MENU CLOSE

連載

#6 #ふしぎなたてもの

「青い屋根に白い壁」各地に マニア愛する「秀和レジデンス」の正体

こちらは渋谷区神宮前​​の秀和外苑レジデンス。印象的な外観だが……。(撮影:金子怜史)
こちらは渋谷区神宮前​​の秀和外苑レジデンス。印象的な外観だが……。(撮影:金子怜史)

目次

「青い屋根」「白い塗り壁」「曲線を描くバルコニーのアイアン」都内の複数のエリアを歩いていて、これらの特徴を持つそっくりなヴィンテージマンションに出くわしたことはありませんか? 一体、これらは何なのでしょうか。一部で熱狂的に愛される秀和レジデンスシリーズについて、“マニア”の方々に話を聞きました。(withnews編集部・朽木誠一郎)
「カッコいい年のとり方」を考えたら、見えにくいモノが見えてきた(PR)

行く先々の「そっくり」な…

10年ほど前、記者が渋谷近辺を散策していたときのことです。印象的なマンションの前で足が止まりました。
左が秀和第二南平台レジデンス。右が秀和第一南平台レジデンス。(画像提供:haco)
左が秀和第二南平台レジデンス。右が秀和第一南平台レジデンス。(画像提供:haco)
「青い屋根」に「白い塗り壁」、「曲線を描くバルコニーのアイアン」––。そのレトロな建物には、今の建物にはあまり見られない特徴がありました。

少し後、記者は高円寺に住み始めました。「おや?」自宅の近所に、そっくりなマンションを見つけました。
 
こちらは杉並区高円寺​​の秀和高円寺レジデンス。(画像提供:秀和レジデンスマニア)
こちらは杉並区高円寺​​の秀和高円寺レジデンス。(画像提供:秀和レジデンスマニア) 出典:秀和レジデンスマニア
以来、次に引っ越した五反田の近くの高輪で、さらにその次に引っ越した八丁堀の近くの築地で、同じく築地にある会社の近くで……それぞれ別の場所なのに、そっくりなマンションに出くわしたのです。
こちらは​​港区高輪の秀和高輪レジデンス。(画像提供:秀和レジデンスマニア)
こちらは​​港区高輪の秀和高輪レジデンス。(画像提供:秀和レジデンスマニア) 出典:秀和レジデンスマニア
こちらは中央区築地​​の秀和築地レジデンス。(画像提供:haco)
こちらは中央区築地​​の秀和築地レジデンス。(画像提供:haco)
こちらは中央区築地​​の秀和築地第二レジデンス。(画像提供:haco)
こちらは中央区築地​​の秀和築地第二レジデンス。(画像提供:haco)
「デジャヴ?」と不思議に思って調べてみると、どうやらこれらは『秀和(しゅうわ)レジデンス』と呼ばれるヴィンテージマンションシリーズなのだそう。そして、このシリーズには“マニア”な人もいるくらい、一部で熱狂的に愛されているようです。

秀和レジデンスをこよなく愛し、最近『秀和レジデンス図鑑』(株式会社トゥーヴァージンズ)という本を出版した著者の谷島(やじま)香奈子さん、haco(ハコ)さんを取材し、その“偏愛”ポイントについて伺いました。

第一号・青山の竣工は1964年

そもそも秀和レジデンスとは、1957年に設立された秀和株式会社が建設・販売したマンションシリーズの名称。東京オリンピックが開催された1964年3月に竣工された秀和青山レジデンスが第一号になりました。

当時は高度経済成長期。オリンピックもあり好景気の日本では、 政府が持ち家政策を推進したこともあり、いわゆる“マンションブーム”が始まっていました。第一号の設計者は駒沢オリンピック公園の体育館などでも知られる建築家の芦原義信さんでした。

その後、2000年までに144棟の秀和レジデンスが建設されました。そのうち現存するのは134棟。多くは東京都に集中しますが、北は北海道、南は福岡まで、日本の各地に存在します。

谷島さんは不動産・リノベーション会社の代表を務めていて、建築のプロであるだけでなく、秀和レジデンスの情報を集約したウェブサイト『秀和レジデンスマニア』の運営をしながら、自身も秀和レジデンスに住んでいます。

秀和レジデンスの特徴として、よく挙がるのが前述した「青い屋根瓦」「白い塗り壁」「曲線を描くバルコニーのアイアン」。谷島さんはそれ以外にも、プロ視点からの特徴があるとします。

