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「TVer」普及で変わるテレビ 地方局発の盛り上がり、〝お宝〟映像も

TVerは「テレビ」にどんな変化をもたらしたのか。
TVerは「テレビ」にどんな変化をもたらしたのか。 出典: Getty Images

目次

4月1日にサービスのリニューアルを実施、11日から民放5系列のリアルタイム配信を開始したTVer。CMには笑福亭鶴瓶を起用し、テレビが「変わるんなら、今」と意気込むが、実際にTVerによりテレビはどう変わってきたのか。3月には月間の動画再生数が2億5千万回を突破、過去最高記録を叩き出す一方、リニューアルには賛否も。今後の可能性を含めて考える。(ライター・鈴木旭)
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テレビ「変わる」と鶴瓶CM

笑福亭鶴瓶さん。=2020年2月6日、東京都千代田区、池永牧子撮影
笑福亭鶴瓶さん。=2020年2月6日、東京都千代田区、池永牧子撮影
2015年にサービスが開始され、再生数を伸ばし続ける「TVer」。今年は地上波との同時配信に伴い、4月8日から「もっと、今をつなぐテレビへ。」キャンペーンも行われ、テレビCMと渋谷駅、表参道駅、大阪駅など主要駅での交通広告も展開。一大プロジェクトとしてスタートした。

6パターン制作されたテレビCMには、幅広い世代に人気の笑福亭鶴瓶が出演。「『テレビは変わる』『テレビは変わらなあかん』て何年言うとんねん。ずっと言うてるやろ? でも、ほんまに変わるんなら、今やと思うで」という庶民的でストレートな語りがTVerのその後を期待させた。

しかし、滑り出しは好調とは言えなかった。4月1日にリニューアルして間もなく、ネット上で「使いにくくなった」「改悪」「元に戻してほしい」といった声が噴出したのだ。その多くは大きな変更が行われたユーザーインターフェースへの批判だった。

その後、TVerは問題点について、順次改修していくとアナウンス。改修後に騒動は収まるかと思われたが、依然として「元の仕様に戻してほしい」という不満の声も多い。

“テレビはネットに疎い”というイメージが先行してしまった格好だが、後述するように、テレビらしく配信サービスに順応していることへの評価があるのもまた事実である。
 

光が当たる「地方局の番組」

「かまいたち」の濱家隆一さん(右)と山内健司さん=2021年4月10日、大阪市中央区
「かまいたち」の濱家隆一さん(右)と山内健司さん=2021年4月10日、大阪市中央区
たとえば人気お笑い芸人の台頭は、TVerの普及に伴い、テレビに思わぬ影響をもたらした。地方局が制作する番組に光が当たっているのだ。まさに今これを体現するのが、かまいたちだろう。『かまいたちの知らんけど』(毎日放送)や『かまいたちの掟』(さんいん中央テレビ)など地方でも冠番組を持ち、本人たちの知名度もあって、TVerを介して全国的に視聴者を獲得している。

とくに『かまいたちの掟』では、TVerの運営会社にかまいたちの二人が取材し、TVerのランキングを上げるコツを聞いて企画を立ち上げるなど、TVerをかなり意識していることがわかる。近年、立ち上がったそのほかのMCの番組でも、「TVerランキング」「マイリスト登録」が取り沙汰されるケースは多い。地方局制作の番組にとって、TVerが重要な流入経路になっていることがうかがえる。

TVerで注目されているのは、いわゆる“若手”ばかりではない。『マルコポロリ!』(関西テレビ)、『今ちゃんの「実は…」』(朝日放送テレビ)といった関西地区の番組では、別の地区にいても、東野幸治や今田耕司といったベテラン芸人の伸び伸びとした姿を見ることができる。

また、『やすとものどこいこ!?』(テレビ大阪)の海原やすよ ともこのように、大阪を拠点に活躍する芸人の番組を楽しめるのも支持されるところだろう。そのほか北海道ではタカアンドトシの『ジンギス談!』(北海道放送)、九州では『どぶろっくの一物』(サガテレビ)、中部では、『霜降り明星のあてみなげ』(静岡朝日テレビ)など、地域ならではの特色が見られるのも面白い。
    
関西ではお笑い色の強いトーク番組もあるが、基本的にはロケを中心とした番組が多く、タレントと地元住民、飲食店関係者などとの触れ合いが見どころとなっている。そのことで、演者の表情が豊かなものとなり、キー局とはひと味違った雰囲気が出ているようにも映る。
 

「リアルタイム配信」の強化

今年4月からはTVerに「リアルタイム配信」ページが設置され、民放5系列の番組が地上波と同時に視聴できるようになった。

『有吉の壁』(日本テレビ系)、『家事ヤロウ!!!』(テレビ朝日系)、『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)、『あちこちオードリー』(テレビ東京系)など、ゴールデン帯から深夜帯まで幅広い。すべてではないにしろ、人気番組がリアルタイムで見られるのは、一視聴者としても非常に感慨深い。

