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大手医師相談サービス上に〝不適切〟投稿 メルマガでもピックアップ

医療相談サービスの普及が進むが……。※画像はイメージ
医療相談サービスの普及が進むが……。※画像はイメージ 出典: Getty images

目次

大手医師相談サービスでユーザーが自殺に関する具体的な方法を記載した相談を投稿。それを運営元が「注目Q&A」としてメールマガジンでピックアップし、配信していたことがわかりました。メディアが自殺についての具体的な方法を記載することは、WHOの「自殺報道ガイドライン」に抵触するおそれがあります。運営元は朝日新聞の取材後、当該のコンテンツを非表示に。掲載されていたのは「適切な運営とは言えない状態」と認めました。経緯を取材しました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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「日本最大級」の医師相談サービスで

非表示になったページのスクリーンショット
非表示になったページのスクリーンショット 出典: アスクドクターズ
コロナ禍を経てオンラインの医療相談サービスの普及が進んでいます。その中でも、インターネットを利用した医療関連サービスの提供をする東証プライム上場企業、エムスリー株式会社が提供する「アスクドクターズ」は、相談件数300万件以上、のべ協力医師8000人以上(いずれも同社発表)の「日本最大級のオンライン医療相談サービス」をうたっています。

月額500円の有料会員は医療や健康・病気に関して気になる疑問・不安を「24時間365日いつでも医師に相談でき、最短5分で回答」がもらえる他、非会員・無料会員は同サービスのサイトやアプリ上でQ&Aの一部を閲覧できる仕組み。

同社はその利用シーンを「病院へ行くべきかわからない」「病院に行ったがわからないことがある」「情報がありふれていて何が正しいかわからない」といった場合と説明します。同社は主力事業として「32万人以上の医師が登録する」とうたう医療従事者向けの情報サイト「m3.com」を運営しており、回答する医師はその会員だということです。
 

「首吊り」を“注目Q&A”にピックアップ

実際の投稿内容のスクリーンショット(具体的な方法の記載箇所について画像を加工しています)
実際の投稿内容のスクリーンショット(具体的な方法の記載箇所について画像を加工しています) 出典: アスクドクターズ
このアスクドクターズに、「首吊りの後遺症について」というタイトルで相談が投稿されました。相談者が具体的な方法を記載し、その後遺症に関して医師に相談するというものでした。相談の日付は「2023/01/07」で、10月12日時点で複数の医師による回答がなされていました。

また、この相談内容は、10月11日の同サービスのメールマガジンで「首吊りの後遺症について/内診グリグリ後の出血が続いています」という題名で「注目Q&A」として配信されていました。

アスクドクターズは、相談者と回答者をつなぐ医療相談のプラットフォームです。同サービスに限らず、プラットフォームはネット上の情報を整理して提供する、つまりあくまで「場を貸す」事業者であり、個別の情報については直接、責任を問われにくい立場にあります。

同サービスの利用規約にも、「本サービスの利用、相談に対する返答やアドバイスにより何らかの不都合、不利益が発生し、また、損害を被った場合でも、 弊社は、故意又は重過失による場合を除き、それに対し一切の責任を負いませんので予めご了承ください」と明記されています。

一方で、自殺についての情報は目に触れた人に影響を与えるため、検索サービスやSNSなど各プラットフォームが「検索結果に応じて相談窓口を上位に表示させる」など、「場を貸す」よりも踏み込んだ対応をしてきた経緯があります。

アスクドクターズも、自殺方法という命にかかわる相談内容が不特定多数の人の目に触れるようにしていたこと、メールマガジンで「注目Q&A」としてピックアップしていたことには、メディアとしての責任があるとも言えます。

WHOは「自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識」、いわゆる自殺報道ガイドラインの中で、《自殺に用いた手段について明確に表現しないこと》を挙げています。

「自殺リスクのある人が行為を模倣する可能性を高めてしまうため、自殺手段の詳細な説明や議論は避けなくてはならない」

また、これを受けて、厚生労働省も度々、「自殺に関する報道にあたってのお願い」を発表して、注意喚起をしていました。

記者がこの件について12日に運営元のエムスリー株式会社に取材を申し入れたところ、同日夜に当該の相談内容は非表示になりました。
実際の医師の回答のスクリーンショット
実際の医師の回答のスクリーンショット

運営元「適切な運営とは言えない状況」

なぜ、このようなことが起きたのでしょうか。運営元のエムスリー株式会社が13日に回答しました。

同社は「ご指摘いただいた点を社内で確認したところ、ご指摘の通りプラットフォームとして運営に改善するべき点があったことは事実であり、深くお詫び申し上げます」とし、前述のガイドラインに「十分準拠した適切な運営とは言えない状況であったと認識しております」と、不適切な投稿の公開状態であったことを認めました。

投稿が掲載されていたのは、「投稿内容が後遺症の相談であること、文面も落ち着いていることなどから、再度自殺を試みる緊急性は高くないと判断」したため。

一方で、「相談者と医師のクローズドな環境ではなく、自殺を試みた手段等も含めて質問が誰でも見られる状態であったこと」「2023/01/07 の投稿がピックアップされメールマガジンに掲載されてしまったこと」は問題だったとします。

過去の投稿が最近になってピックアップされた理由は、「メールマガジンを生成するレコメンドシステムのスクリーニングが不十分であったため、本来掲載するべきでない投稿が掲載されてしまったもの」と同社は説明。

投稿は「他の閲覧者の方への影響を考慮して、投稿者の方以外が閲覧できないよう、非表示対応を行いました(2023年10月12日20時56分時点で、投稿者ご本人以外は閲覧できない状態となっております)」。

すでに「自殺」など特定ワードで不適切な投稿がなされないように監視する方法は取っていたとしますが、今後はさらにそのワードの範囲を拡張するとともに「メールマガジンのレコメンドシステムを停止し、システムを改善」「投稿内容のスクリーニング強化、センシティブな投稿に対する閲覧制限、相談窓口の情報提示」をしていくということです。

「基準の厳格化及び監視の強化を行い、必要に応じて適切な窓口を案内するなどの対応を行ってまいります。加えて、過去の投稿についても同様の基準で投稿者以外から閲覧できないよう非表示の対応を進めております」
 

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