連載
#41 「きょうも回してる?」
懐かしのビクター家電、ガチャで再現 「そこまで…」狂気のこだわり
ルーペでしか見えない配線の方法
いま、にわかに脚光を集めるリアル系ミニチュアがあります。私たちの日常にある商品をミニチュアとして再現したもので、メーカーのケンエレファントが意欲的に取り組んでいます。
もともとガチャガチャ市場には昆虫や動物、そして乗り物など精巧に作られたフィギュアはありましたが、ケンエレファントの商品は、たかがガチャガチャと侮るなかれ。今までのガチャガチャの枠を超えた、本格的なリアル系ガチャガチャという新たなジャンルを築いています。
ケンエレファントは商品以外にも、仕事帰りのビジネスマンやOLたちに気軽に寄ってもらえる大人向け商品を集めた売り場「ケンエレスタンド」をJRの秋葉原や新橋、10月には新小岩に設けました。2020年以降、ガチャガチャ売り場の出店ラッシュが続くなか、大人向けの商品が多くに人の目に触れるよう売り場にも力を入れています。
@kenelestaff
— ガチャガチャ評論家おまつ@withnewsでコラム連載中・ブロガー (@gashaponmani) October 8, 2021
今日からオープンしたケンエレファントのケンエレスタンド新小岩店に行ったよ。秋葉原、新橋に続き3店舗目!今の2店舗は改札内でしたが、新店舗は改札を出てすぐ!大人向けガチャガチャがますます身近になっていきますね!面白くなってきました!#ガチャガチャ #ケンエレファント pic.twitter.com/6SzH4sJmgV
ガチャガチャの魅力について「何が出るかが分からないドキドキ感があり、自分が欲しいものが出たときの喜びが魅力ですね」と話してくれたのは、開発担当の伊藤裕さんです。今回は、伊藤さんが担当した「Victor ヒストリカル ミニチュアコレクション」を紹介します。
日本のオーディオ製品の文化を築き上げてきたビクターの名機がガチャガチャに。きっかけはビクターからの声がけでした。
ケンエレファントが「オンキヨー」や「Technics」といったオーディオメーカーとコラボしてミニチュアを販売していたところ、「うちともできないか?」と話があり、商品化につながったそうです。
今回は「ヒストリカル」をテーマとして、70~80年代に誕生した懐かしさを感じさせるオーディオ製品がラインナップされました。
世界初のVHS方式ビデオカセッターの初号機をはじめ、ビデオカメラ、カセットテープ、豊富なカラーバリエーションを揃えた14型カラーテレビなどは、当時を知る40~50才には青春時代を思い出させてくれます。
一方で、当時を知らない20~30代の若者にも、昭和のレトロな雰囲気を楽しめる商品になっています。まさに日本の家電の歴史やデザインを学ぶことができる歴史ガチャです。
商品化は今年の初めから動き出しました。社内の企画チームから上がってきたリクエストを最初に聞いたときは「とんでもない無理難題がきたな。正直、頭を抱えました」と笑いながら振り返る伊藤さん。「ただ、できないという否定から入るのではなく、どうやったらできるのかを考え試行錯誤しました。一番力を入れたのがギミックです」と教えてくれました。
実際に開発する上で、ビクターから実物を借りたほか、当時のカタログや国内外の家電コレクターのサイトなどを参考にしたそうです。ギミックは全種類に施されており、機械の細部まで忠実に、かつリアルにこだわったといいます。
特に見てほしいのが、ビデオカメラ「VideoMovie」です。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てきたビデオカメラですが、当時のデザインを再現するだけでなく、ビデオテープを覗くところは可動式となっており、付属するビデオテープを本体に入れることもできます。
そのほか、本体後ろのバッテリーも取り外しできるなど、通常1商品に1つのギミックがあるだけでも凄いことなのに、このビデオカメラは3つのギミックがついています。ここに伊藤さんの本気度がヒシヒシと伝わってきます。
機能面のギミックだけでもこだわりが見て取れますが、さらに、ルーペで見てようやくわかる細かいスイッチ関係の印刷にも目を見張るものがあります。印刷面では、VHSビデオカセッターの裏面を見てほしいです。「誰もそこまで見ないのでないか」とつっこみたくなるくらい、配線の方法まで掲載するなど、リアルさをどこまでも追求しています。
さらに14型カラーテレビのミニチュアにも見どころが。テレビの画面カバーが外れるようになっており、解説書にはテレビ画面用紙がついています。自分なりのテレビ画面を作れ、まさに大人の遊び心をくすぐる仕上がりです。
伊藤さんは「実物をミニチュア化するため、細かい部分はどうしても再現できない部分もあります。またデフォルメしないとできない部分もあります」という実情がある上で、「そこをどう工夫して、デフォルメしていないようにみせるかが開発の見せ所です」と力を込めます。
今回の商品については、「『よくそこまでする必要があるのか(笑)』と言われますが、率直に良いものができました」。「自分でも携わっておきながら、今でもついつい触ってしまいます」と商品への愛着も語ってくれました。
たかがガチャガチャ、されどガチャガチャ。細部をどれだけ大事にできるかは、作り手の想いにかかっています。まさにビクターの商品は全種類を欲しいと思わせるガチャガチャでした。
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ビクター ヒストリカル ミニチュア コレクションは、(1)テレビ Magazine(C‐14RX)、(2)VHSビデオカセッター(HR‐3300)・VHSテープ、(3)バイノーラルヘッドホン&マイク(HM‐200)・ダミーヘッド、(4)ステレオダブルカセッターBOOM・カセットテープ、(5)ビデオカメラ VideoMovie(GR-C1)・ビデオテープの5種類。1回500円。
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