連載
#163 ○○の世論
自民支持率、2カ月連続2割台「異例の事態」の理由 解散の行方は…
世論調査を分析
朝日新聞が8月19、20日に実施した全国世論調査で、自民党の支持率は28%と、前回7月15、16日調査に続き2カ月連続で20%台となりました。他の政党の支持率を下回ったわけでもないのに、騒ぎすぎじゃない?と疑問に思う方も多いかもしれません。実は、自民支持率が2カ月連続で20%台になるのは、2012年12月の第2次安倍政権発足以降で2回目と、ここ10年ほどの間では珍しい状況なんです。(朝日新聞記者・江口達也)
第2次安倍政権発足以降、自民支持率は、おおむね30%から40%の間を推移してきました。
この間、初めて20%台を2カ月連続で記録したのは、2020年5月の26%と同年6月の29%でした。
この頃は新型コロナウイルスへの対応をはじめ、政府が異例の定年延長を認めていた東京高検の黒川弘務検事長(当時)が賭け麻雀をしていた責任をとって辞任したこと、元法相の河井克行衆院議員と、妻の河井案里参院議員が、参院選をめぐる買収の疑いで逮捕されたことなどが響き、内閣支持率も30%前後と低迷していた時期です。
その後、同年8月下旬には安倍首相が持病の悪化を理由に退陣することを表明。
9月に自民党総裁選が行われることになり、それに応じて自民の支持率は40%まで急回復しました。
今回の自民支持率の低迷は、マイナンバーを巡るトラブルや、少子化対策、物価高への対応といった政策面が原因として考えられます。
加えて、自民党に所属していた秋本真利衆院議員が風力発電会社側から金銭を受け取ったとされる「政治とカネ」の問題や、自民党女性局長だった松川るい参院議員がフランス研修中にSNSに投稿した写真が「観光気分」などと批判を受けた問題なども影響しているとみられます。
自民の支持率が減少した分、その支持はどこに行ったのでしょうか。
今年6月調査からの自民支持率の推移は、6月 33%→7月 28%→8月 28%ですが、他の政党の支持率には大きな変動はありませんでした。
増えたのは無党派層です。
無党派層は国政選挙があると一時的に減る傾向があるためイレギュラーがありますが、岸田内閣発足以降、おおむね40%台で推移してきました。
しかし、6月 49%→7月 51%→8月 54%と、自民支持率の減少に絡んで50%台に増加しています。
自民の「失点」が野党の「得点」にはつながっていないと言えます。
自民支持率の低下とあわせて、岸田内閣の支持率も33%と、過去最低だった31%に次ぐ水準まで下がっています。
そのため、今年秋にもあるのではないかとみられていた衆議院の解散・総選挙は難しいのではないか、との見方が出ています。
岸田首相の自民党総裁としての任期は来年9月と、もうすぐ1年を切ります。岸田首相はこの厳しい状況を打開し、長期政権を築くことができるのでしょうか。
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