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お金と仕事

「お前だせえよ」の言葉で成長 ABEMA開局後に退職して選んだ道

サイバーエージェントを辞め、2年間の放浪生活後、定額制のパーソナルフード「GREEN SPOON」を始めた田邊友則さん
サイバーエージェントを辞め、2年間の放浪生活後、定額制のパーソナルフード「GREEN SPOON」を始めた田邊友則さん

目次

定額制のパーソナルフードとして、スムージーやスープ、ホットサラダの販売をする「GREEN SPOON」。創業者の田邊友則さん(33)は、サイバーエージェントの出身です。サイバー時代は、Amebaブログの広告営業や、AbemaTV(現・ABEMA)の立ち上げに関わりました。しかし、AbemaTVが始まって半年後に退社を決断。約2年の「放浪生活」を経て、いまの事業を興します。自分のやりたいことと、結果を出すこと。仕事をする上で大切にしている考えは、サイバーエージェント・AbemaTVで出会った上司や同僚の影響がありました。

「カッコいい年のとり方」を考えたら、見えにくいモノが見えてきた(PR)
スムージーやスープ、ホットサラダ用に瞬間冷凍した食材の販売をするGREEN SPOON=同社提供
スムージーやスープ、ホットサラダ用に瞬間冷凍した食材の販売をするGREEN SPOON=同社提供

「人を喜ばせること」が喜び

自分を好きでい続けられる人生を――。

2020年春にスタートしたGREEN SPOONが掲げるビジョンは、田邊さんが大切にしている人生の指針でもあります。ただ、自分の思いに沿ってビジネスをしていくには紆余曲折がありました。

両親の影響もあって、「人を喜ばせること」が好きだったという田邊さん。20代の頃は、友人の結婚式二次会の幹事を「趣味」と言うほどです。「15回ぐらいはやりましたね。同窓会の代表や、キャンプの幹事もかなりやりました。みんなが喜んでいる姿を見るのが、自分にとって一番気持ち良いんです」

就職活動を広告代理店に絞ったのも、「一番、世の中をワクワクさせられると思ったから」。CMなどで心が動いた経験から、仕事をするイメージができた数社を受験し、サイバーエージェントに2012年に入りました。

「自分を好きでい続けられる人生を」というビジョンを掲げるGREEN SPOON
「自分を好きでい続けられる人生を」というビジョンを掲げるGREEN SPOON

自分の仕事に疑問

しかし、入社からまもなく、田邊さんは壁にぶち当たります。

スマホの普及に伴い、拡大していたゲームアプリの広告営業に。求められた仕事は「いかにアプリをインストールしてもらうか」でした。ゲームの魅力を伝え、ユーザーにも喜んでもらう……はずが、田邊さん自身が担当するコンテンツに共感できませんでした。

「自分が共感していないものを広めて、喜んでもらうイメージが浮かびませんでした。そんな仕事を『なぜ自分がする必要があるんだ』と思ってしまって」

10年経った今は、「まずは『与えられた仕事をしっかりやれ』と言いたい」と笑う田邊さん。しかし当時は、真剣でした。不完全燃焼のまま勤務を終えると、向かう足は渋谷のオフィスから代官山の蔦谷書店へ。

今の仕事をする意義は? 自分が本当にやりたいこととは?

参考になりそうな本を片っ端から読んだり、考えを整理するためにブログを書いたりしながら、自分と向き合う日々が続きました。

上司から「お前だせえよ」

一方、同僚には恵まれていたと言います。「互いに刺激し合える仲間がたくさんいました」。そのなかの一人が、田邊さんの仕事との向き合い方を変えました。

「ゲームアプリからブログサービスの営業に移ったときの上司です。年次が一つ上で、自分は大学を留年していたので同い年。ですが彼は、仕事で大きな結果を出していて、すでに100人ぐらいの部署をマネジメントする立場でした。結果を出すだけでなく、誰よりも凡事徹底した人格の部分も尊敬していました」

「その彼に、仕事で悩んでいることを相談したときに、『お前だせえよ』と言われたんです。『何も結果を出していないのに、やりたいことやれていないと言うのは』って」

「こたえましたね。『なんか、ださいな』と自分でも気がつきました」

結果にこだわったが

そこから、「まずは結果を出そう」と田邊さんが取った行動は、その上司になりきることでした。「土日も問わず彼にくっついて、行動や思考をすべて吸収しようとしました」

背中を追うなかで痛感したのは、上司の「誰よりもやりきる」姿勢でした。「彼だって4年目ぐらいでしたけど、経験や知識がある人たちより結果を出すために相当な努力をしていました」。そんな姿を見習い田邊さんも、週末は翌週の準備や新しい知識の習得に充てるなど、1週間のほとんどを仕事中心の生活に。すると、営業の結果もついてきたといいます。

