分娩開始(陣痛が10分間隔になる)から、子宮口が完全に開く(約10cm)までを「分娩第1期」と呼びます。日本産科婦人科学会によれば“順調に分娩が進行し、10時間程度で子宮ロが全開大に至る症例もあれば、明らかな異常がなくても30時間近くかかる症例もある”そう。
子宮口が全開大になったら分娩台へ、ということでしたが、妻の場合、12時間ほど経過しても、子宮口の開きは3.5cmほど。そこで、お産を進めるために自分たちでできることとして「お散歩」を提案されたのでした。
病院としては、当時、コロナ禍の面会制限や院内での行動制限もあり、入院にしてしまうとかえってストレスになるという私たちへの配慮でもあったようです。
季節は夏でしたが、診察してもらったのは早朝で、外はまだ涼しい時間帯。たまたま休日だったので、私も仕事はなし。二人とも体調は万全ではありませんでしたが、水分をしっかり準備した上で、腹を括ってお散歩に出かけることに。
緑を辿るように公園を巡ったり、隣の駅の周りを散策したり。何と言っても終わりが見えないので、ゴールなく歩き回るのはしんどかったものの、「いよいよ生まれるね」といった雑談から、妻の入院後の手続きの事務連絡まで、夫婦でたくさんの話ができたのはよかったと思っています。
陣痛が来たときは立ち止まり、収まったら歩く、を繰り返します。休日には貴重な朝営業のカフェで休むなどもして、少し暑くなってきたと感じた時には、2時間が経っていました。
妻の痛みが強くなってきたということで、再び病院へ。「開いているのでは」と期待したのですが、内診の結果は、残念ながら3.5cmでほぼ変わらず。さすがに夫婦ともに落ち込み、一旦、自宅に戻ることにしました。
当然、妻が一番、不安だったと思いますが、気丈に振る舞ってくれました。家で休み、また暑さが落ち着いた夜に、もう一度お散歩へ。1時間ほど歩いたあと、立ち寄ったショッピングセンターのフードコートで、景気づけに好きなものを食べました。
その足で、この日、三度目の病院へ。正直、「(子宮口は)また開いていないかも知れない」と思っていましたが、ここでなんと、一気に7.5cmくらいまで進んでいるということで、そのまま入院になりました。
準備のためと、コロナ禍で付き添い時間が限られていたこともあり、私は帰宅。こうして、長い長い散歩をした一日が終わったのでした。
【その後】「お産は安全」と思い込み 一人になった分娩室 緊急帝王切開の実際