連載
#197 #小山コータローの4コマ劇場
ちびっ子相撲から〝飛び級〟したいのは…相当ぶっ飛んでる兄の助言
兄は策士なのかなんなのか
とっぴょうしもない体験といえば、中学1年生頃の夏休みの出来事が思い出されます。
実家にいた頃、僕の部屋は2階にありました。2階からは父が花を育てている庭が見えます。
その日、蒸し暑さに起こされた僕は、寝ぼけ眼のままメガネをかけ、窓を開けてそよ風に身体を預けていました。メガネも気持ち良さそうにしています。
開けた窓を背に部屋のドアへ向かって歩き出したところ、部屋の照明から垂れた紐の先端についたプラスチックが、メガネの眉間の部分に引っかかったのです。
しかし僕の若さは誰にも止められませんよね。
「そのまま歩けば外れるだろう」
そんなポジティブ思想をまとった僕は、こうなるともう目の悪いイノシシです。
そのままドアに向かって歩き出したましたが、紐に吊り上げられる形でメガネがどんどん上に上がっていきます。
しかし僕はそれでも歩き続けました。
すると、メガネは完全に紐に吊り上げられ、僕がドアに近づく頃にはもう頭頂部まで競り上がっていました。
そしてそのままメガネは僕の顔から飛び立ち、振り子の要領で「ブォーーーン!」とターザンよろしく紐を利用して窓を飛び出していきました。
「俺のメガネが夏を満喫している!」
そんな思いを胸に僕は窓から飛び出していったメガネを羨ましく思いました。
「なんで???」
庭からは母の声が聞こえました。なんでと言われても理由なんかありません。
これが夏だよ母さん。
<こやま・こーたろー>
漫画家。「違和感」を作風とし、漫画家のSNS「コミチ」やTwitterで毎日4コマ漫画を発信中。前後関係を無視したセリフや、突拍子もない理不尽な展開が得意。初の書籍「デリシャス・サンド・ウィッチーズ」(扶桑社)発売中。Twitterアカウントは@MG_kotaro。
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