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遺品の後ろに隠れていた「本の亡霊たち」 故人が残した感動と教訓

「重いコレクションは1階に。腰が死ぬ」

業者によって片付けられ、空っぽになった本棚に残った、「亡霊たち」
業者によって片付けられ、空っぽになった本棚に残った、「亡霊たち」
出典: ミツジ@マサラキッチンさん(@masala_mitsuji)のツイート

目次

家族の死後、遺された膨大な「コレクション」。遺族が、本棚を整理した時に気づいた「本の亡霊」の姿がツイッターで話題です。投稿者に話を聞きました。

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ぼんやりと浮かんでいました

話題になったのは、ミツジ@マサラキッチンさん(@masala_mitsuji)の投稿です。

義父が亡くなり、遺品の整理を始めました。書庫として使われていた部屋で、本棚が作り付けられた壁の「異変」に気づきました。

前日まで積み上げられていた姿そのままに、「本のシルエット」がぼんやりと浮かんでいました。

義父の遺品整理でようやく空っぽになった本棚に残された本の亡霊たち。
ミツジ@マサラキッチンさん(@masala_mitsuji)のツイート

この本棚の不思議な「亡霊」の写真を投稿すると、「神秘的」「怖くて、切ない」などの驚きとともに、「これは亡霊というよりは勲章」「積み上げた知識が故人の人となりを想起させる」といった共感も集め、15万件以上もいいねされました。

故人と本が重ねた年月

投稿したミツジさんに話を聞きました。

「本の亡霊」が発見されたのは、書庫として使われていた部屋です。亡くなった義父は、日本政治や交通関連の歴史本、良寛の歌集やトルストイやドストエフスキーなど、「途方に暮れるほど」大量の古書を所有していました。

業者に依頼し、綺麗に撤去された本。ホッとした気持ちで書庫を見て、驚きました。

「前日までの本の姿がクッキリと残ってる様は『本の亡霊』のように見えました」

なぜこんなことが起きたのでしょうか。実は書庫として使われていた部屋では、義母が「温灸」の施術でも使っていました。壁に作り付けされた本棚は、お灸の煙で燻され、むき出しの本の「影」が奥の壁に残ってしまったようです。

影の濃さが、故人と本が重ねた長い年月を物語っています。

亡くなった義父が集めていた本の数々
亡くなった義父が集めていた本の数々 出典: ミツジ@マサラキッチンさん(@masala_mitsuji)のツイート

最高の手向け

「寂しさ、エモさ、不気味さ、将来の不安、美しさ、片付いた安心感を全て合わせたような複雑な感情で投稿しました」とミツジさん。


寄せられた15万件を超える「いいね」の数が、義父への「手向けになった」ようにも感じられ、こう投稿しました。

本人の意向により葬儀なし、戒名なし、墓なしの義父でした。この棚も家屋に作り付けで家ごと解体予定です。故人の思い通り現世に何も残さず旅立ちました。最後にたくさん反響を頂けたことは義父への最高の手向けになったと思います。本当にありがとうございました
ミツジ@マサラキッチンさん(@masala_mitsuji)のツイート

金色の本棚に並べるとか

投稿を見て、改めて自分のコレクションをどうするか考え込む人や、家族の膨大なコレクションをどうするべきかと途方に暮れる人など、切実な「悩み」も寄せられました。

ミツジさんは「義父は身の回りの整理整頓はできていたので、『まずゴミ掃除から』のような苦労はありませんでしたが、いわゆる『終活』はまったくやっていませんでした。だから、ものの処分はもちろん、各種契約状況や負債の有無などまったく分からなかったのでそこが大変でした」と振り返ります。

そんなミツジさんに、遺品整理の体験から「アドバイス」をしてもらいました。

まず「コレクションは段階的に減らすこと」。

義父の本も、「おそらく希少なものもあるだろうな」「寄贈するなりすれば、喜ばれるところもあるかもしれない」とも考えましたが、遺された家族にその価値は見分けられません。

「生前に、義父が価値について話すこともありませんでした。話していたとしても、興味のない家族に対していくら個別の価値を力説しても、1ミリも響かないでしょう。目録をつくるとか、それだけ金色の本棚に並べるとか、ぱっと見てすぐ分かるようにしてくれなければ、何も分かりません」

仕事を休みながらの遺品整理で、ひとつひとつの価値を調べる時間もありませんでした。

「死後売却や譲渡を望むなら、その作業を『一括で』依頼できる業者なり個人なりに話をつけておいてほしいです」

生きている今日を鮮やかにして、でも……

義父の遺品整理でできたことは、業者のガイドライン通り、「汚れていないものや写真集など」を選ぶことぐらいでした。義父の家にあったものは「98%は捨てた」と言います。

しみじみと、作業を振り返ります。

我々はゴミを買い、ゴミを消費してゴミを出し、ゴミからゴミを作り、ゴミを拠り所にし、ゴミに思いを馳せ、ゴミを惜しみ、ゴミとして捨てている。ゴミの循環で我々の生活は成り立っている。ゴミの人生なのに尊い。ゴミなのに輝いている。それでも最後はゴミになる
ミツジ@マサラキッチンさん(@masala_mitsuji)のツイート

この経験から、「コレクション」を持つ人たちへメッセージを送ります。

「あの世にはひとつもコレクションは持っていけない。減らせ。とにかく減らせ」

「とはいえ、それが心のよりどころだったるするので、まあ、自分が死んでからのことを心配するよりは生きている今日を鮮やかにするほうが大切。でもこれ以上増やさないで」

そして「重いコレクションは1階に。腰が死ぬ」。

本の亡霊たち
本の亡霊たち

最後にのこったもの

本棚は作り付けのものなのでそのまま、最終的には家屋とともに解体されます。

でも、整理に困るものは「コレクション」だけではありませんでした。

「不動産関連の書類はひとまとめに」
「借金が1円でもあるならかならず分かるように」
「遺品整理には50万円くらいかかる。孤独死した時は特殊清掃、さらに火葬や葬儀代もかかるので、最低限の現金は残した方がいい」

その苦労から、アドバイスは多岐にわたります。

そしていま、最後に残っているものが「家族写真」「日記」「愛犬」だといいます。

家族にもあまり心の内をしゃべらないタイプだった義父。人生の手がかりに、日記は回収しました。

写真は家族写真やそれ以外のものも膨大にありました。「とりあえず回収して後日選別します」

そして愛犬。家族がペット可のマンションに住んでいたとしても、「中型犬以上は不可」という制限などがあります。「ウチがまさにそれです」

老犬のため、専門施設に預けることになり、「超かわいそうだし、めっちゃお金がかかる」と嘆きます。

「晩年、ペットを飼うなら自分の残り時間とペットの寿命を考慮し、万が一の時、引き取ってくれるところがあるかどうかを考えて飼ってほしいです」

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