ネットの話題
お尻を柵に突っ込む羊「安心してください」解説ポップに思わず納得
来場者の不安に答えるアイデアが話題
世界各国の景色や風俗を再現する「野外民族博物館リトルワールド(愛知県犬山市)」。この施設が制作・掲示した、とあるポップが、ツイッター上で話題を集めています。敷地内で飼育されている、羊について解説する内容です。秀逸な呼びかけ文が生まれた経緯を取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
「ヒツジのおしりが、はまってます!」。リトルワールドのポップは、そんな一文から始まります。
添付された画像を見ると、一匹の羊が後ろ向きになり、飼育舎の柵にお尻を突っ込んでいます。その様子について、次のような説明が掲載されているのです。
有名芸人のネタを彷彿(ほうふつ)とさせる「安心してください」など、ユーモアあふれるフレーズで、分かりやすく羊の行動を分析しています。11月下旬、ツイッター上で画像が拡散されると、「全文面白い」など好評を博しました。
このポップが作られた背景事情について、考案者で、リトルワールドの施設担当係長・倉内隆光さんに聞きました。
倉内さんによると、羊の飼育舎は、遊牧民のテント展示区画に隣接。牧畜風景を再現するためで、オス1頭・メス6頭の計7頭が暮らしています。このうち唯一のオス、11歳のカルがポップに写っている個体です。
「羊の寿命は、一般に12~13年ほどと言われています。カルもかなりの高齢で、足が悪く、動きもゆっくりです。1年ほど前の冬から、柵にお尻をはめるしぐさをし始めました。他の個体では見られません」
「野生の環境下では、十分に歩けなくなれば、外敵から狙われてしまいます。恐らく動物の本能として、何かを支えにしてでも立ち上がることで、『まだ元気だよ』と主張しているのではないでしょうか」
カルは日中、定位置まで移動し、柵にお尻や首を突っ込みます。その様子を見た訪問客から「体調が悪いのでは」との問い合わせが、一日に何件も寄せられました。
そこで今年5月、事情を文字だけで説明するポップを作成し、飼育舎の柵に貼り出しました。しかし予想ほど人目に触れず、7月になって、写真付きの版に差し替えました。この取り組みが功を奏し、問い合わせはなくなったといいます。
「あまりふざけすぎないように、なおかつ面白く読んでもらえるよう、文章を考えました」と、倉内さんは笑います。ポップが好評を得たことについては、「お客さんに見て欲しくて作っただけですが……」と驚きを隠せません。
カルは元来やんちゃな性格で、飼育スタッフが近付くと、鼻面や頭で体を押すなどしてきたそうです。
しかし年齢を重ねておとなしくなり、今では人がそばに寄るだけで逃げてしまいます。そのためポップ用の写真は、柵外の離れた場所から撮影されました。
カルやポップに注目が集まり、倉内さんは、こう語っています。
「新型コロナウイルスの影響で、従来実施してきた、羊への餌やり体験ができていません。動物を近くでみてもらうのも、なかなか難しい状況です」
「ただ、実際にリトルワールドに来てもらい、世界でどんな動物が飼われているか知って頂けるだけでも、うれしく思います」
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