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「ラッコは見られるうちに見た方がいい」兄が力説した理由

あと4頭って本当?水族館に聞いてみた

鳥羽水族館の人気ラッコ「メイ」
鳥羽水族館の人気ラッコ「メイ」 出典: 映像提供:鳥羽水族館

目次

「みんなラッコを見られるうちに見に行った方がいいと思うのだ」久しぶりに会った兄が家族に語ったことを描いた漫画がツイッターで注目されています。作者と水族館に、話を聞きました。

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「どこの水族館にもいると思っていた」

話題になっているのは、恵水さん(ツイッター:ワンコロもちべヱ〈 @WANKOnin 〉)が投稿した漫画です。

年末、久しぶりに会った兄との話。

唐突に兄が語りだしました。
「みんなラッコを見れるうちに見に行った方がいいと思うのだ」

「久々に会ってするのラッコの話?」
つっこむものの、兄の熱弁は止まりません。

「輸入禁止になってもう長い」
「今日本にいるラッコもあと4匹しかいない」
「流されないように手を繋ぐラッコがかわいい」
「関東ではもう会える水族館がない」

ラッコトークは白熱し、結局、兄の近況は何一つ語られなかった、という「日常の一コマ」を描きました。

恵水さん(ツイッター:ワンコロもちべヱ〈 @WANKOnin 〉)の漫画
恵水さん(ツイッター:ワンコロもちべヱ〈 @WANKOnin 〉)の漫画

しかし、漫画には予想外の大きな反響が届きます。「ラッコってそんなにレアなんだ!?」「どこの水族館にもいると思っていた」「最近見なくなったと思ったら!」などと驚く声が上がり、2万件以上の「いいね」を集めました。

「影響受けはじめています」

恵水さんに話を伺いました。

もともと動物好きのお兄さんでしたが、特に「ラッコ好き」という印象はなく、久しぶりの話題に「急にラッコ推してきてどうした」とびっくり。

ウェブ漫画家で、普段からブログ( https://ninjago.blog.jp )でエッセイ漫画を発信している恵水さん。

兄との会話も、「唐突過ぎて笑った今日の日記、くらいの気持ち」で漫画化したと言います。

漫画は「同じようにラッコの現状を知らなかった人たち」の間で衝撃とともに予想外に拡散され、「(反響で)ラッコの情報がどんどん届くので、『私もラッコ見に行こうかな』と、兄ではなく読んだ方の感想から影響受けはじめています(笑)」と話しました。

日本でラッコが見られる水族館は

本当に、ラッコは水族館でそんなに「レア」な存在になっているのでしょうか。

以前は国内でも120頭以上のラッコが飼育されていたそうです。

しかし、主な生息地であるアメリカが規制し、98年を最後に日本へのラッコ輸出は途絶え、水族館で飼育されるラッコの数もだんだんと減っていきました。

昨年5月には、国内で飼育されていたラッコの最高齢だった神戸市立須磨海浜水族園のオス「ラッキー」が死に、現在、残り4頭になっています。

朝日新聞デジタル:神戸のラッコ、22歳で大往生 老衰、人間なら100歳
2019年5月、氷のバースデーケーキを食べるラッコの「ラッキー」=2019年5月12日、神戸市須磨区の市立須磨海浜水族園、川嶋かえ撮影
2019年5月、氷のバースデーケーキを食べるラッコの「ラッキー」=2019年5月12日、神戸市須磨区の市立須磨海浜水族園、川嶋かえ撮影 出典: 朝日新聞社

今、日本でラッコを見ることができるのは鳥羽水族館(三重県鳥羽市)の2頭と、マリンワールド海の中道(福岡市)の1頭。

神戸市立須磨海浜水族園には、ラッキーのほかにもう1頭いますが、現在は再整備工事のため、一時的に千葉県の鴨川シーワールドで飼育されており、展示されていません。

食費「かなりかかってます」

水族館で見られるラッコのうち2頭を飼育している、鳥羽水族館に話を聞きました。

鳥羽水族館には、メスのメイ(17歳)とキラ(13歳)がいます。キラは、昨年、アドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)から譲渡されたばかり。


漫画で注目されたセリフに「(ラッコは)高級食材ばかり食べるから飼育も大変」とありましたが、本当でしょうか?

これには「本当です」との答え。

食べているエサの種類はスルメイカ、ウチムラサキガイ、カジキ、タラ、アマエビ、ワタリガニと幅広い「美食家」で、「年間かなりかかっています(金額は非公開)」とのこと。

年明けには特別にお年玉として、縁起物である「伊勢エビ」入りのアイスケーキをプレゼントしたそうです。過去に飼育していたラッコたちもお気に入りだったという伊勢エビ。

でも「新入り」のキラは、伊勢エビが苦手ということで、ある「工夫」をしました。

イカを「伊勢エビ」に見立てて装飾したアイスケーキを作ったそうです。

伊勢エビが苦手なキラのために作った特製イカアイスケーキ
伊勢エビが苦手なキラのために作った特製イカアイスケーキ 出典: 映像提供:鳥羽水族館

キラもメイも、とても嬉しそうに受け取ってくれたとのこと。でも二頭の間で「お年玉争奪戦」が勃発し……。

「争奪戦の結果で言えば、メイの3戦3勝でした。キラは、メイにケーキを取られてしまう場面もありましたが、飼育員から追加のホタテや貝などをもらい、なんとか食べることができました」

キラは、メイにケーキを取られてしまう場面もありました
キラは、メイにケーキを取られてしまう場面もありました 出典: 映像提供:鳥羽水族館

可愛らしいポーズにも注目して

飼育下でのラッコの寿命は約20年前後だそうです。

飼育担当の南理沙さんは「ラッコが日本(の水族館)に4頭しかいないことを知らない人が沢山いるなかで、このような漫画を通して知ってくれることは嬉しいです」と話し、担当者として意気込みを語ってくれました。

「私達もこれまで以上にラッコの魅力を発信して、多くの人に関心を持ってもらいたい。貴重な動物を飼育しているという責任感を持ち、これからも2頭が元気に長生きできるよう努力していきたいです」

飼育員から追加のホタテや貝などをもらう
飼育員から追加のホタテや貝などをもらう 出典: 映像提供:鳥羽水族館

「見られるうちに、ラッコを見に行きたい!」という方にアドバイスをお願いすると、「1日3回あるお食事タイム」を勧めてくれました。

「お食事タイムでは、ラッコの特性を生かした種目などを見ることができます。可愛らしいポーズにも注目して見てもらえたらなと思います」

また食後には、プールの陸場に上陸して寝ていることが多いそうで、「ラッコの寝姿を見ることができます。毛も乾いており、ふわふわな状態のラッコを見ることができるかもしれません」と言います。

ラッコのかわいさに、前のめりになり過ぎないよう注意も必要です。

「カメラのフラッシュやガラスを叩いたりすると、ラッコがびっくりしてしまうので気をつけてほしいです」

水族館で出会える数少ないラッコたちが健やかに過ごせるように、優しく見守りたいと思います。


※1月7日午前10時更新しました。

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