ネットの話題
完璧なる「食べ終わり」の瞬間を追求! カレーの食品サンプルに驚嘆
制作の経緯を取材しました
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制作の経緯を取材しました
本物そっくりに作られた食品サンプル。完成した料理がモチーフになることが一般的ですが、あえて食べ終わった後のカレー皿を再現した作品がSNS上で注目を集めています。制作の経緯を取材しました。
先日、食品サンプルを手がける「いわさき」のX(旧ツイッター)アカウントが投稿した1枚の写真。
写っているのは、カレーを食べ終わった後の皿を再現した食品サンプルです。
完食した皿の上に残るカレーのルーやスプーンの跡、丸められたティッシュ。
端に写り込んでいるコップには、表面についた露や残った水の氷の解け具合まで再現されています。
この投稿に対して、「食べ終わりのサンプルとは新しい」「職人技に驚き」といったコメントが寄せられています。
『ふぅ〜!ごちそうさま!!」
— 株式会社いわさき_食品サンプル (@IWASAKI_SAMPLE) December 27, 2023
超ベテラン工場長の手による、本年の製作コンクール作品。これには社内審査でも騒めき…「手抜きか?!」
…いや、しかしじっくり観察すると極められた味わい深い表現があるのです。
いわさきは本日が #仕事納め 🙏
今年もお世話になりました。
ごちそうさまです。 pic.twitter.com/MZA0Oafh7K
「『形あるものを作るだけが、ものづくりではない』という境地です。無いからこそ、そこに有ったものを彷彿とさせる。ある意味、哲学にも通じるテーマに大真面目に取り組みました」
そう話すのは、作者である神戸工場の工場長。入社38年目のベテランです。
作品名は「ふぅ~!ごちそうさま!!」。
いわさきで毎年開催されている技術研鑽の場「食品サンプル製作コンクール」向けに作ったそうです。
食品サンプルとは、料理のとある一瞬を止めて作るもの。
完成形の料理を作って「はいどうぞ!」という状態で飲食店の店頭に飾られるのが一般的です。
そこから一歩進めて、おいしさの臨場感を持たせるために、食べる瞬間の箸で持ち上げている状態や、スプーンで一口すくった表現で作られることも。
それを究極まで突き詰めると「何も無い」とい状態になるのではないか?
そんな思いから、「ふぅ~!ごちそうさま!!」を製作したそうです。
完璧なる「食べ終わり」の瞬間を求めて、何度も何度もカレーを食べ、最終の状態を観察。
皿に残ったカレーの粘り感や、スプーンの跡、ルーの中に見えるスパイス、一粒残した米粒などに反映したといいます。
「コップの水は、ガラスの表面につく露や残った水の氷の解け具合も工夫し、氷をキラキラと見せるために底にはアルミ箔をさりげなく仕込んでいます」
シンプルなモチーフだけにバランスが難しく、スプーンやティッシュも自然に見える絶妙なポジションで接着固定してあるそうです。
「ただ、食べ終わりの皿とはいえ『きたない』と思われては台無しですので、下品に見えないようにこだわりました」
食べ終えるまでの時間や光景、食べた人のしぐさや感情まで想像してもらえるよう意識したといいます。
華やかな食品サンプルが並ぶ社内コンクールではあまり票が入らず、受賞に至らなかったというこの作品。
ネット上で反響が寄せられたことについては、こう話します。
「表現の可能性を模索してたどり着いた作品だったので、多くの反応がもらえたことで新たな可能性を感じました」
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