連載
#11 プラネタリウム100年
開館7年、空襲で焼失…東京初のプラネタリウムは 当時の投影を再現
プラネタリウムがドイツで誕生して100年
東日本で初のプラネタリウムとして、東京・有楽町に1938年にオープンした「東日天文館」。1945年の空襲で焼失してしまいましたが、プラネタリウムが珍しかった時代にどんな投影をしていたのでしょうか。わずかに残った資料などから再現した投影番組が、渋谷のプラネタリウムで人気となっています。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
日本にプラネタリウムが初めて登場したのは1937年のこと。大阪の市立電気科学館(現・市立科学館)に設置されました。
東日本初のプラネタリウムができたのは翌年の1938年でした。東京・有楽町にオープンした「東日天文館」はたちまち人気となりましたが、1945年の空襲で焼け落ちてしまいました。
開館していたのは7年ほどと短く、残念なことに当時の投影に関する資料はほとんど残っていません。
そんななか、コスモプラネタリウム渋谷(東京都・渋谷区)の解説員、村山能子さんは「当時の東日天文館の投影を再現できないか」と思いつきました。プラネタリウム100年の節目でもあり、プラネタリウムの歴史を紹介する番組を提案したといいます。
村山さんは、当時の東日天文館付近から見えた街並みのパノラマ風景の再現を試みました。パノラマとは、プラネタリウムのドームの地平線付近に、その周辺の風景を映し出すものです。
東京であれば、東京タワーや国会議事堂などの風景を配置することで、外で星空を見ているような臨場感をより高めることができます。
村山さんは、わずかに残っている東日天文館のパンフレットや絵はがきをアマチュア天文家から借り受けました。ただ、資料には、東日天文館で映していたパノラマの映像が一部しかなく、そこから再現できたのは全体のわずか3割ほど。
「それ以外は昔の地図や写真を探したり、実際に有楽町に行ったりして、当時はこれが見えたはずだと推測して再現しました」
西に国会議事堂、東には銀座、南西方向には富士山まで。村山さんは得意の切り絵で細かいパノラマ風景を再現し、デジタルデータで取り込んで、当時の星空とともにプラネタリウムで投影しています。
村山さんはほかにも、プラネタリウムがドイツで誕生した100年前のドイツの街や、大阪に日本初のプラネタリウムが登場したときの大阪の街のパノラマも再現しています。
「それぞれの時代の、それぞれの場所で見えた星空と街並みを、タイムスリップしたつもりで楽しんでほしい」
コスモプラネタリウム渋谷では秋ごろまで、この投影番組「星空を作った人々」を見ることができます。
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