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紅白、今年の曲はテンポが速い 昭和・平成・令和…10年ごとに分析
「踊りやすさ」「エネルギッシュさ」は…
12月31日に放送される「NHK紅白歌合戦」は今年で74回目。その年を彩る歌はどのように変わってきたのでしょうか。40年前の1983年から10年ごとの曲の特徴を、音楽配信サービスSpotifyが公開する指標を元に分析し、その変遷を探りました。(朝日新聞デジタル企画報道部・篠健一郎)
分析は、1983年から2023年までの10年ごとに、計5回の紅白歌合戦の楽曲をピックアップ。そのうち、Spotifyで配信されている曲を対象に分析しました。
一部の曲は配信されていないなどでデータが取得できず、メドレーは分析対象から外しました。昭和、平成、令和と3つの元号にまたがる40年の変化を調べました。
まずは各回の出場歌手と曲目を確認します。
1983年はタモリさんが総合司会、黒柳徹子さんが紅組司会でした。中森明菜さんが「禁区」、杏里さんが「キャッツアイ」、ALFEEが「メリーアン」で初出場します。
Jリーグが発足した1993年は、日本の歌謡曲のスタンダードとも言える曲が多く並びます。いしだあゆみさんが16年ぶりの出場で「ブルー・ライト・ヨコハマ」を、福山雅治さんが初出場で「MELODY」を歌いました。
2003年の大トリはSMAPの「世界に一つだけの花」。トリをグループが務めるのは初めてでした。中国の音楽グループ「女子十二楽坊」や、地元の佐賀県を自虐的に歌ったはなわさんが、それぞれ初出場でした。
北島三郎さんが50回目の出場となった2013年は、朝の連続テレビ小説「あまちゃん」のステージショーや、クリス・ハートさんと松田聖子さんのデュエットも話題となりました。
今年2023年の初出場は、ダンス&ボーカルユニット「新しい学校のリーダーズ」や韓国のアイドルグループ「Stray Kids」など13組が予定されており、大トリはMISIAさんです。
この5回の紅白歌合戦で歌われた楽曲を分析すると、1分間の拍数を表すテンポの違いが見えてきました。
1983年から2013年にかけての計4回は、楽曲の平均テンポ(BPM)が120台でほぼ横ばいでした。しかし、2023年は137と過去に比べて平均テンポが速くなりました。
分析した全楽曲の中で上位3曲は、「CASE 143」(Stray Kids、2023年)、「スキスキ星人」(すとぷり、2023年)、「Loveletter」(aiko、2013年)で、上位10曲までに2023年の曲が4曲入りました。
Spotifyが設定している曲の「踊りやすさ」や「エネルギッシュさ」を示す指標でも、2023年が最も高くなりました。テンポが速く、迫力のある曲の人気が高いようです。
今年初出場の「新しい学校のリーダーズ」は、楽曲「オトナブルー」のサビで首を左右に動かす「首振りダンス」が話題に。SNS上で「踊ってみた」動画が急増し、「TikTok上半期トレンド大賞2023」に選ばれました。
分析した全楽曲の中で最も踊りやすいとされた曲は、「UNFORGIVEN」(LE SSERAFIM、2023年)、最もエネルギッシュな曲は「カモネギックス」(NMB48、2013年)でした。
一方、ピアノやフォークギターなど電気を使わない楽器での演奏を表す「アコースティック」が最も高かったのは1983年で、10年ごとに下がっています。テンポが速く、エネルギッシュで踊りやすい楽曲は、電子音との相性が良いことが考えられます。
分析した全楽曲における上位3曲は、「月の砂漠」(由紀さおり 安田祥子、1983年)、「Tennessee Waltz」(綾戸智絵、2003年)、「ふるさとの空の下に」(美輪明宏、2013年)が並びました。
幸せや陽気な気持ちなど、ポジティブさを示す指標が最も高かった曲は、「Magic of Love」(Perfume、2013年)。「禁区」(中森明菜、1983年)、「ちゅ、多様性。」(ano、2023年)が続きました。年ごとでの、大きな違いはありませんでした。
その時代に人気を集めた楽曲を映し出す紅白歌合戦。その歌がどんなシーンで愛されていたのかや、過去と今の音楽の違いを語り合いながら楽しんでみてもいいかもしれません。
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