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ネットの話題

「東京に行きます」MKタクシー〝一般社員〟の転居報告に2万いいね

7年間のツイッター担当への「はなむけ」

何気ないイラストを添えた「#猫バンバン」の投稿もバズった
何気ないイラストを添えた「#猫バンバン」の投稿もバズった 出典: MKタクシーのツイート

目次

「Twitterを担当して約7年。今月より東京へ行きます。」
京都に本社を置く「MKタクシー」のアカウントがツイートした内容に、2万超の「いいね」がつきました。「一般社員のお知らせに…恐れ多いです」と恐縮する「中の人」に、お話を聞きました。

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「勤務地変更のお知らせ」にも反響

話題になった投稿はMKタクシーの「中の人」が2月3日につぶやいた「お知らせ」でした。

Twitterを担当して約7年。

今月より東京へ行きます。
MKタクシーのツイート

2行の短いお知らせには、画像3枚で挨拶文を添付しています。

挨拶はこんな書き出しで始まります。

1人のただの会社員のことなので、そんなに本格的なお知らせもどうなのかと思いましたが、長年1人で担当させて頂き、京都を撮影し、京都の情報を載せ、皆様と多くのコミュニケーションを取らせていただいた、ということもあり、ご報告させていただきます。

結婚に伴い、東京へ転居することになったこと。
辞職を考えていたけれど、会社の計らいで、グループ会社で同じような仕事ができること。
そして、フォロワーや京都の方への謝意を述べ、こう締めくくっています。

「以上、Twitter担当の勤務地変更のお知らせでした」

この「転居のお知らせ」ツイートには、「末永くお幸せに!」「同じ中の人として素晴らしいと思います」「新天地でのツイート楽しみにしています」と多数の企業アカウントなどから700件超もコメントが寄せられ、「はなむけ」のような2万超のいいねが集まりました。

「ツイ廃」ではなかった新卒社員

「中の人」は、どんな人なのか。

MKタクシーの本社代表番号に電話し、「ツイッター担当者のことを聞きたいんですが」と尋ねると、たらい回しもなく、すぐに「中の人」につながりました。

「中の人、ですか?」と尋ねると、「そうです(笑)」と朗らかに答えてくれたのは、「経営企画部ブランド戦略室」の今井さん。本社勤務最終日の2月8日が迫る中、お話を聞かせてくれました。


約7年前。新設されたばかりの「ブランド戦略室」に、新卒だった今井さんは配属されました。

たった4人のチーム。課されたお題の一つが「SNS」でした。

ところが、当時の会社のツイッターアカウントは、開設4年でフォロワー数わずか40人。「アカウント名は社長の名前、アイコンは社長の顔でした」

とはいえ、今井さんも数週間前まで学生。ツイッターでは「レポート終わらん」とつぶやくぐらいで「ツイ廃」というほどの手練れでもありません。

とりあえず「社長」のアイコンを変え、チームの4人交代でつぶやくことになったものの、「若い人にウケるって、なんなんだろう……」と悩みました。

業務の合間に、「シャープさん」「セガさん」「タニタさん」などの有名企業アカウントを見たり、「乗り物」つながりの阪急電車ツイート担当者を訪ねたりして、研究を重ねました。

京都水族館とのコラボで、オオサンショウウオのぬいぐるみを乗車させ、話題になったMKタクシー。写真は運転手の岡田夏実さん=2021年9月、京都市南区、富永鈴香撮影
京都水族館とのコラボで、オオサンショウウオのぬいぐるみを乗車させ、話題になったMKタクシー。写真は運転手の岡田夏実さん=2021年9月、京都市南区、富永鈴香撮影 出典: 朝日新聞社

「やってみろ」であと押し

転機は1年目の秋にやってきました。

仕事で親交のあった京都の神社から、戸惑いの問い合わせがありました。若い女性が急に神社に列を作っていると言います。「何か知らん?」

調べると、刀剣を擬人化したオンラインゲーム「刀剣乱舞」が人気になり、刀剣にゆかりのある神社にも注目が集まっていることが分かりました。

「神社巡りしやすいように、タクシーでつなぐツアーを組んだら売れるのでは」

チームで会社に提案したところ、「擬人化ってなんや?」と最初は理解はされませんでしたが、「刀がイケメンなんです! とりあえず売らせてください!」と押し切りました。

このツアーがファンの間で有名になり、全国から200人の客を集める、社として異例のヒットになります。「刀剣ファン」を中心にフォロワーはじわじわと増え、1年経つ頃には40人から、1500人に増えていました。

その頃でした。今井さんが「ツイッターを専任でやらせてください」と会社に提案したのは。

それまでは4人の交代制でしたが、今井さんは、過去にフォロワーと交わしたやりとりを念頭に置いた上で、責任を持って「会話したい」と思っていました。


「やってみろ」

会社は入社1年の今井さんに、企業アカウントを任せました。

変わっていった会社

専任になった年の冬。寒い日に車体をたたいて、入り込んだ猫たちの安全を確保する、「#猫バンバン」に共感し、今井さんは手書きのイラストを添えて「全てのドライバーへ」と投稿しました。

