出荷される箱などに付属されたり、JRがまだ国鉄時代に駅で売られていたネット入りのみかんにも付けられたりしたそうです。
地域の果物店やスーパーなどでも、みかんを購入した際の〝おまけ〟として配布されることもありましたが、「単体では購入が難しい便利グッズだった」といいます。
〝おまけ〟な存在であった一方、色は赤、緑、黄色の3色展開で、出荷量は年間2000万枚ほどあったそうです。「その後、20年程度は順調に販売しておりましたが、みかんの流通形態も徐々に変わり、販売量は減少しました」と担当者は振り返ります。
1975年から農業機械の製造販売が主な事業となっている向井工業。1985年からは石垣島の自社農場で栽培したウコン茶も販売し、2008年からネット通販にも力を入れています。
ウコン茶のほか、「自社商品でネット通販に加えられるものはないか」と白羽の矢が立ったのが「ミニー」でした。
3色から7色に配色を増やし、「厚皮みかんの皮むきミニーお試しセット7色14枚」として販売しています。口コミを見たみかんの直売農家や道の駅などから大口注文も入るようになったそうです。
ネットでの購入者は40代以上が多いといいますが、今回SNSで話題となったことで「20代の方からもご購入いただきました」と担当者は話します。
「SNSでバズったのには驚きました。2日間で400個ほど受注がありましたが、今までに経験のないことです。3日間『ミニー』の出荷に追われました」
ネット通販の口コミでは、「子供の頃よく使っていて、いつの間にかどこかにいってしまい、ずっと欲しいと思っていました」「母が使っていたのですが、いつのまにか失くしてしまったと。こちらを見つけて迷わず購入しました」「小さい頃におばあちゃんちや実家で使ってた記憶があり、懐かしさもあり即購入しました」と懐かしむ声が並びます。
担当者は「いつまでもみなさんの記憶に残っていることをうれしく思います」と話しました。
向井工業が紹介している使い方は以下の通りです。
(1)みかんの軸の周りに、くるりと切れ目を入れてから、皮を丸く取り除きます。
(2)縦方向に何本か切れ目を入れてから、皮をむきます。切れ目が入っているので、皮は非常にむきやすいです。
(3)小房もくちばしで切れ目を入れてから、皮をむきます。
(4)『あっ!!』っと言うまに完成です!!
1/10枚