国内最大手の食事管理アプリ「あすけん」。同ブランドはアプリだけでなく、近年、「これしか作らない」「短い」とうたうレシピ本も出版しています。しかし、レシピ通りに作れば、アプリを使わなくなってしまうのでは? 同サービスの戦略や、おすすめのメニューについて話を聞きました。(朝日新聞withHealth)
食事管理をする上でラクなのは、実はチェーン店での外食やコンビニ食。カロリーや栄養成分が、生活者にも明確にわかるからです。しかし、毎食利用するのは、正直あまり経済的ではありません。
一方で、懐には優しいものの、何をどれくらい食べていいのかがわかりにくいのが自炊。そんな悩める生活者に手を差し伸べているのが、ダウンロード数が900万を突破した国民的食事管理アプリの「あすけん」です。
この「あすけん」が2023年12月、初の公式レシピ本『結局、これしか作らない!短いレシピ』(ワニブックス)を発売。1カ月で累計発行部数2万部を突破するなど、話題になりました。
考えてみれば、食事管理アプリは「食べたものを記録する」という、ある意味で受動的なサービス。それが、「レシピ本を出版する」ような能動的なアプローチをするのはなぜなのでしょうか。
同アプリを開発・提供する株式会社asken取締役で管理栄養士でもある道江美貴子さんは「現時点で自分の健康に関心のない人を振り向かせるにはどうするか」が狙いだったと話します。
「食事管理アプリを使う手前にも、たくさんの人がいるはずです。『アプリは抵抗あるけどレシピ本なら生活に取り入れやすい』という方もいるのではないでしょうか。そもそものモチベーションがないと、人は情報を受け取ろうとしません。
そうした方に、健康診断の結果が帰ってくるなど、何かのきっかけが訪れた時に、『あすけん』の情報が近くにあるという状態を作りたいと思っています。そのため、弊社ではテレビCMなどによる宣伝もしています」
他にも、ダイエットをするとき、例えば鶏むねとブロッコリーとゆで卵のような「いつも同じものを食べている」といった“あるある”。これについても「いい食材ではありますが、食べる楽しみという面では、工夫がないと飽きてしまいます」と道江さん。
「でも、忙しい日々の中で自炊をするのはとても大変ですよね。だから、簡単だけど栄養バランスが考えられていて、食べる楽しみも味わえるものを作りたいと思っていました。
一食の献立で500kcal以下。カロリーはもう計算しなくていいし、栄養バランスもばっちり。『それさえ作ればいい』というようなレシピを実現したかったんです」
しかし、こうしたレシピが普及したら、「あすけん」を使わなくなるのではないでしょうか。そんな質問に、道江さんはこう答えます。
「すべてを自炊にするのもまた難しいでしょう。さまざまな選択肢を用意して、長い目で見て持続可能な食習慣を用意したいと思っています。
入口はダイエットでも、簡単なレシピでも、『あすけん』を通じて食事の選び方を身につけていただけるようにしていきたいです」
そんな『結局、これしか作らない!短いレシピ』から、簡単でしっかり食べ応えのあるおすすめレシピを、道江さんにコメントと共に選んでもらいました。
<サバ缶キムチ炒め>
道江さん:サバ缶とキムチがあれば簡単に作れる一品です。サバ缶は保存もしておけるので、買い物が面倒な時に活躍します。1缶でたんぱく質が39gも摂れ、魚の油は中性脂肪を下げるDHAが豊富です。
<レンジでさっぱり塩昆布チキン>
道江さん:ダイエット中に活躍する鶏むね肉をレンジでチンするだけで簡単に作れるレシピです。塩昆布との相性もバッチリです。脂っこい料理が続いた時の調整メニューとしてお勧めです。
<ささみとピーマンの和風マヨ炒め>
道江さん:ささみはヘルシーで安価なお肉ですが、調理法によってはパサパサしていまうことも。片栗粉をまぶしてマヨネーズと炒めることで、驚くほど柔らかくなりますよ。