連載
#3 特別じゃない日
夏祭りでスマホばかり見てる男の子 「今どきの子は」と思っていたら
「特別じゃない日」をテーマに描き続けている漫画家・稲空穂さんが「スマホ世代」について描きました。作品に込めた思いを聞きました。
せっかく夏祭りに来たのに、スマホばかり見ている男の子。
ヨーヨー釣りのときも、クジ引きの時もスマホを手放しません。
「スマホにばかり夢中で、今どきの子だなぁ……」と思いきや、目の前で大きな花火が打ちあがります。
スマホのカメラを花火に向ける男の子。
画面には、家で留守番をしている小さな妹とお母さんの姿が。
病気の妹のために、スマホのビデオ通話で夏祭りの様子をずっと映していたのです。
この作品を描いた2019年当時、家族が海外に単身赴任をしており、1週間に1度のビデオ通話が楽しみでした。
異国の地で自分の住んでいる部屋の様子、食べているもの、購入したものを画面越しに見るあの時間がとても楽しかったことを覚えています。
(スコールの最中の雨漏り実況はさすがに心配になりましたが)
発表当時からとても多くの方に読んでいただき、とても思い出深い作品ですが、コロナ禍でリモート通話が主流となってしまった今読み返すと、やはり直接一緒に何かをできるうれしさに勝るものはないな、と感じます。
この作品を読んで「こんな方法もあったね」と言ってもらえる日が、また早く来るといいなと強く願っております。
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〈稲空穂=いな・そらほ〉 静岡県出身・在住の漫画家。会社員を経て2017年に「おとぎ話バトルロワイヤル」(KADOKAWA)でデビューし、「特別じゃない日」で日常をテーマにした作品に挑戦中。老夫婦や女子高校生、主婦、バイトの青年……それぞれの小さな幸せがつながっていく物語を描いていて、実業之日本社から第1集が書籍化されています。Twitterアカウントは@ina_nanana
withnewsでは原則隔週水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。
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