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連載

#19 #令和の専業主婦

〝転勤妻〟キャリアの悩み 「能力度外視で狭まる選択肢」どうしたら

就職を希望する先の面談でも「いつ転勤?」

ライフキャリアコーチの山口由香子さん=本人提供
ライフキャリアコーチの山口由香子さん=本人提供

目次

転勤族のパートナーを持つ人の中にはこの時期、そわそわし始める人もいるのではないでしょうか。自分ではコントロールできないことも多い、パートナーの転勤。これまで400人以上の女性に働き方の悩みなどを聞き、自身も「転勤妻」としてパートナーの転勤に同行しているライフキャリアコーチの山口由香子さんに、転勤妻の働き方について聞きました。

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アイデンティティーロスになる人も

私は、2021年からコーチやキャリアコンサルタントの資格などを生かしながら、400人ほどの女性の相談にのってきました。
同じく2021年からは「転勤妻」(転勤族の妻)のコミュニティーを運営しています。これまでの参加者は累計100人にのぼります。

そのコミュニティー内外で聞く転勤妻の一番の悩みは「キャリア」です。

仕事を辞めるか辞めないかはもちろんですが、パートナーの転勤はコントロールできないものであることから、自分自身のキャリアプランが立てづらいのです。
例えば、転勤するパートナーに同行するとなると、休職もしくは退職も選択肢になり、1社にとどまり続けることが難しくなる場合も。そうすると、昇進や昇給が見通せなくなります。自分一人で決められないことが多すぎて悩んでいます。

さらに、転勤先が海外となると、国によっては同行した場合にビザや勤務先の就労規則の関係で働けなくなり、「ブランク」がうまれます。そのブランクにより、アイデンティティーロスになる人も中にはいます。

働きたいのに働けない

私自身も、転勤妻で、現在はベトナムにいます。
2017年に、新卒3年目だった26歳のときに転勤族の夫と結婚しました。
仕事も「まだまだこれから」という時でしたが、妊娠がわかり、退社しました。というのも、当時、夫は香川県、私は東京という別々の土地で暮らしながらの生活だったのですが、私のいた会社では、産休育休後は産休取得前の部署(東京)で復帰を、と提示されました。

そうなると、東京で子育てを一人でしなくては行けない可能性もでてくるわけです。
それはできないと、産休取得前に香川県に移り住むことを決めました。

そこから転勤妻としての人生が始まりました。
最初の壁は、子どもが1歳になった頃。「そろそろ社会復帰がしたい」と、職探しをはじめました。その矢先、夫の転勤が決まり、香川での就職は断念しました。いまはリモートでできる仕事もだいぶ増えた印象ですが、当時はコロナ前で、リモートで働くという意識はいまほどではありませんでした。

20代後半、私としてはまだバリバリ働きたいと思っているのに働けないフラストレーションがたまっていました。
転勤族のパートナーがいると伝えると、就職を希望する先の面談でも「いつ転勤?」と聞かれます。企業側の視点に立つと、それを聞く必要があるのもよくわかる一方で、私の能力を度外視して、境遇で選択肢が減ってしまう現状に悲しい気持ちになります。

「私としてはまだバリバリ働きたいと思っているのに働けないフラストレーションがたまっていました」。写真はイメージです=Getty Images
「私としてはまだバリバリ働きたいと思っているのに働けないフラストレーションがたまっていました」。写真はイメージです=Getty Images

「私なんて」ではなく「私もできる」にするために

結婚前は、人材系の企業で働いていて、ファッション業界の採用支援に携わっていました。その際、熱意がある良い会社でも、知名度がなく小規模だと採用が成功しないというケースに出会うことがありました。

いまになって思えば、転勤妻は小規模な企業と似ています。「転勤妻でしょ」「小さな企業でしょ」など、レッテルを貼られている状態は社会的に優位ではありません。
レッテルをはがし、本来のポテンシャルを最大化するためにはどうしたらいいか考え続けています。

そのための道筋として、転勤妻を雇用する企業側が整えるべきは、リモートワークなど、働き続けられる環境の整備だと考えます。もう一つは、転勤妻本人がフリーランスで仕事をするという選択肢を持つこと。一つの企業に雇用されることに縛られない働き方にも目を向けられると可能性は広がると考えます。

もう一つ提案したいのは、急に正社員としての雇用関係を結ぶのではなく、新しいことに挑戦したい人が負担や責任を感じすぎずまずは気軽に働けるような「大人のインターン」のような選択肢。
転勤妻に限らずですが、一度仕事から離れた人にありがちなのが「自分にはなにもできない」という自己認識です。
パートナーの転勤を機に専業主婦になった人と話をしていると、「自分には何もない」と打ち明けてくれる人が相当数います。ただ、よくよく話を聞くと、その人にしかない経験やスキルをお持ちの方もいらっしゃいます。

自分の可能性を最大化しつつ、ゆるやかに社会復帰し、成果が認められ、次のステップに進めるような機会をつくれるといいのではないかと思います。

今後の日本の人材不足を考えたときに、何かしらの事情で「ブランク」のある人をいかに社会で活躍できるようにするかは社会課題です。「私なんて」ではなく「私もできる」と自己肯定感を高めてもらうことは大切です。

「私なんて」ではなく……。写真はイメージです=Getty Images
「私なんて」ではなく……。写真はイメージです=Getty Images

心のよりどころになりたい

パートナーの転勤が決まったときに自分の仕事のことはもちろん、子どもがいれば子どもの環境整備、引っ越しの段取りなど情報収集をしないといけないことがたくさんあります。

私が運営する転勤妻のコミュニティー「kinocom」では、そのような情報交換をしやすくなっていますが、そもそもコミュニティーへの参加が苦手な人もいます。

そんなとき「心のよりどころ」になるような本が作りたいと、コミュニティーのメンバーと「転勤妻サポートBOOK」という本を作りました。
「仕事」「人間関係」「お金」など、困り事のテーマごとに読めるようになっています。

この本だけですべてが解決するものではありませんが、「一人じゃない」「みんなも乗り越えてきたんだ」ということが伝わるといいなと思っています。

     ◇
「転勤妻サポートBOOK」は2月28日にKindle版で発売予定。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CSB99X1G
 
 ◇

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