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夫婦別姓の子、かわいそう?聞くと…「家族がバラけるとは思わない」

名字違う兄弟「一体感がない、と感じたことない」

選択的夫婦別姓の導入に対して「子どもがかわいそう」という意見がありますが、事実婚などで親と子どもの名字が違う「別姓の家族」は、すでに社会に存在しています。いま別姓家族の子どもたちはどう感じているのでしょうか?
選択的夫婦別姓の導入に対して「子どもがかわいそう」という意見がありますが、事実婚などで親と子どもの名字が違う「別姓の家族」は、すでに社会に存在しています。いま別姓家族の子どもたちはどう感じているのでしょうか? 出典: Getty Images ※画像はイメージです

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夫婦の名字を同じにするか別々にするか選べるようにする「選択的夫婦別姓」。反対する人々の中には、家族間で名字が違うと「一体感が失われる」「子どもがかわいそう」という意見があります。本当に、名字によって「家族の一体感」は失われるのか、父親や母親と名字が違うことは「かわいそう」なのか――。当事者の子どもはどう感じているのでしょう。夫婦が別姓、兄弟でも名字が違う家族に話を聞きました。

選択的夫婦別姓:現在の民法では結婚時に、夫または妻の姓どちらかの同姓を名乗らなければならず、現状では9割を超える女性が夫の姓に改姓しています。そこで、希望すれば別姓のまま結婚できる選択肢を加えてほしいと求める声が高まっています。2021年4月の朝日新聞の世論調査では67%が「賛成」と答え、「反対」26%を大きく上回りました。

長男は夫の姓、次男は妻の姓

関東地方の研究者、田中孝史さん(54)は11年前に妻とペーパー離婚をし、現在は事実婚の夫婦として暮らしています。

大学院生の長男サトシさん(25、仮名)は父の名字、大学生の次男ユウタさん(22、仮名)は母の名字で、兄弟別姓です。

田中さんが、妻から「結婚しても名字を変えたくない」と初めて告げられたのは、交際して2~3年経っていた大学生のときでした。

当時、「結婚したら女性が名前を変える」ことが「当たり前」だと思っていた田中さん。

名字を変えたくないと言われ、「本当は自分と結婚したくないんじゃないか。言い訳なのではないか」としばらく思い悩んだといいます。

出典: Getty Images ※画像はイメージです

それでも、結婚する頃には「妻の希望をかなえよう」と考え、田中さんが改姓。名前を変えることへの好奇心もあったといいます。

長男の名字は、妻とも相談して「田中」とすることに決め、家裁に申し立てをしました。
次男は妻の名字としたため、「田中さんと長男」「妻と次男」で名字が異なる家族となりました。

結婚前に、妻の名字に変えると親に伝えていなかった田中さん。
長男の名字を「田中」にしたのは、「息子が名前を継いでくれる」と考えていた親への罪滅ぼしのような思いもあったといいます。

うちはなんか違うのかな?

子どもたちはこうした状況をどう捉えてきたのでしょうか。

長男のサトシさんが、自分の家族が「普通」とは少し違うと気付いたのは小学校のころだといいます。

記憶に残っているのは、兄弟で習っていたピアノの先生に年賀状を書くときのこと。

自分たちに届く年賀状はどれも、同じ名字の下に家族の名前が連なっている。でも、自分たち兄弟は差出人にそれぞれの名字と名前を書きます。

「普通は一つの名字の兄弟の名前を書くのに、うちはなんか違うのかな?」と疑問に思ったそうです。

ただ、25年間生きてきた中で、母や弟と名字が違うことで周囲から何か言われたり、不便を感じたりしたことは一度もないそうです。

出典: Getty Images ※画像はイメージです

次男のユウタさんも、家族間で名字が違うことにネガティブな感情を抱いたことはありませんでした。

「むしろ小中学校の頃は、周りと違うのでなんか『レア』でいいなと感じていました。なにかあったときに説明が面倒くさいというのはありますが」

両親の仲が良い 感じて育ってきた

ともに別姓であることでいじめられたり、嫌な思いをしたりしたことはないという2人。

では、「夫婦が別姓だと、家族の一体感がなくなる」「子どもがかわいそう」という意見に対してはどう思うのでしょうか。

サトシさんは「なんか言ってるな~と思うくらいですね。家族の一体感って、人それぞれのはず。自分は名字が違うことで、一体感がないと感じたことないので」。

ユウタさんも「両親の仲が良いのは感じ取って育ってきたので、名字が違うことで家族がバラけるとは思わない」といいます。

出典: Getty Images ※画像はイメージです

家族で名前が違うことが「かわいそう」なのではなく、「自分にとっては当たり前」だったことが、まわりから「かわいそう」と言われたり、はやし立てられたりすることで、「別姓の子ども自身の嫌な記憶となってしまうのではないでしょうか」――。

ユウタさんはそんな風に指摘します。

「小さい頃から、家族にはいろんな形があるんだということを教えることが大切なんだと思います」

「かわいそう」社会の態度が生み出すもの

選択的夫婦別姓制度の導入を巡って、よく交わされるのが「子どもが、父親もしくは母親と違う名字ではかわいそうだ」という議論です。

でも、今回の取材を通じて、もしも別姓の子どもたちが嫌な思いをすることがあるとすれば、それば夫婦別姓制度に問題があるのではなく、社会のこうした態度が生み出すものではないかと感じました。

別姓の子どもにとっては、家族でも名字が違うことが当たり前で、決して「かわいそう」なことではないはずです。

別姓の子どもたちを「かわいそう」にさせないためには、「多様な家族のかたちがある」ということを私たちが理解することが求められるのだと思います。

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