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「人間」が持ち物なの…?「怪異・妖怪画像」検索サイトが神ツール
ワクワク止まらない仕様、SNSで喝采
いにしえの時代から言い伝えられてきた、妖怪や怪異にまつわる物語。長らく畏怖の対象となりつつも、人々の想像力をかき立ててきました。そんな妖怪たちの姿を描いた絵画について、一括検索できるデータベースが、SNS上で人気を集めています。一風変わった仕様のウェブサイトは、なぜ生まれたのか。取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
日文研や国内外の美術館などが所蔵する絵巻物といった、近世・近代を中心に制作された480点の絵画資料から、4317点に上る画像データを収載。とりわけ印象的なのが、その検索方法です。
いわゆる市販の「妖怪図鑑」などは、モチーフの名前から、目的の図像を探し出すスタイルであることが一般的と言えます。しかし日文研のDBの場合、妖怪の特徴からたどっていく方式をとっているのです。
トップ画面を見ると、「すがた」「しぐさ」「かたち」「もちもの」「いろ」と五つの大分類が表示されています。それぞれの標題にひも付く、小分類の項目をクリックすると、対応する画像が一覧できる仕組みです。
興味深いのが、小分類の表記。「すがた」なら「鬼」「道具・器物」「七福神」、「かたち」であれば「爪」「翼」「鼻」といった具合です。「もちもの」に至っては、「武器」や「食器」などに加え、何と「人間」と書かれています。
試しに「人間」の検索結果を確認してみましょう。女性の姿をした妖怪「産女(うぶめ)」が赤子を抱いていたり、巨大な鬼の頭部を持つ「鬼娘」が人間の胴体にかぶりついていたりと、実に多種多様な構図の画像が並んでいます。
「まるで宝箱みたいだ」「絵を描く上で本当に助かる機能」「たまたま見かけてうれしくなってしまった」――。10月上旬、ツイッター上に関連画像が出回ると、妖怪に魅せられた人々から称賛の声が上がりました。
データベースは、どういった経緯で誕生したのでしょうか? 日文研の山田奨治教授に話を聞きました。
「妖怪は近世に図像化・キャラクター化されました。それらを集めて、誰でも簡単に見られるようにしたことに意義を感じています。30年ほど前に当センターが実施した、海外美術館での日本美術品調査の折に撮影した画像も含めました」
収録済みの画像は全てパブリックドメイン(共有財産)です。利用時に情報提供を求める一方、届出や許諾は義務ではないそう。そのためテレビ番組や雑誌、書籍に広告と様々な媒体で活用され、デザイナーが参考資料とする例もあるといいます。
気になるのが、検索方式の狙いです。山田さんによると、全ての妖怪に決まった名前があるわけではありません。特徴から探せると楽しく、サイトへの訪問目的の幅も広がると考え、完成させたとのことです。
「最初の公開データをつくったときに、各画像に表れている特徴を書き出し、それらを整理してつくりました。その後、データが増えていることもあり、現在、特徴リストの見直しを進めています」
ところで、DBのタイトルは「怪異・妖怪画像データベース」です。「怪異」と「妖怪」とを区別しているように思われます。それぞれ、どのように捉えられるのでしょうか? 山田さんに尋ねてみると、こんな答えが返ってきました。
「不思議な伝承の中には、『妖怪』の仕業とされるものと、正体の分からないものとがあります。実際には後者の方が多いと言われており、それらを『怪異』とくくりました」
例えば民間伝承では、出所不明な火を「人魂(ひとだま)」「狐火(きつねび)」などと表すことがあります。こうした言葉をあてがえない現象を「怪異」と定義づけ、より多くの言い伝えを集められるようにしたのだといいます。
ただ怪異と妖怪には、共通項もあるようです。山田さんが続けます。
「怪奇現象には元々、姿形や名前などがなかった。『不思議な体験』の原因を解釈し説明する方法として、妖怪が生み出された。そんな説が有力です。近世以降、都市で出版や芸能文化が栄え、次第に図像化・娯楽化していったと言われています」
明治期に妖怪を迷信として退ける運動が起きた後、昭和期になると、民俗学者らが全国各地の妖怪伝承を記録。さらに江戸時代の妖怪図画と「懐かしい日本」のイメージが重なり、漫画などを介して世に広がったと、山田さんは話しました。
DBは利用者の声を受けて、日々改良されています。当初は妖怪の特徴のみだった検索条件について、名称やキーワードでも探せるようにするなど、使いやすさの追求に余念がありません。
妖怪人気は現代に至るまで、連綿と続いています。そうした状況下、DBが注目を集めたことを受けて、山田さんは次のように喜びを語りました。
「公開から12年も経つデータベースですが、新しい世代のユーザーに再発見されていることが、とてもうれしいです。『怪異・妖怪伝承データベース』と共に、妖怪文化の学習・研究材料や、創作活動の源として、どんどん使ってください」
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