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遺品整理のバイト「足がすくんだ」現場も コントの登場人物に深みが
こじらせハスキーのドイツみちこさん
実家の片付け、ゴミ屋敷問題、終活ブームでの生前整理……。ドラマにも登場して、「遺品整理」の仕事には注目が集まっています。女性コンビ芸人「こじらせハスキー」のドイツみちこさんは、6年前から遺品整理バイトをしています。意外な芸への影響もあるそうです。(ライター・安倍季実子)
その仕事内容が少しずつ浸透していますが、漠然と「大変そう」というイメージもある遺品整理バイト。
こじらせハスキーのドイツみちこさんは「芸人にとっては融通の利くありがたいバイト先」だといいます。
「ほかのバイトよりも稼げますし、シフト制でも3日前くらいに申告すれば休めます。代わりを探す必要もありません」
それまでは飲食店バイトを掛け持ちしていましたが、芸人の仕事で急に休むのが心苦しく、それ以外のバイトを探すようになったといいます。
「昼間にできるので一時期テレアポのバイトもしていましたが、そちらは向いていませんでしたね(苦笑)。その後、他事務所の芸人から紹介されて、遺品整理バイトをはじめました」
昔からバイトの掛け持ちは当たり前だったため、今は2社の遺品整理業者に所属し、さらに週に2~3回はスナックのバイトもしているそう。
「大変だと思うかもしれませんが、全然そんなことはないです」と笑います。その理由は、働き方にありました。
「基本はA社でバイトして、スケジュールが空いていたら、スポット的にB社でバイトする感じです」
遺品整理バイトの勤務は朝から夕方まで、月に10~15日ほど、月収は約10~15万円とのこと。
その後は芸人仲間と一緒に趣味の筋トレをしたり、ライブが入っていたらそこへ向かいます。そして、週に2~3回は夜にスナックで働いています。
遺品整理バイトの内容は、2社で多少異なるものの、基本的な流れは同じといいます。
依頼者のもとへ営業担当が訪れて見積もりを出し、ドイツみちこさんのバイトの日にあたる「作業日」が決まります。
「現場はワンルームから一軒家までさまざまです。たまに取り壊し予定の団地の片付けや企業のオフィス移転作業といった仕事もあります」と話します。
「スタッフの人数も、ワンルームなら3人くらい、一軒家になると6~7人と増えます。部屋からごみを出す役、ごみを仕分けして段ボールなどに詰める役、トラックに積み込む役に分かれて作業をします」
ドイツみちこさんは、部屋からごみを出す役が多いそう。ごみの仕分けは細かくて間違えやすい上に、金品や権利書など、依頼主から捨てないでほしいと頼まれるものも別に仕分ける必要があるので、「自分の性に合わない」と笑います。
2社の明確な違いは、特殊清掃業務を行っているか、いないかという点です。事故や事件など、何か事情のある現場の清掃は、特殊清掃と呼ばれています。
「一度、A社のバイトで孤独死をされた方の自宅へ行ったことがあります。発見が死後1カ月くらいで、夏場だったこともあって、かなり過酷な現場でしたね」と振り返ります。
「虫や異臭や埃っぽさといった、このバイトならではの過酷な要素は一通り経験してたんですが、その現場は足がすくんじゃって……。においなど体力以外の面で辛すぎて、その日はごみをトラックに詰め込む役に徹しました」
依頼の多くは、ひとり暮らしの親が介護施設などに移ったり、亡くなったりというケース。
さらに最近は、バブル期に建てられた団地の取り壊しも増えてきているそう。ドイツみちこさんも、会社や業界が大きくなっていると感じるといいます。
その一方、遺品整理業者の増加に伴って、依頼者と業者間でのトラブルが増えているというネット上の書き込みもみられます。
「依頼するとしたら、一番いいのは知り合いの口コミ。その次は、知り合いの不動産や市役所・区役所でしょうか。何社か教えてもらって見積もりをとったりしているうちに、信頼できそうな会社が見つかると思います」
ちなみに、最近広がりつつある生前整理については、「生前・死後関係なく、思い立った時がタイミングだと思います」と話します。
「自分たちでこまめに掃除をしていたら、のちに業者に頼む必要もありませんし、大変な思いをすることもありません。実家を片付けるきっかけはなかなか見つからないと思いますが、『この服、もういらないな』と思って捨てるのと同じような感覚で掃除するといいと思います」
遺品整理バイトは、自宅や実家の掃除といった私生活以外に、芸人としてのネタ作りにも影響しているのだそう。
「このバイトをはじめてから、人の人生が気になるようになりました。バイト中も、ふとした時に『どんな人が住んでたんだろう?』って思うことがあるんですよね」
「部屋にライターがたくさんあれば『タバコ好きだったのかな』とか、近くに居酒屋があれば『このお店に通ってたのかな?』とか、自然と考えちゃうんです。その流れで、コントの登場人物の経歴とか裏設定とかも、いろいろ考えるようになりました」
こじらせハスキーは、漫才、コント、モノマネなど幅広い芸で活動し、2019年の「THE W」準決勝に進出した実力派です。
SNSにアップしているショートネタでは、実在する人物と勘違いしてしまうくらいの味と深みのあるキャラクターを演じています。
「過去設定を考えるようになってから、なんとなくですが、少し面白味が増した気がします」
そんな、ドイツみちこさんの今年の目標は賞レースの上位に食い込むことです。
「今年は『THE W』で何とかして決勝に進みたいですし、『M-1グランプリ』は準決勝を狙って、敗者復活戦に出られる50組に残りたいです」
「あとは、個人的に筋トレと女相撲をやっていて、どちらもすごく楽しいんですよね。女相撲は4月に国際大会があるので、まずはここで1勝を上げて、いいペースをつかんで、1年間走り抜きたいですね」
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