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9浪はまいさん、なぜ早大受験「自分をいじめた人間を見返すには…」

「9浪はまい」のニックネームで人気のYouTubeチャンネルに出演して自身の体験を語っている濱井正吾さん
「9浪はまい」のニックネームで人気のYouTubeチャンネルに出演して自身の体験を語っている濱井正吾さん 出典: 写真はいずれも笑下村塾提供

目次

「9浪はまい」のニックネームで『バンカラジオ』や『トマホーク』など、若年層に人気のYouTubeチャンネルに出演し、テレビ出演や書籍執筆など活躍の場を広げている濱井正吾さん。高校時代にはいじめも経験し、大学進学は「選択肢になかった」環境から、9浪して早稲田大学に合格しました。受験しようと考えたきっかけや、自身の経験から“思うところがある”という教育格差について話を聞きました。(笑下村塾・たかまつなな)

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意識が戻ったら皆が笑ってた

――はまいさんは高校時代、野球部でいじめに遭っていたそうですね。
 
勉強してるといじめられる対象になるような兵庫県の学校で、大学に進む生徒はいませんでした。

部活では暴力で気を失わせる「失神ゲーム」を受けていました。意識が戻るとみんなが笑っている。記憶が途切れていて、後から失神してたと気づくんです。

半身不随になっていてもおかしくなく、障害が残らなくてよかった。携帯電話で局部の写真を撮られ、クラスの女子や中学の同級生にばらまかれたりもしました。

――いじめというより犯罪のような話です。なぜそのようなことが始まったんですか?
 
僕は集団行動で浮くような、ちょっと変わった人だったんですね。野球部の同級生から命令された万引きを断ったのも一因だと思います。 

いじめていたのはクラスの中心で喧嘩も強い、いわゆる「カースト上位」の子で、誰も口出しできません。

秋頃から涙が止まらなくなり、部活に行こうとすると動悸がするようになって退部しましたが、その後は別の子がいじめの対象になったそうです。
――心の支えは?

見返す手段を自分なりにずっと探していて、その過程で何もやることがなかったので、ネットゲームを毎晩深夜3時までやるようになり、大学生とか何人かと交流を持つようになりました。

その中で、正直にいじめに遭っていることを打ち明けると、「俺が会ったらぶっとばしてやるよ」というようなことを言って励ましてくれる人もいました。

当時の自分としては、「世の中って高校生になったらみんなこんなに悪になるのかなとか、みんな人間としてこんな感じになっちゃうのかな」とか、絶望していたので、そういうことを言ってくれる人がいる環境は、自分にとっては救いでした。

だから、そういう人がたくさんいるような環境に、方法は分からないけど行きたいっていうのはずっと思っていました。

あるとき、彼らに「大学に行けばいいじゃん」と言われ、そこで初めて大学受験っていう選択肢がこの世の中にあるんだ、って思ったんです。希望を捨てないでおこうと思えました。

いじめられていると「自分は愛されない」「社会でもずっとヒエラルキーの最下層」と、視野が狭くなります。僕はそんな将来は嫌で、大学受験で自信をつけたかった。

今、いじめで苦しんでいたら、そこを去る勇気を持ってほしいです。

今はネットでも勉強できるし、逃げられる場所を用意しておくと、かなり楽になると思います。

「勉強する人はかっこわるい」の環境から

――高校2年生の後半から大学受験を考えたんですね。

僕が10歳の時に父が脳出血で倒れ、母が必死に働いて、世帯年収は200万円前半ほどでした。

弟と妹もいて、僕は高校を出たら当然働くものだと思っていたんです。勉強も嫌いでしたし、親族に大卒はいませんでした。

今振り返ると、“勉強はかっこ悪い”という価値観を刷り込む環境のせいもあったかなと思います。

勉強してるといじめの対象になるので、わざと悪い点数を取ったり、学校では酒、たばこ、女性の話をする人が多かったり。
 
――「大学進学」という選択肢に気づいてから、どう受験したんですか。

商業科で取得した「情報処理検定1級」が受験資格に必要な大学に、推薦で合格しました。
入学後、サークル行事で京都大学と同志社大学の人に出会って、驚きました。

落ち着き、思慮深さ、優しさ、自信。全てが違う。私とは正反対で、「彼らみたいな人間になりたい」と思うと同時に「これは個人の差だけじゃなく、絶対に環境が関係している」と感じました。
 
