ネットの話題
「現代的な姿にしてやった」ちょいデカ〝金印〟風グッズの仕様に驚嘆
伝説の印文、最新技術でまさかの変貌
学校の授業で、その歴史的意義について教わる国宝「金印」。現代にふさわしい形で再現したとして、とある人物の手に成る創作物が、ツイッター上で話題を呼んでいます。確かな技術力と、ひとさじのユーモアが結実した逸品は、どのような思いから生まれたのか。作者の大学生に聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
福岡市博物館によると、金印は後漢の光武帝が倭奴国王(わのなのこくおう)に与えたと言われています。蛇をかたどったつまみと「漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)」の印文が有名です。江戸時代、現在の福岡・志賀島から出土しました。
冒頭、軍手を身につけた人物が、造形物を持つ様子が映し出されます。つまみのデザインはややシンプルですが、金色でしっかりとした光沢があるなど、実物そっくりな仕上がりです。
注目すべきなのが、脇に置かれた朱肉をつけ、真っ白な用紙に押印するシーンです。あの五文字が刻まれているのかと思いきや、意外にも、QRコードが現れます。
これだけでは終わりません。続いて、スマートフォンでQRコードを読み取ると、こんな一文が画面に表示されます。「漢委奴国王」。そう、印面の文字をデータ化していたのです。
動画に添えられた「3Dプリンターの力で金印を現代的な姿にしてやりました」という文言通りのアイテム。度肝を抜かれた視聴者たちは、「デジタルなはんこ(アナログ)だ」「テクノロジーの無駄遣い」と驚き、6万近い「いいね」もつきました。
3Dプリンターの力で金印を現代的な姿にしてやりました pic.twitter.com/CV0rKJg73N
— まこ@2日目土曜日西せ12a (@MakoTr_315) November 9, 2022
まこさんによると、3Dプリンターの活用法について思案中、金印のことを思い起こしました。印面が正方形である点に着想を得て、「もし凹凸部がQRコードになったらどうなるか」と考え、3日間で完成させたのだそうです。
「まずはウェブ上のツールで、『漢委奴国王』の一文をQRコードに変換しました。その図形データをコンピュータ上に取り込み、金印の3Dモデルを作成。さらに専用ソフトを用いて、自宅の3Dプリンターにデータを読み込ませ、造形しました」
「QRコードをスマホで読み取ると、本来のテキストが表示されるギミックが、一番重要な部分です。デジタルデータの情報が実物と変わらないなら、印面を読めるかどうかに関係なく、意味内容は同じとのコンセプトに基づいています」
素材に金色の発色があるPLA(生分解性プラスチック・植物由来の樹脂材料)を採用しており、サイズは4.2センチ角です。実物の2.3センチ角より大ぶりなのは、外観のインパクトや、印刷の精度を担保するためなのだといいます。
「一目見てすぐに、『これは金印だ』と分かるビジュアルを目指した」と振り返る、まこさん。いわく、最も苦労したのが、QRコードの成形です。凹凸部の形状が細かくてもろいため、何度も試作を重ね、最適な形状を追求しました。
技術者の片鱗が見え始めたのは、小学生の頃のことです。電気好きが高じて、電子工作に興味を持ち、独学で回路設計やはんだ付けのスキルを身につけました。高校時代には授業の課題用として、木製セグウェイを作るなどしてきたといいます。
「自らの発想を具現化できたときの達成感や喜びは、ものづくりの醍醐味だと考えています。近年は3Dプリンターが低価格で流通し、従来より活動しやすく、いい時代になったなと若者ながら感じています」
「SNSを通じて、いわば〝独り言〟感覚で自分の活動をアピールできるのも、現代特有の面白さです。今回のように自分の作品を広く見てもらえますし、創作に関わる人々が、大きく羽を伸ばせていると感じます」
そして、金印モチーフの制作物が好評を博したことについては、「デジタルであり、アナログでもあるという作品の旨みが伝わって、とてもうれしい」。また、こんな風にも語りました。
「私だけでなく、多くの人々が、色々な思い付きから、様々な工作や創作活動に取り組んでいます。産業のイノベーションの原点として、作り手の皆さんを、ぜひ応援して頂ければと思います」
1/24枚