ネットの話題
雪遊び中の犬=車両スタック!冬タイヤ換装呼びかけツイートが秀逸
使命感が閃かせた発想に「交換不可避」
日に日に気温が下がり、冬の訪れを実感するようになってきました。この時期、雪国で必須となるのが、自動車の冬用タイヤ装着作業です。国土交通省の出先機関が投稿した、積極的な交換を呼びかける趣旨のツイートが、話題を呼んでいます。職員の使命感から生まれた、秀逸な取り組みの背景事情について取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
通常よりも溝が深く、雪道や凍結路面の走行時に滑りにくい、冬用タイヤの装着率調査にまつわる内容。たとえば、11日に公開された文面は、こんな具合です。
添付された画像には、積雪をかき分けながら、勢いよく走る3匹の犬が写っています。どうやら、豪雪をものともしない犬たちの姿を、グリップ力に優れた冬用タイヤに重ねているようです。
さらに18日のツイートには、雪に埋もれた犬の画像に「《写真は車両スタック(註:雪中などでタイヤがスリップして身動きが取れなくなる現象)を表現しています》」との説明を付記。
25日に至っては、ジャケット姿の犬2匹がじゃれ合う画像に、「(写真は夏タイヤの車が冬みちに入ることをやめて欲しいことを表現しています)」という一文を添えるなど、遊び心たっぷりです。
「写真が気になって本文が頭に入らない」「注意喚起、しかと受け止めました」。1.4万超の「いいね」を獲得した25日のツイートを始め、いずれの投稿にも、好意的なコメントが連なっています。
注目を集めることへの執念すら感じる、今回のツイート。一体どういった経緯で誕生したのでしょうか。ツイートの作成・投稿を担当した、国交省青森河川国道事務所の担当者に話を聞きました。
担当者によると、同所では2009年度から、毎年11月に冬用タイヤの装着率調査を実施しています。青森市と青森県十和田市にある道の駅計2カ所で、着用済みの車両台数を集計するものです。今年度は11月2日から始まりました。
調査結果は、これまでも同所のツイッターアカウント経由で広報されています。そのため今回も、初回分のデータを元にプレスリリースを制作し、11月4日に画像を投稿。しかし30件ほどの「いいね」しかつかず、発信力に課題が残りました。
「正直、箸にも棒にもかからないといった感じでした。皆さんの目を惹(ひ)くために、どうすればよいのか。知恵を絞った結果、私が飼っている犬の写真を活用してみよう、と思ったんです」
白羽の矢が立ったのが、共にミックス犬のパズー(7歳・オス)とパピコ(5歳・メス)。担当者は、以前訪れたドッグランで、2匹が遊んでいる様子を撮影していました。数百枚の候補から、雪道運転を想起させるものを厳選したのです。
そしてそれぞれの写真と相性が良く、タイヤ交換を促すような文言を、職場の同僚と二人三脚で考案しました。「写真ありきではなく、注意喚起という目的を達成することを最優先に、ツイートを作りました」と、担当者は振り返ります。
努力は実り、毎週木曜に調査結果をツイートするたびに、拡散の範囲が広がっていきました。青森県外の在住者とみられる人物を含め、「私もタイヤを取り換えなきゃ」と感想をつぶやき、同所のアカウントをフォローするユーザーも絶えません。
ちなみに今年度の冬用タイヤ装着率は、11月第4木曜日時点で81.8%となっていました。2020、2021両年度の同時期と比べると、10ポイント以上低い数値です。担当者いわく、例年よりも温暖で、初雪観測が遅れたことが影響しているといいます。
凍結した路面はシャーベット状になることが多く、通常のタイヤで走ると、ブレーキを踏んでも停車しづらいのが特徴です。スリップして他の車に衝突したり、積雪に覆われた側溝にタイヤがはまり、走行できなくなったりする恐れも否めません。
そのような危険を回避するためにも、できる限り早期にタイヤを交換して欲しいと、担当者は訴えます。
「事前の準備なくして、自然には絶対に勝てません。今回のツイートを見て、対応してくださる方が増えればうれしいです。また弊所ツイッターアカウントでは、リアルタイムで青森県内の交通情報も公開しているので、ぜひ参考にしてください」
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