「実は秀和レジデンスの全体の約3割は港区・渋谷区に集中するなど、都心の立地のいい場所に建っています。築年数は古いですが、管理がしっかりしており、賃貸・分譲ともに人気のマンションです」

利便性の高いエリアにたくさんあるということで、やはり記者のように「デジャヴ」と感じる人もいるかもしれません。それはこのような立地の特徴によるものと言えそうです。では、実際の秀和レジデンスでの暮らしはどんなものなのでしょうか。

「一番の魅力は、コミュニティーだと思います。秀和を好きな方が入居しているため、同世代では同じ感覚を持った方が多いと感じます。また、何かしらのデザインに関わる方が多い印象です。特に子どもが小さい頃は、同じマンションの方に助けられました。古いマンションですが、ゴミ置き場やエントランスの植物の管理もしっかりしていて、マンションが大事にされていることを感じます」
 

不合理を大切にしたデザイン

hacoさんが秀和レジデンスに出合ったのは、高校生の頃だったそう。受験で上京した際に、代官山の秀和レジデンスを見かけ「お城みたいでかわいいマンション」と思ったと言います。その後、仕事で秀和レジデンスを訪れ、都内に複数あるそっくりなマンションが秀和レジデンスシリーズだと認識したのが、15年ほど前。

「どんどん気になりだして」、以来、各地の140棟弱、つまりほとんどの秀和レジデンスを見にいくほどになりました。

そんなhacoさんは、秀和レジデンスの魅力を「同じように見える特徴の中に、実はさまざまな違いがあるところ」だと説明します。

例えば、「白い塗り壁」はラフウォールと呼ばれますが、モルタルの塗り方が棟により異なり、その模様は「犬」のように見えるもの、さらに「蝶」「珊瑚」「稲妻」「波しぶき」などさまざまです。
 
「蝶」の群れのようにも見える秀和多摩川レジデンスのラフウォール。(画像提供:『秀和レジデンス図鑑』)
「蝶」の群れのようにも見える秀和多摩川レジデンスのラフウォール。(画像提供:『秀和レジデンス図鑑』) 出典:『秀和レジデンス図鑑』
青い屋根やバルコニーのアイアンも、材質や色、形状が違ったりと、棟により個性があるということです。
 
秀和高樹町レジデンスでしか見られないというオリジナルのアーチ。(画像提供:『秀和レジデンス図鑑』)
秀和高樹町レジデンスでしか見られないというオリジナルのアーチ。(画像提供:『秀和レジデンス図鑑』) 出典:『秀和レジデンス図鑑』
他にも、多くの秀和レジデンスには、アプローチ(敷地の入口から玄関までの通路)に敷き詰められたタイルや、ステンドグラス、塔屋などがあり、それぞれの要素の組み合わせにより、唯一無二の秀和レジデンスが形作られているのだそう。
秀和三田綱町レジデンスのビビットな配色のタイル。(画像提供:『秀和レジデンス図鑑』)
秀和三田綱町レジデンスのビビットな配色のタイル。(画像提供:『秀和レジデンス図鑑』) 出典:『秀和レジデンス図鑑』
出版にあたり、すでに解散した秀和株式会社でデザインなどを担当していた方に取材をしたというhacoさん。前述の塔屋について「なぜあの形にしたのか」と聞くと、その方が「だってかわいいでしょ」と答えたことが心に残っているそうです。

hacoさんが出合ったときの「かわいい」という感想は、まさに秀和レジデンスのデザインのコンセプトだったことがわかるエピソードです。そして一見、合理的ではないように思われるデザインについて「『かわいい』を一番大切にしてもよかった時代を羨ましく思う」こともあると言います。
 
『秀和レジデンス図鑑』(株式会社トゥーヴァージンズ)
『秀和レジデンス図鑑』(株式会社トゥーヴァージンズ) 出典:『秀和レジデンス図鑑』
すでに取り壊されてしまったものもある秀和レジデンス。hacoさんは、まだ残っているものを大切にしたいとした上で、「街で秀和レジデンスを見かけたときは、ぜひみなさんそれぞれの『かわいい』を見つけてください」と話しました。

【連載】#ふしぎなたてもの

何の気なしに通り過ぎてしまう風景の中にある #ふしぎなたてもの 。フカボリしてみると、そこには好奇心をくすぐる由縁が隠れていることも。よく見ると「これなんだ?」と感じる建物たちを紹介します。

連載 #ふしぎなたてもの

その他の連載コンテンツ その他の連載コンテンツ

全連載一覧から探す。 全連載一覧から探す。

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます