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〝即レス〟ルール化「しんどい」と言われたら? 健全なデート考えた
「自らの選択によって判断」
「デーティングウェルネス」という言葉を知っていますか? 性に関する適切な知識を持ち、自分の意志で行動を選択し、相手との安心できる関係を築く――。マッチングアプリ大手の「Tinder」が、その大切さを伝えるイベントを開きました。たとえば〝即レス〟をルール化して相手から「しんどい」と言われたら、どうしますか? ワークショップに参加して学生たちと考えてみました。
出会いの手段のひとつとして認知が広がるマッチングアプリ。大手の「Tinder」を日本で運営する「Tinder Japan」は6月、「デーティングウェルネス」に関するガイドを公開しました。
デーティングウェルネスを「人と出会い、デートをする上での正しい知識を持ち、自らの選択によって判断し、幸福で、心身共に健全な状態のこと」と定義しました。
そんなTinderの考え方を知ってもらおうと、6月に都内で開かれたイベントには、学生約10人や性教育の専門家らが招かれました。
Tinder Japanのチョウ・キョさんは、「日本では性の知識に関する話をする機会が少なく、話題にあげること自体がタブー視されている風潮さえある」と現状を問題視します。
「若いみなさんが性に関して正しい知識を持たず、表層的な情報とあいまいな理解のままマッチングアプリを使ってデートをしている」と指摘しました。
その現状をサポートするかたちで「tinderではデーティングウェルネスについて発信を続けたい」と語ります。
助産師で性教育YouTuberのシオリーヌさんは、「今回、初めてデーティングウェルネスという言葉を耳にした」と言います。
昨今の出会い方について、「(これまでのように)その人のバックグラウンドを十分に知った上で恋愛関係になるだけではなく、オンライン上で初めて知り合った人と関係を築いていくという、新しいコミュニケーション方法を身につけないといけない状況にある」と話します。「私たちもスキルの身につけ方を伝えていく努力をする必要があります」
TENGAヘルスケアで、10代の性の悩みに答えるウェブサイト「セイシル」の担当者・福田眞央さんや、オンラインでピルの処方をしたり専門家が相談に応じたりするサービス「ネクイノ」を展開する医師・中村葵さんも、それぞれの立場で、知識をふまえてデートをすることについて語りました。
イベント中、熱心にメモをとっていた21歳の女性は、保健体育の教員免許取得を目指し、教員実習を間近に控えているそう。
「『自分の判断で選択する』という言葉が印象的でした。子どもたちにも伝えたい」と話します。
どのようにして、「デーティングウェルネス」の考え方を身につけていけばいいのでしょうか。
イベント内では、デート場面を想定した上で、自身がどのような考え方をするべきか、どう振る舞うべきかを話し合うワークショップもあり、記者も参加しました。
「即レスをルール化したら、『しんどい』と言われた」
記者の前に差し出されたのは、場面を設定する1枚の紙。交際して1カ月の相手に、自分がLINEなどの「即レス」を義務化し、相手から反発されたときの対応を20代の女性2人とともに考えました。
話し合うなかで、「交際1カ月という期間をどう見るか、短いのではないか」「こんなに好きなのに、と思うと冷静になれなくなる気持ちもわかる」といった意見が出てきました。
ただ、ふたりで話し合う必要があることについては共通認識がありました。
「話し合いができない場合、それはデートDV(カップル間で起こる暴力)にもつながる可能性があるので離れるべきだし、第三者を介することも一つの手では」という記者の意見には、他の2人も同意してくれました。
このように、「もし○○という状況になったときにどう対応するか」を考えてみることだけでも、デーティングウェルネスを考えるきかっけになるのだろうと感じます。
結婚7年目になろうとしている記者にとって、「恋愛」というのはちょっと遠い出来事です。
ただ、このワークショップで感じたのは「デーティングウェルネス」の考え方は、恋愛だけに限らないものでは、ということでした。
人と人が信頼関係を結ぶために必要な要素は、恋愛も、その他の人間関係も変わらず、「好きだから許せる」という思考には陥るべきではないのでしょう。
Tinder japanのチョウさんが何度も強調していた「自らの意志で選択し」というフレーズ。自分の気持ちを大切にし、相手にも大切にされる関係が築けたときに、デーティングウェルネスは成立するのではないでしょうか。
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