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本物の埴輪が「放牧」されてます 九州国立博物館の牧場みたいな展示
文化財課長に話を聞きました
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文化財課長に話を聞きました
九州国立博物館で開催されている特別展「加耶」。その埴輪のユニークな展示方法が注目を集めています。文化財課長に話を聞きました。
「加耶」は3世紀から6世紀にかけて、朝鮮半島中南部に興おこった国々の総称。
鉄で栄え、金で身を飾った加耶諸国の文化は、古墳時代の日本にもさまざまな影響を与えたとされています。
特別展は、加耶の興亡の歴史をたどりつつ、日本列島にやってきた「渡来人」たちがもたらした文化・技術にも着目した内容になっています。
注目を集めているのは展示の一つである「埴輪牧場」。
柵で囲まれた牧場のようなスペースに、馬形埴輪7体と牛形埴輪1体が展示されており、まるで放牧されているかのようです。
さらに、柵には「お手を触れないでください」ではなく、「えさをあたえないでください」の表記が。
埴輪の紹介文についても、出土地が「生まれ」、所蔵が「飼育地」、年齢が「推定1500才」といった表現になっていて、「まだ子ども。たいせつに育てられています」といったコメントが添えられています。
この展示がツイッターで紹介されると、「めちゃくちゃ可愛い」「えさ与えたい」といったコメントが寄せられています。
「いずれも別々の遺跡で出土している実物です。馬形埴輪の変遷や東西の馬形埴輪の比較ができるようになっています」
そう話すのは、文化財課長の白井克也さんです。
牧場形式にした狙いについては、こう説明します。
「渡来人によって伝えられた新技術をいくつか紹介する中で、牧場で馬や牛を育てたことをとりあげました。3世紀の魏志倭人伝に『牛馬無し』と明記されていることからは大きな変化です。このことを可視化するための方法として、埴輪の動物たちを牧場の形で展示することとしました」
館員やデザイナーたちで牧場に見立てるためのアイデアを出し合って実現したという今回の展示。
背景画像やリアルな手すり、馬や牛が自由に遊んでいるような配置、キャプションの仕様など細かな点までこだわったといいます。
ただし、説明の内容については展示の意図や作品の学術的価値を踏まえたものになっており、特別展の意義が伝わるように心がけたそうです。
今回の特別展では、作品所蔵者の協力によってすべての作品について静止画の撮影がOKとなっています。
そうした点もネット上での拡散に一役買ったようです。
話題になったことについて、白井さんはこう話します。
「多くの関係者がアイデアを出し合って協力した努力が報われました。加耶や渡来人は、日本の歴史の中で大変重要な位置を占めていますが、一般には必ずしも知られていません。そのような中、多くの方に特別展『加耶』の存在を知っていただくことができてありがたく思います」
◇
特別展「加耶」の会期は3月19日まで。詳しくはホームページで。
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