梅雨や台風など気象関係のニュースでは、「線状降水帯」という言葉がよく流れてきます。最近「よく聞く」ようにも思われますが、どのような現象なのでしょうか。
線状降水帯は、2018年7月の西日本豪雨や、20年7月の熊本県の豪雨で、大きな災害の原因になった気象現象です。梅雨以外にも、茨城県で鬼怒川があふれた15年9月の豪雨や、広島県で土石流が発生した14年8月の大雨など、各地で発生しています。
線状降水帯とは、気象庁によれば、「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域」のこと。
積乱雲は一つでも土砂降りをもたらしますが、風向きなどによっては何個も発生し、風に流されて同じ場所を次々と通ることがあります。これが線状降水帯で、発生すると何時間も大雨が降り続き、川があふれたり土砂崩れが起きたりします。
昔から専門家の間では、集中豪雨の降る地域が帯のように延びている場合があることが知られていました。特に、前述した広島県の大雨以降、この言葉がよく用いられるようになったとされています。
近年、雨粒の動きをレーダーで捉えることができるようになり、線状降水帯の発生状況がその最中や直後にわかるようになりました。21年6月からは、気象庁が「顕著な大雨に関する情報」として線状降水帯が発生した場合に発表するようになったため、耳にすることも多くなったものと考えられます。
一方で、線状降水帯の発生メカニズムには未解明な点も多く、同庁は「今後も継続的な研究が必要不可欠です」としています。
予報も難しいため、必ず線状降水帯が発生するわけではないものの、同庁は現在、線状降水帯の発生のおそれがある場合、半日ほど前から広域に気象情報を発表する「線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけ」と、最大30分前に線状降水帯の発生を知らせる発表を運用しています。
ただし、発生が見逃される場合もあり、さまざまな防災情報を活用することも重要です。
線状降水帯の発生のおそれがあるとき、崖や川の近くなど、危険な場所(土砂災害警戒区域や浸水想定区域など災害が想定される区域)にいる場合は、「地元市町村から発令されている避難情報に従い、直ちに適切な避難行動を取ってください」と注意を呼びかけます。
また、「周りの状況を確認し、避難場所への避難がかえって危険な場合は、少しでも崖や沢から離れた建物や、少しでも浸水しにくい高い場所に移動するなど、身の安全を確保してください」とします。
気象庁は、土砂災害、浸水・洪水災害から命を守るための情報サイト「キキクル(危険度分布)」(
https://www.jma.go.jp/bosai/risk/ )で、エリアの危険度を知らせています。
「市町村から避難情報が発令されていなくても、今後、急激に状況が悪化するおそれもあります。キキクルや水位情報等の情報を確認し、少しでも危険を感じた場合には、自ら安全な場所へ移動する判断をしてください」