するとこれがバズり、取材も依頼される事態に。

一つ一つの投稿に会社の許可を取っているわけではなく、この時も、外部からの反響で会社が認識。今でこそ「ツイッター担当」と言えばすぐ今井さんにつながりますが、当時は「取材って何なんだ」と驚かれました。

バズりが社員の意識を変えるきっかけになったことも。

「いきなりですけど、こういう手元の写真好きな方どれぐらいいらっしゃいます?」
ある日、今井さんがツイートしたのは、白手袋をつけたドライバーの手元ばかりの写真。

この投稿に「かっこいい」「執事っぽい」と3万超のいいねがつきました。「こんなに支持されているのか」と、ドライバーたちも、白手袋着用への意識を改めたと言います。

「美し過ぎる」ものはボツ

取材していて気づいたのは、今井さんのツイートに隠された、「巧み」さ。

「これ書いちゃうと、面白くないかもしれないですけど」と恐縮しながら語ってくれたツイートへの熱意は、「こんなにコツを教えてくれちゃっていいの?」と筆者が手汗をかいてしまうほどでした。

MKタクシーの「十八番」である、印象的な風景写真の投稿。

そもそも、初期にフォロワーになり、長く応援してくれている「刀剣ファン」たちを思い浮かべ、「若い女性なら、車両の写真よりも、観光で参考になるような風景写真の方が良いのでは?」と考えて、風景写真多めに、戦略的に変えたことがきっかけでした。

ドライバーが行く先々で撮影した写真を投稿したり、雪が降れば「出てきます」とチーム2~3人がツイッター投稿のために、社外撮影に飛び出すほど、気合を入れています。

そんな風景写真を投稿する時、今井さんが考えているのは「誰もがリツイートしやすい投稿か?」ということでした。

例えば、あじさいを背景に歩くニワトリを撮影した写真。1つ目の投稿では、あえて画像1枚にして、一言「今日、夢みたいな光景が撮れまして。」と添えるだけです。

情報が少ないため、自然に写真の美しさに目がいき、「いいね」やリツイートをしたくなります。

2つ目の投稿で、ようやく、撮影したお寺の場所や、拝観方法などの情報を追記。

ニクイのは、3つ目の投稿で、あえてピントがボケた「失敗」写真を載せるところ。「きれいに撮り過ぎちゃうといけないんです。あくまでタクシー会社なので」


ドライバーが撮った美しい風景写真も、彩度が高く「美し過ぎる」ものは容赦なくボツにします。

判断基準は、「観光で訪れたとき、実際に人の目で見られる風景かどうか」。

「架空のタクシー会社」かと

ツイッターで、あまりにもタクシーのことをつぶやかないので、「架空のタクシー会社」だと勘違いされ、「MKタクシーって本当に走っているんだ」というコメントが寄せられたこともあるそうです。


ベンツ車両の撮影に行ったとき、今井さんが投稿したのは、撮影中に寄ってきた猫の写真。見せたかったのは、猫の傍らで優しく微笑んでいる、ドライバーの「人柄」でした。

《上司から無言で送られてきました》という投稿では、うずくまるネコが一匹。もはやタクシーなど関係ない投稿ですが、「気心の知れた上司との関係性」がにじんでいることがうけ、14万超のいいねが集まりました。

今井さんが大事にしてきたのは、「人柄」や「京都の美しさ」が伝わる投稿。そこを気に入ってフォローしてくれた人は、離れにくいと感じています。

「私たちは、実際に京都に来てくれないと売れないものを売っている会社です。だから投稿を見て、京都のいろいろな場所に足を運びたいと思ってくれたらうれしい。そしていつかふと『MK』を思い出してくれたらいいなぁと思っています」

すぐに収益につながらなくても気にしない、と会社も構えていると言います。それでも時々届く「MKタクシーの投稿と同じ場所に行ってみた」という声が、確かにまかれた「種」の意義を感じさせます。

「自社タクシー推すの下手」

今井さんにとっては、学生時代と入社後、合わせて約10年を過ごした京都。

そんななじみ深い町を離れる心境を聞くと、「まだまだ全然回れていないですね」と悔しそう。

「まだ京都にいられる方、思い立ったが吉日で、いろいろ巡ってください!」とエールを送ります。

「京都の楽しみ方」を聞くと、「桜、新緑、紫陽花、紅葉。その季節に合わせて一番良いところに行ってほしいです。『今こんな感じです』とツイートもするので参考にして頂きつつ」と今井さん。

筆者は思わず「そこは、『ベストスポットをMKタクシーで案内します!』じゃないんですか?」と突っ込んでしまいます。
今井さんは「自社タクシー推すの下手なんですよね」と苦笑し、「観光地について、論文くらい詳しい」という自社の「MKメディア」上で、「サクラ」などと検索してスポットを探す方法を教えてくれました。

「9対1で京都」

会社の計らいで、東京でもMKグループの会社に勤め、ツイッター担当を引き続きできるそうです。

「9(京都)対1(東京)ぐらいの割合で、京都にかかわった仕事をして、東京から京都を布教したいです」と意気込む今井さん。京都の風景写真は、ドライバーや社員からの提供を受けて投稿していくそうです。

たまには東京にいる今井さん撮影の、東京の写真も見られるかもしれません。

「満員電車、がんばってきます!」

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