連載
#9 プラネタリウム100年
「寝てもOK」「笑っちゃう」回も…個性豊かなプラネタリウム解説
プラネタリウムがドイツで誕生して100年
誕生して100年を迎えたプラネタリウム。投影された星や星座、迫力ある宇宙の映像はもちろんですが、解説員による星空解説もプラネタリウムの醍醐味(だいごみ)です。思わず笑ってしまったり、落ち着いた語りに癒やされたり、豊富な知識で学びがあったりと、星の語り部は施設や解説員によってさまざまです。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
「伝説のプラネタリアン」「星を詠む和みの解説員」「旅する星空解説員」――。
若者が集う東京・渋谷にあるコスモプラネタリウム渋谷には、それぞれニックネームを持つ個性豊かな解説員が8人います。
そのうちの1人、チーフ解説員の永田美絵さんは「癒しの星空解説員」というニックネームを持っています。理由を尋ねると、「私の解説の回では、気絶している(眠ってしまう)方が多いんです」と話してくれました。
永田さんは、学生時代からアルバイトでプラネタリウム解説を始め、40年以上も続けているベテラン解説員です。声のトーンがとても穏やかで、「癒し」と言われる理由がよくわかります。
ほかにも、半世紀以上も星空解説をしている伝説の解説員や、方言を使いながら話術で楽しませる解説員、自分の得意な切り絵や水彩画で演出を自作する解説員もいます。
コスモプラネタリウム渋谷には、このように多彩な解説員が集まっています。どういった狙いがあるのでしょうか。
永田さんがチーフ解説員になったとき、東京にある他の施設との差別化や、投影の工夫について考えたといいます。
その結果、「一期一会の投影をしよう」という結論になりました。
「今日来てくれたお客さんに、今日だけの解説を聞いてもらい、何度訪れても飽きない解説を目指すことにしました」
映す星空は同じでも、語りによって全く違う解説を楽しめるので、毎日来るリピーターもいるそうです。
永田さんは「私の回のときは潔く寝に来てもらって、疲れた体を癒やし、『明日もがんばろう!』と思ってくれればうれしいです」と話しています。
そんなプラネタリウムの解説員。どうやったらなれるのでしょうか。
永田さんは「プラネタリウムでアルバイトをしたり、天体の観望会のボランティアをしたりすることが近道」と話します。
解説員は空きが出たら募集がかかるため、企業の就職活動のように新卒採用はありません。
日本プラネタリウム協議会のメーリングリストに登録して募集要項が出るまで待ったり、プラネタリウム施設に通って空きが出るのを待ったりするくらいしかないといいます。
1カ月に1度ほどは募集が出るようですが、場所は全国各地。自分の働きたい地域での募集が出るまで、アルバイトをしながら待つ人も少なくないといいます。
持っていれば有利なのは、学芸員資格と、子ども向けの学習投影もあるので教員免許だそうです。施設によっては、「どちらかの資格がある人」という条件で募集が出ることもあるといいます。
ちなみに、コスモプラネタリウム渋谷では資格の有無は問いませんが、「星やプラネタリウムが好きであること」が必須の条件だそうです。
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