受験のことを振り返って、同志社大の子が「あれだけ頑張ったのに京大に届かず、悔しい」と言うのを、京大の子が「挑戦して、そういうこともあるよね」と、慰めていました。

推薦で大学が決まり、何も挑戦していない僕は話に入れなかった。

このままでは自分を卑下してしまうと思い、人生を変えるため、編入試験の勉強を始めました。
 
――3年生のときに龍谷大学に編入されたんですね。

経済学部のゼミで、自分の意見を言うこともできず、自分は周囲より学力が低く思考が浅いと気づきました。彼らには高校までに勉強した教養があるけど、僕にはない。

​​​​​​​一般受験で一流大学に行くしか、このコンプレックスを払拭できないと思いました。

働きながら続けた浪人生活

――大学を卒業後、働きながら予備校に通ったんですね。

就活ではマスコミ系80社ほどを筆記試験で落ちて面接に進めず、ここでも勉強面での決定的な差を感じました。

就職した証券会社は夜も営業や資格試験の勉強が必要だったので、受験勉強ができないと思って10日で退職しました。
 
――そこから別の会社に就職して受験を目指した、と。

朝1時間勉強して出社し、19時半まで営業周り。20時15分から隣町の予備校で授業を受け、22時過ぎに帰宅という生活をしていました。

でも成績が伸びない。2年半で300万円貯めて退社し、受験1本に絞って1日12時間勉強しましたが、7浪目、8浪目も成績が上がりませんでした。

僕の場合、高3の問題ができても高1の問題を解けないなど、学力がいびつなところがありました。

その予備校は僕ほど低い学力からの受験を想定していなかった。それで、最後の1年は予備校を変えて勉強しました。
――ついに9浪目で早稲田大学に合格。すごいですね。

8浪目は4学部全部落ち、27歳の9浪目は5学部受けて教育学部に合格しました。

勉強を続けられたのは、成功体験を得ないと人生が行き詰まってしまうという不安と、ここで諦めたら努力しなかったことを死ぬまで悔やむと思ったからです。

地元で、苦手な親族や、自分をいじめた人たちと生きたくない。東京に出て学んだことを生かした仕事に就くんだ、という一心です。
 
合格した時は、うれしいという感情は芽生えませんでした。自己肯定感、自己効力感が低いので、合格を想像できず実感が湧かないんです。ようやく終わるという安堵だけ。

しかも入学式まで「悲惨な人生を送ってきた僕は、入学金の振り込み忘れとか、何かミスして入学できないかも」と、不安でした。

僕にとっては「合格がゴール」

――入学後、自己肯定感は上がりましたか?

「バンカラジオ」というYouTubeチャンネルで浪人生活を語った時、意外にもコメント欄に温かい言葉が溢れ、とても感動し、自分も誰かに勇気を与えられるかもしれないと、徐々に考えるようになりました。今もそのモチベーションが続いています。
 
――学歴コンプレックスと教育格差は関係すると思いますか?
 
はい。親がいい大学への進学を望む一方で周囲のレベルが高くて抱くコンプレックスと、僕のコンプレックスは違うと思います。学力や金銭面の他に、地域の意識差などもあります。
 
僕もそうでしたが、人生を変えようと勉強しても、親や親戚ですらそれを妨げる中で貫くのは難しいです。

合格した時に一緒に喜べる人がいなかったから、「うれしい」という感情がわき起こらなかったのかもしれません。
――早稲田に入ってから、教育格差を感じましたか?

周囲には中高一貫校出身者が多く、「教育格差」の存在は結構感じました。

世帯年収800万円以下という条件の奨学金を受けているのは、僕も含め地方出身の子ばかりでした。こういう格差を埋めないと駄目だと思います。
 
9浪したことは全く後悔していません。合格できて本当に良かった。僕は受験をゴールだと思っていて、今、余生みたいな気持ちです(笑)。

これから先の人生は今までよりつらいことはないだろうから、受験の財産でやっていけると確信しています。

――それは早い余生ですね。私は受験がゴールではない派ですが、受験を通してそう考えられるのは素敵です。今後、社会はどう変わればいいと思いますか。

勉強ができる環境で、生まれた時から大学進学が選択肢のうちにあり、都心部に暮らし……といった教育格差の「上層」にいる人たちは、なかなか格差を感じられないと思います。

あえて「下」という言葉を使いますが、その「下」の生活を肌で実感できる機会を持てるといいな、と思います。
そうしないと、自分の常識外のことは永遠に理解できないままで、教育格差も埋まらず、社会は変わりません。 

――最後に、環境で思うように勉強できない子どもたちにメッセージを。

世の中には能力主義で「環境なんて誤差だ、甘えるな」という人がいますが、私はそうは思いません。せめて私だけは、厳しい環境で勉強に励む人の理解者でありたい。

そのためにこれからも発信を続けるので、今やってることは無駄じゃない、頑張りを見ている人がいると信じて、諦めずに頑張ってほしいです。
 
――教育格差の問題は、なかなか当事者の方にお話を聞く機会がないので、はまいさんの発信で、少しでも社会に認識され是正していけばいいなと思います。今日は本当にありがとうございました。

(取材:たかまつなな、編集協力:加藤瑞子、監修:藤川大祐 千葉大学教育学部教授)
      ◇

〈たかまつなな〉笑下村塾代表取締役。1993年神奈川県横浜市生まれ。時事YouTuberとして、政治や教育現場を中心に取材し、若者に社会問題を分かりやすく伝える。18歳選挙権をきっかけに、株式会社笑下村塾を設立し、出張授業「笑える!政治教育ショー」「笑って学ぶ SDGs」を全国の学校や企業、自治体に届ける。著書に『政治の絵本』(弘文堂)『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(くもん出版)がある。

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