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ネットの話題

新鮮な漬けマグロ…じゃない!「ディストピア感」ある代替食に驚嘆

安全安心、誰もが食を楽しむための逸品

おいしそうな「漬けマグロ」に見えますが、実は違うんです
おいしそうな「漬けマグロ」に見えますが、実は違うんです 出典: ハイスキー食品提供

目次

丼ものなどの具として、根強い人気を誇る「漬けマグロ」。その外観を極めて高い精度で再現した、とある食品がSNS上で話題です。驚嘆の嵐を巻き起こした商品の生産・販売元企業に、開発した狙いについて聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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いかにも新鮮な赤身のようだが…

注目を集めているのは、とある食品メーカーが取り扱っている商品です。

長方形に薄く切り分けられた、鮮度の高さを感じさせる赤身。大葉などの薬味を添えれば、ついよだれが出てしまいそうなほど、「シズル感」満載のマグロそのものに思えます。

いかにもしょうゆに浸した切り身然としていますが、正体は代替食品です。その名も「マンナン漬けまぐろ」といいます。

意外なことに、こんにゃくを赤く染めて、本物のマグロを模しているのです。お皿に出し、付属の「特製わさび風味パウダー」を振りかけて食べると、ツンとした刺激が心地よく味覚を駆け抜けます。

ツイッターでは、関連画像がたびたび投稿されてきました。中には、食器の上に均等に並べ、無機質に見える構図で撮影されたものも。

あちこちで「(人間が人間らしさを失った世界を思わせる)ディストピア感がすごい」「これは気になりすぎる」といった声が飛び交っています。

「マグロ乱獲」への懸念が原点

「完成直後は『どこで誰が買うんですか?』と営業担当者に迫られました」。そう苦笑するのは、「マンナン漬けまぐろ」生産・販売元企業、ハイスキー食品工業(香川県三木町)の菱谷哲嗣(ひしたに・のりつぐ)常務取締役(39)です。

同社は1924年に創業されました。飲料の製造業を経て、1958年から一貫してこんにゃくを作り続けています。独特の臭いを軽減する手法など、こんにゃく生産にまつわる14件の特許技術を有し、独創的な商品の開発に取り組んできました。

「マンナン漬けまぐろ」も、その成果物の一つです。誕生のきっかけは、和食の流行で、寿司や刺身向けの海産物需要が世界的に高まっていた、2010年頃までさかのぼります。

漁業関係者の間では当時、国内外でのマグロの乱獲が懸念されていました。ある日、商談で同社を訪れた卸業者が、こう依頼してきたのです。「このままでは、いつかマグロが枯渇するかもしれない。地上の幸で代替食品を作ってもらえないか」

「こんにゃくは芋から作るので、要望にぴったりでした。また低糖質・低カロリーという長所もあります。健康志向の消費者に受けるのではと考え、開発に取りかかりました」(菱谷さん)

菱谷さんによると、重視したのは、外観をできる限り本物の切り身に近づけることです。マグロを仕入れ、たれに漬けて見た目の特徴を研究。結果を基にこんにゃくを着色し、天然色素の調合率を少しずつ変えながら、新鮮さを追求しました。

更に、でんぷんの含有量などを調整し、舌の上でとろけるような食感を実現。約1年後の2011年3月、スモークサーモン風やイクラ風の代替食品と共に発売しました。展示販売会で披露すると、海外のバイヤーを中心に高い人気を得たそうです。

「マンナン漬けまぐろ」のパッケージ
「マンナン漬けまぐろ」のパッケージ 出典: ハイスキー食品工業提供

レバーと合わせて「代表選手」に

手応えを感じていた菱谷さんたちですが、思わぬ困難に直面します。ほどなく発生した東日本大震災の影響で、商品の輸出が制限されてしまったのです。外国での販売戦略を思い描いていた矢先の緊急事態でした。

そこで新たに売り出したのが、「マンナン漬けまぐろ」の製法を応用した「ごま油で食べる元祖マンナンレバー」です。薄切りした加工こんにゃくに、ごま油を垂らすことで、レバーのような味わいが楽しめるというアイデアでした。

「震災発生から間もなく、焼き肉店で集団食中毒事件が起き、生肉を食べることへの警戒感が社会に広がりました。この出来事に着想し、約2カ月後の2011年初夏に『マンナンレバー』の販売を始めると、居酒屋などから注文が相次いだんです」

菱谷さんいわく、「マンナン漬けまぐろ」「マンナンレバー」とも、当初は業務用として取引されていました。その後、全国のディスカウントストアやスーパーなどにも卸すように。現在では流通量全体の9割方が市販用なのだといいます。

「見た目のインパクトに惹(ひ)かれて購入する方が多いようです。持病や体質のため、食事制限をされているお客様にも評判が良い。『レバーやマグロを食べた気になれる』『ここまで味を再現できるのか』などの感想を頂戴しています」

こんにゃく製の「ごま油で食べる元祖マンナンレバー」
こんにゃく製の「ごま油で食べる元祖マンナンレバー」 出典: ハイスキー食品工業提供

「食材の可能性に注目して」

ハイスキー食品では、こんにゃくベースの加工食品を「マンナンミール」と名付け、世に送り出してきました。上述の2点の他、あんこや明太子ペーストなど、実に多様なラインナップです。背景に、こんにゃくが持つ可能性への期待があります。

菱谷さんによると、こんにゃく芋の粉の加水倍率(原料の粉の量に対して、何倍の重量の固形食品ができるかを示す倍率)は、約30~60倍なのだといいます。つまり1キロの粉から、30~60キロほどのこんにゃくを作ることができるのです。

この数値は、小麦や大豆に比べてはるかに高いそうです。養分が少ない土地でも育ちやすいといった点から、休耕地などでの活用も見込めると、菱谷さんは話します。

「将来的に、天然の魚介類などが不足した際、こんにゃくを活用できる余地は大きいと思っています。環境保全の面でも、きっと役立つでしょう。そうした潜在力にも、ぜひ注目が集まって欲しいですね」

そして、ネット上で自社商品が人目に触れたことをめぐり、次のように語りました。

「『マンナン漬けまぐろ』などが話題になったことはうれしいです。ただ、まだまだ完璧というわけではありません。現在、更なる改良に着手しています。アップデートを楽しみにしつつ、おいしく味わって頂けたらと思います」

※代替食品の通販ページはこちら(ハイスキー食品工業・マンナン王国のウェブサイト)

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