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「自閉症で話せないんです」息子と登校中、おじいさんに伝えたその後

母親のひとことに反響がありました

親子で通学路を歩いていると、横断歩道で誘導しているおじいさんに「もうお友達はできたかい?」と声をかけられました(画像はイメージです)
親子で通学路を歩いていると、横断歩道で誘導しているおじいさんに「もうお友達はできたかい?」と声をかけられました(画像はイメージです) 出典: Getty Images

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自閉スペクトラム症(ASD)と中度の知的障害で意思疎通が難しい小学1年の息子は、街で誰かに声をかけられても沈黙が続きます。これまで母親は「人見知りな子ですみません」と頭を下げていましたが、この日は思い切って「自閉症で話せないんです」と伝えました。

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「お友達はできたかい?」に沈黙

関東に住むカタバミさん(40代)の息子(6)は、今年4月から小学校の支援学級に通っています。片道25分ほどかけ、二人で歩いて登校することが日課です。

入学から1カ月ほど経った日、いつもと同じように通学路を歩いていると、横断歩道で誘導しているおじいさんに「もうお友達はできたかい?」と声をかけられました。

道行く子どもみんなに声をかけているおじいさんにとっては、何気ない一言です。

ただ、ASDと中度の知的障害で意思疎通が難しい息子は、何も応えられませんでした。

「自閉症で話せないんです」

カタバミさんは思い切って伝えました。

「それはすまない事をしたね」

そう返すおじいさんに、「いえ、話しかけられた方がそのうち話すかもしれないので」とカタバミさんは付け加えました。

おじいさんは「そうか!そうだね」と理解を示してくれたといいます。

この出来事をツイートすると、「伝えることもだいじですね」「ツイ主さんの勇気も、お爺さんの対応も、いいなぁ」といったコメントが寄せられ、5万を超えるいいねがつきました。

おじいさんの優しさに「感動」

「おじいさんは身をかがめて目線を合わせてくれていましたが、息子は目さえ合わせず全く無反応なので私が焦った感じでした」

カタバミさんは当時をそう振り返ります。おじいさんが横断歩道で旗を広げてくれている間、沈黙は続きました。

「息子に悪気はないし、怒ってもいないことをきちんと説明しようと思いました。ボランティアをしてくださっているおじいさんに嫌な気持ちになってほしくもありませんでした」

これまでも息子が街でお年寄りに話しかけられるたび、「気まずい気持ち」になっていたカタバミさん。障害があることを「バレないでいてほしいと思ったり、息子が反応できる『普通の子』だったらどんなに良いだろうと思ったりしていました」。

以前は「人見知りな子ですみません」とあいまいに交わしていましたが、今回一歩踏み込んだことについては次のように話します。

「小学校の支援級に入ったことで、その地域に少しでも慣れてほしいという気持ちがありました。何年か、かかるかもしれないけど、もしかしたら自力で通学できるかもしれませんし、誘導して下さる地域の方には私の意識を変えてしっかり対応した方が良いと思いました」

「ASDでも全員が話せないわけでは全くありません。『知的障害もあって』と付け加えたかったのですが、たくさん説明しても分かりづらくなると判断し、簡潔に『自閉症』だけにしました」

思い切って伝えた結果、気持ちは軽くなりました。

「『すまない事をしたね』と言われたとき、単純に『優しい』と思いました。障害があると分かると急に黙ってしまったり、遠くでヒソヒソ話したりする方もいます。正直、お年を召した方が自閉症と聞いてどんな風に受けとるのか分からなかったので、少し感動しました」

意思疎通が難しい息子ですが、カタバミさんが街で知り合いにあいさつするときなどは、しばらくしてから小さな声で「こんにちは」とまねをすることも多いそうです。

「話しかけられた方がそのうち話すかもしれない」とおじいさんに伝えたのは、カタバミさんの正直な気持ちからでした。

「自閉症児がみんな話しかけられて大丈夫なわけではなく、付き添っている方に対応の確認は必要」と考えていますが、自身の息子の特性を考えると「声をかけていただくのはとてもありがたい刺激で、療育(発達支援)だと捉えている」と話してくれました。

息子が「地域に少しでも慣れてほしい」。カタバミさんはそう思っています(画像はイメージです)
息子が「地域に少しでも慣れてほしい」。カタバミさんはそう思っています(画像はイメージです) 出典: Getty Images

遠い存在だった「障害者」

息子に障害があるとわかったのは幼稚園の頃でした。

癇癪(かんしゃく)はほとんどありませんでしたが、言葉が増えなかったり、表情の反応が少なかったり、意思疎通がうまくいきませんでした。

着替えやトイレなど自分でできることも多いのに、なぜーー。

当時のショックは相当大きかったとカタバミさんは話します。

「普通に1人で登校している子どもや喫茶店で友達と勉強している子どもを見ても、これは息子には訪れない未来なんだ、と考えて涙が出てきました」

ショックが大きかった裏には、「これまで障害のある方と密に接した経験が全くなかった」ことも影響していると考えています。障害がある子どもの生き方や家族の思いを知る機会はありませんでした。

自身が障害児の親になって6年。「息子は社会の中ではとにかくとても弱い存在」だと感じています。

「社会がしっかりしていないととても生きていけない。今、児童発達支援や放課後デイサービスなどを使えているのは、先にご苦労された先輩方や尽力して下さった方々のおかげだと思っています」

「私にとって障害はとても遠い存在だったから息子のことで苦しんだと思います。障害者がもっと身近になって理解も進めば、私のようにもがいたり苦しんだりする時間は少なくなるのではないかと思いますし、障害や特性のある方への理解や配慮はそのまま、『自分がこのまま生きていて良いんだ』という自己肯定感にもつながるのではないかと考えています」

カタバミさんは息子との日常をマンガにして発信しています
カタバミさんは息子との日常をマンガにして発信しています 出典:カタバミさんのツイッター

「息子の世界をいつまでも明るいものに」

今、カタバミさんはツイッターで息子との日々を発信しています。同じ障害があっても症状は様々。「息子と違った特性の子もたくさんいる」ことは常に意識しています。

つぶやき始めたのは、息子のことで眠れないくらい気持ちが不安定だった時期です。

「その時の自分のような方たちの孤独感が薄れて、『自分だけじゃない』『特性をユーモラスだと思えるときもある』と感じてもらえると良いと思っています。それが結局、私の孤独感が薄まることにもつながると思うので」

息子は最近、笑顔が増えてきました。

学校でも笑っていることが多いようで、「6歳にしてやっと、意外と明るい性格な子なんだと分かりました」とカタバミさんは話します。

「成長がとにかく遅いので、少しでも成長を感じるといちいちくす玉が割れたようにうれしいです」

息子は絵を描くことが大好きで、描かれた動物や人物の表情はだいたい笑っています。

「息子の世界をいつまでも明るいものにしておいてあげたい。そのためには私も前向きでいようと思います」

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