連載
#67 夜廻り猫
牛丼かばんそうこうか、なけなしの350円 11年後は…マンガ夜廻り猫
就活の時にできた、ひどい靴ずれ。夕食の牛丼代にするつもりだったなけなしの小銭で、ばんそうこうを買うしかなかった男性は……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、ツイッターで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、11年前の就活を思い出した男性のエピソードです。
牛丼屋の前を通り過ぎた男性の、心の涙の匂いに気づいた猫の遠藤平蔵。「泣いておるな?心で よかったら話してみなさらんか」と声をかけます。
11年前、就活で歩き回っていた男性は靴ずれが悪化。翌朝に備えてコンビニに入りました。
しかし手持ちは牛丼代にするつもりの350円だけ。ばんそうこうは330円でしたが、買うしかありませんでした。
「夕飯か靴ずれ治療か、どっちかしかできない人生……ねえわ! 俺は働く!仕事さえあれば」
そう心に決めて頑張って働いた11年後、どうなったかというと……。
男性はおもむろに「今も金ねえんだよ!」と叫びます。「おいたわしや」と手を合わせる遠藤。
しかし男性は「でも牛丼は買えるぞ 食う?一緒に」と誘うのでした。
「若い人が夢や希望を持てなくなっていないかが心配です」と語るのは、作者の深谷さん。
結婚を決めた若いカップルが、「2人で働けばなんとかマンションを買えそう。子どもまでは届かないけど」と話しているのを聞いたそうです。
「自らの選択であればいいのですが、『本当はほしいけど届かない』と諦めていたのだとしたら……」
高校生の夢が「食うに困らないこと。親の退職後も家賃が払えて、ホームレスにならずにすむこと」だと耳にしたことも。
「少しの余裕がなければ、生きることはつらいです」という深谷さん。
「若い人がはじめから諦める様子には、特に胸が痛いです。みんなが少しの余裕を持てる世の中にしなければ、と思います」
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