というのも、これまで地上波で放送された番組内容がTVerでカットされているケースも目立った。映像素材の使用にあたり、「地上波ではOKだが、ネット配信ではNG」という問題が発生するためだ。地上波と同時配信を行うには、この点をクリアする必要があり、すべての番組が当てはまるわけではない。とはいえ、SNSとの連動など、リアルタイム性を重視する視聴者が多ければ増加していく可能性もある。

当面はバラエティーというよりも、スポーツ中継など相性の良い分野での配信が増えることは間違いないだろう。

今後はリアルタイム配信にあたり、TVer独自の機能が登場すると面白い。地上波では、どれくらい使われているかは別として、Dボタンからリモコン操作することによる視聴者参加型の機能が備わっている。TVerでもリアルタイム配信ゆえの画期的な機能が実装されたなら、多くの視聴者が興味を示すだろう。

それはいずれ、VRのようなテクノロジーと結びつくかもしれないし、もっと新しい何かかもしれない。いずれにしろ、リアルタイム配信という利点を生かして「従来のテレビに追いつく」以上のことを期待したい。
 

過去映像こそアドバンテージ

千鳥のノブ(右)と大悟=2019年11月、東京都世田谷区、村上健撮影
千鳥のノブ(右)と大悟=2019年11月、東京都世田谷区、村上健撮影
TVer独自のオリジナルコンテンツも充実している。

『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)や『上田と女が吠える夜』(日本テレビ系)、『千鳥のクセがスゴいネタGP』といったバラエティーのスピンオフ企画が見られるほか、過去の人気ドラマやアニメ、別のプラットフォームと同時にオンラインイベントを配信するなど、その内容も幅広い。

スピンオフ企画やオンラインイベントの実施は、『キョコロヒー』(テレビ朝日系)といった深夜番組で続々とリアルイベントを開催(または予定)していることにも通じるものがある。

一方で、TVerだからこそ可能になったコンテンツもある。それが日本テレビに眠っていたお宝映像を配信するTVer限定の番組『神回だけ見せます!』だ。元テレビ東京の演出・プロデューサーである佐久間宣行氏と伊集院光が、今のバラエティーでは見られないような企画、演出、名シーンを眺めながらテレビ業界談義を繰り広げる内容となっている。

現在、ファーストシーズンとして『アナザースカイ(出川哲朗・クロアチア)』や『萩本欽一(ブラウンさん)』など5回分がアップされているが、とくに往年のブッチャーが見られる『全日本プロレス:アブドーラ・ザ・ブッチャーVSザ・シーク』、1976年に放送されてから一度も再放送されていない『壮烈!車大騎馬戦(木曜スペシャル)』は必見だ。まさに今地上波では見られない迫力がそこにはある。

ネット配信は映像素材に関するネックもあるが、逆にこうした秀逸な企画が生まれる可能性も秘めている。今のところ日本テレビのみだが、ぜひ他局の過去映像も配信してほしいものだ。

広告面では、『テレビ千鳥』(テレビ朝日系)で新しい試みがなされている。お酒に合うつまみをプレゼンする「屋上料理企画」とアルコール飲料メーカーがタイアップし、バラエティーを楽しみながら商品をPRできる動画を制作・配信するというものだ。今後、こうした企画も増えていくことが予想される。

広がりを見せるTVerの魅力

NHKと民放局は、TVer以外にYouTubeチャンネルでも動画を更新。まだまだPR動画や番組の部分的なアーカイブが目立つものの、未公開映像の公開やオリジナル企画など今の状況を脱しようとする動きも見られる。

HuluやTELASAなど、定額の動画配信サービスもテレビ番組と連動する中、TVerの強みは何と言っても無料で視聴できる点にあるだろう。ここまで経済格差のない公式のプラットフォームは、今のところTVerのほかに考えられない。

だからこそ、地上波と同じく話題になるようなイベントをリアルタイム配信することの意味は大きい。シンプルに誰もが見られる状況にあること、それはテレビの本質的な役割でもあるはずだ。TVerはその範囲を拡大し、最大出力を向上するトリガーとなっている。

一方で、前述した『神回だけ見せます!』のように今の地上波では放送できない、テレビ局ならではの過去映像も大きなアドバンテージだ。今後は各局の番組ストックを「どうキュレーションするか」も、TVerの魅力の一つになっていくだろう。

最近では、芸人による単独ライブ、番組の生配信イベントなど、有料コンテンツも賑わっている。その中で、局の垣根を超えたTVerはどんな独自性を示していくのか。そのあたりにも期待したいところだ。
 
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