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#49 「きょうも回してる?」

「あんたはえらいっ!」合いの手ガチャが誕生、コロナ逆風からの一手

夢屋が手がける「その気にさせて今日も安泰 合いの手ボタン」=筆者撮影
夢屋が手がける「その気にさせて今日も安泰 合いの手ボタン」=筆者撮影

目次

「あんたはえらいっ!」「ごもっとも ごもーっとも」。今は見かけることも少なくなった合いの手やヨイショを、押しボタンにしたガチャガチャが昨年末に登場しました。製作したのは外国人向けのご当地商品を作っていたメーカーです。新型コロナウイルスの影響でインバウンド需要が激減し、「立ち行かなくなった」ところから、新ジャンルで再起を図る動きをガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が取材しました。
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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

新型コロナ、業界にも影響

新型コロナウイルスの感染拡大防止策の⼀環として、国境をまたぐ往来が止まり、観光業が大きく影響を受けました。日本政府観光局(JNTO)の推計によると、2021年11月の訪日外国人客数は2万700人でした。新型コロナ流行前の2019年の同じ月と比べると、99.2%減に相当し、依然として制限が続いていることがわかります。

ガチャガチャ業界も少なからず影響を受けました。新型コロナ前までは、インバウンド需要を見込んで、空港にガチャガチャ売り場を設置するなど一時期注目を浴びていましたが、今や話題にも上がらなくなりました。

中部空港に設置されたガチャガチャ=2018年4月
中部空港に設置されたガチャガチャ=2018年4月 出典: 朝日新聞社

外国人向けのご当地商品を作っていたメーカーも苦境に立たされました。2009年に設立の夢屋です。ピンズやストラップなどの金属小物アクセサリー製品を中心に、「ご当地本舗夢屋」というブランドで都道府県の名所や名産品をモデルにしたガチャガチャを販売していました。

近年はインバウンド需要で売り上げは伸びていましたが、コロナ禍で一気に逆風が訪れました。

「ご当地商品は外国人に好まれます。しかし、コロナ禍でインバウンド需要が止まってしまい、立ち行かなくなってしまいました」

こう話してくれたのは、夢屋の代表の笹沼祐之さんです。しかし笹沼さんは、この苦境をチャンスと捉え、オリジナル商品を新しい収益の柱に育てる取り組みを2021年からスタートさせました。

「ヨイショ」ボタン生まれた背景

夢屋のオリジナル商品は「ギミック系」と「フィギュア系」を中心に展開しています。「ご当地商品は、お客さんが観光で来ていることを前提としているので、どういったものを作ればいいかわかります」と笹沼さん。一方、オリジナル商品は大手メーカーがしのぎを削っており、個性を出すために二つの領域を選んだそうです。

ギミック系では、押しボタン系の商品に注力しています。押しボタン系は、20年からファミリーレストランで見かける呼び出しボタン、バスの降車ボタン、家の呼び出しボタンなどを各メーカーが商品化しています。

こうした動きに対し、笹沼さんは「いま市場に出ている押しボタン系は、本物をリアルに再現・縮小した商品になっています。当社が同じような商品を作ってはつまらないし、面白くありません」と、「人とのコミュニケーションを楽しむ」をテーマに、夢屋おしゃべりシリーズを立ち上げました。

今回は、夢屋おしゃべりシリーズのひとつであり、昨年12月に発売した「その気にさせて今日も安泰 合いの手ボタン」です。

夢屋おしゃべりシリーズのひとつである「その気にさせて今日も安泰 合いの手ボタン」=筆者撮影
夢屋おしゃべりシリーズのひとつである「その気にさせて今日も安泰 合いの手ボタン」=筆者撮影

「思い切り持ち上げましょう」をコンセプトに、宴会などでどんな言葉が生まれるのかを社内で考え、100個ほど出た言葉のなかから、5つの音声ボタンになりました。

その5つとは、「ガッテン、ガッテン承知!」「ごもっとも ごもーっとも」「いいもの見せて頂きましたー」「あんたはえらいっ!」「感謝 感激、雨 あられ」です。シュールすぎて笑ってしまいますが、まさに人をヨイショするコミュニケーショングッズです。昭和世代の人なら、宴会で一度は聞いた言葉があるかもしれません。声優さんなどを活用し、録音したそうです。

「今はいなくなりましたが、昔は『よっ、社長、大統領!』など本当に言った人がいました(笑)。年代のギャップもありますが、人を持ち上げることの面白さがポイントです」と話す笹沼さん。一般的な押しボタン系の要素プラスαとして、生まれたのが、夢屋おしゃべりシリーズです。

ボタンのおすすめを聞くと、笹沼さんは「『あんたはえらいっ!』です。この言葉は、人の気分を持ち上げてくれます(笑)。若い人は知らないかもしれませんが、昭和世代で、この言葉を知っている人なら響くと思います(笑)」と熱く語ってくれました。

ボタンから流れる音声は……=筆者撮影

押しボタンに面白さをプラス

商品のディスプレイPOPも、おしゃべりシリーズの世界感が表現されています。「ノリノリでのせられまくり」「ゴマをすりましょ すりましょゴマを」「世の中チョロイ! 合いの手ボタン」などの言葉がちりばめられ、なんとも言えないくだらなさが、より面白さを際立たせています。また、若い人にもどんな商品かを知ってもらえるように、QRコードも載せており、実際に収録した音声動画を見ることができます。

シリーズの世界感が表現されているディスプレイPOP=筆者撮影
シリーズの世界感が表現されているディスプレイPOP=筆者撮影

「コミュニケーションをテーマに、いろいろなシチュエーションを想像し、その世界観で『どんなコミュニケーションを取るのか』を考えて作っています」

おしゃべりシリーズで大事にしていることをこう表現した笹沼さん。今後については「音声のギミックは、一般的に本物の音が出るものが知られています。それに面白さをプラスαしたものを作っていきたいです」と話してくれました。

押しボタン系のギミックで、まさに新ジャンルを築いたおしゃべりガチャの誕生です。

     ◇

「その気にさせて今日も安泰 合いの手ボタン」は、「ガッテン、ガッテン承知!」「ごもっとも ごもーっとも」「いいもの見せて頂きましたー」「あんたはえらいっ!」「感謝 感激、雨 あられ」の全5種類。1回400円。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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