「毎月社内表彰されるなど、結果を出し始めたときは活躍している実感もあったし、面白かったです。ただ、そこからまた考えちゃったんですよね。『これって本当に自分がやるべきことなのか』って」

結果を出しても満たされなかった、仕事をする意味。田邊さんの気持ちは退社へと傾きます。「会社をやめます」。意を決して伝えると、会社から返ってきたのは新しいプロジェクトへの誘い。AbemaTVの立ち上げメンバーになることでした。

結果を出し始めた頃の田邊さん=本人提供
結果を出し始めた頃の田邊さん=本人提供

ABEMAで目の当たりにした同僚の熱意

2016年春の開局に向けて、前年秋から準備チームに加わった田邊さん。任されたのは、スポーツチャンネルの立ち上げでした。テレビ朝日の担当者がいたものの、サイバー側では田邊さん一人だけ。流すコンテンツの権利の買い付けから、どの時間帯に流すかを決める編成まで、チャンネル開設のために奔走しました。

開局してからも、生放送の番組づくりや普段なら出会えない人に会えるなど、「ものすごい刺激がある毎日でした」と振り返ります。チャンネルは軌道に乗り、仲間も増えましたが、同時に「自分がここにいてはいけない」と思うように。その理由は、一緒に仕事をしていたテレビ朝日からきた同僚の存在でした。

「チャンネルはどんどん大きくなって、メディアとしてスポーツ業界にも影響を与えるようになっていきました。メディアをやる以上、大前提として、ものすごいパッションのある人がやるべきです。その点、彼はスポーツに対する情熱が本当にすごくありました」

「特に格闘技はすごくて。今格闘技でABEMAは一目置かれていますが、彼がずっと育ててきたものです。まさに、『情熱込めて好きといえるもので、人を喜ばせたい』という自分がなりたい姿でした」

「仕事に対してのやりがいや熱量はありましたけど、スポーツへの愛が彼ほどあるかと言われると自信がなかった。そんな人間がこのまま続けちゃいけないと思ったんです」

2人から始まったAbemaTVスポーツ局の同僚たちと=本人提供
2人から始まったAbemaTVスポーツ局の同僚たちと=本人提供

自分が欲しかったサービスをつくる

新天地でも再び、仕事をする意味と向き合うことになった田邊さん。選んだのは、サイバーエージェントを離れる道でした。「心からやりたいことっていうのは結局、自分でやらない限り、いつまでも言い訳し続けるんです」。思いは募り2016年秋、4年半過ごした会社に別れを告げました。

退職後はすぐに起業するのではなく、アメリカやヨーロッパ、アジアを転々とする生活を2年間続けました。「根詰めて働いていたので、いったん気ままに過ごしたいと思いました」。英語留学をしたり、現地で日本人のビジネスを手伝ったり。海外で暮らすなかで影響を受けた価値観が、健康を軸とするライフスタイルでした。

「ハワイで現地の人から言われた、『健康と人間関係は、一番良い時が最も頑張り時だよ』という言葉が印象に残っていて。人間関係もですけど、健康はまさにそうだなと思ったんです」

「過去の自分を振り返っても、忙しく働いている時期って健康を顧みない人はいるんじゃないかなと。特に食生活。サイバーにいたときは、コンビニで買う弁当が中心でした。自分はステーキを始め肉料理が大好きですが、一人暮らしだったこともあり野菜はなかなか食べず。明らかに栄養が偏っていました」

サイバーエージェント退社後、海外での放浪生活をした田邊さん=本人提供
サイバーエージェント退社後、海外での放浪生活をした田邊さん=本人提供

そんな昔の自分が欲しかったと思えるサービスをつくりたい。日本に戻り、浮かんだのが野菜をテーマにした商品開発でした。ビジネスとしてもしっかり成果を出すために市場やトレンドなども徹底的に研究。VCの支援を得てたどり着いたのが、「自分に必要な野菜やフルーツ、スーパーフードを配合した冷凍スムージーキットが自宅に届く」サブスクでした。

田邊さんの思いは、周りの共感も生みました。大学から10年来の親友と、サイバーエージェントの同期が創業メンバーとして参画。キットを製造する工場や管理栄養士らの専門家といったビジネスパートナーも得て、2020年3月にサービスを開始しました。

スムージー以外にもスープ、ホットサラダとラインナップを増やしたGREEN SPOONは、今月に入り累計販売個数が100万個を超えました。一方、「人を1回喜ばすことと、多くの人を喜ばし続けることは難易度が圧倒的に違います」と成長を続けるがゆえの課題にも直面しています。

それでも、仕事をする意味は見失っていません。「自分が欲しいと思っていた商品をつくって、SNS上や身近な人に喜んでもらえる。こんなにうれしいことはありません」。目指すのは、20年後、30年後も残り続ける食のブランド。挑戦は、始まったばかりです。

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