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「西の王将」と「東のサイゼ」コロナ禍でもお客の心をつかんだ秘密
顧客満足度で1位、持ち帰りや圧倒的コスパ
「餃子の王将」が、日本版顧客満足度指数の調査で、2021年度「飲食部門」で初めて1位に輝いた。イタリアンの「サイゼリヤ」も同点1位に。コロナ禍で苦戦が続く外食産業。いったい何が評価されたのか。西の雄「餃子の王将」、東の雄「サイゼリヤ」に聞いた。(朝日新聞・朝倉義統)
調査は公益財団法人日本生産性本部のサービス産業生産性協議会が、2009年度から続けている。
飲食部門はマクドナルドやびっくりドンキー、くら寿司、デニーズ、吉野家など、誰もがよく知る21の企業・ブランドが対象。2回以上の会計をした利用者から、各企業・ブランドに300人以上から100問以上の質問をして回答を得て、点数化したという。質問が100問以上とは、回答するのもかなりハードといえる。
餃子の王将とサイゼリヤは77.6点の同スコアで1位だった。サイゼリヤは10年度調査の1位以来の2度目の獲得だ。
協議会の分析では、21年度はスコアを下げる企業・ブランドが多い中で、餃子の王将は19年度から3年連続でスコアを上昇させた珍しいケースだという。コロナ禍でも「コスパ」と「キャンペーン」の評価が高く評価されたそうだ。
「コーテル(ギョーザ)、リャン(二つ)。エンザーキー(鶏の唐揚げ)、イー(一つ)」
京都市の自宅そばの国道に面した店舗に王将のオーダー用語が響く。
訪れた平日夕方は、ほぼ満席で席待ちの客も順番が10番ほどになっていて大盛況。餃子1人前税別220円。やっぱりリーズナブルこの上ない。
王将フードサービス(本社・京都市)の販売促進広報課・海田詩織さんは、「看板商品の餃子と麺は、自社工場で製造することで最適な価格で提供し、餃子の野菜は青森産のニンニク、皮の小麦は北海道産など国産品を使ってもコスパを実現しています」と、品質にこだわりながらも安価を実現していることを強調した。
調理技術の向上にも力を注いでおり、17年に「王将調理道場」を本社内に開設。全国の店長と副店長を集めて講習をしてきた。これまでに、のべ2万4千人以上が受講したそうだ。
コロナ禍の現在は、道場と各店舗をオンラインで結び、ライブ配信講習で対応しているという。その調理の技は客が見られるように店の大小を問わず全店オープンキッチンになっているという。これは1967年の創業からずっとなのだそうだ。
コロナ禍で休業を余儀なくされた飲食店は多い。しかし「持ち帰り」を創業からずっと続けており、17年からは配達も手がける店舗も導入していたため、この1年間の持ち帰りと配達の売り上げは前年比143%という。
一方の「東の雄」サイゼリヤ(本社・埼玉県・吉川市)。広報課の儀間智さんは、「2度目の1位は大変光栄」としたうえで、「『第3の食卓』として身近に感じてもらえるようになってきたのだと思います」と喜ぶ。
「創業以来、イタリアの豊かな食文化に憧れ、多くの方にそれを体験をしてもらうため、素材の味を生かした味とリーズナブルな価格を目指しています」
約1500店舗全てが直営店で、パスタやオリーブオイル、チーズ、ハム類など重要な食材は、商社を通さずに自社のバイヤーが直接、イタリアで買い付けているそうだ。
そして、福島県白河市にある、ご飯関係の炊飯工場を含め国内に五つの自社工場を持ち、オーストラリアにある約40万坪の自社工場では、ハンバーグなどの肉類やホワイトソースなどを加工し、「コスパの良さ」を実現しているそうだ。
持ち帰りというコロナ前からの取り組みが実を結んだ王将。
商社を通さず自社工場にこだわりお手頃な価格を可能しているサイゼリヤ。
それぞれの看板ともいえる施策がコロナによる外出自粛という想定外の事態でも評価されたと言える。
ちなみに餃子の王将のサブカテゴリーは意外にも「ファストフード店」になっていて、ここでも1位(サイゼリヤは「レストランチェーン」で同じく1位)。
「もしかして餃子はファストフードなの?」
そんな疑問を公益財団法人日本生産性本部のサービス産業生産性協議会の担当者にぶつけてみると……。
サブカテゴリーが始まった10年度と翌11年度の餃子の王将の部門はレストランだったという。12年度に日本標準産業分類に近づけるために分類を整理した際、ラーメンと丼、カレーの店はファストフード店に含めたとのこと。
担当者も「そこまでしかわからないんです……」。
当の王将フードサービスはどう思っているのか。
広報担当者は、「私どもは、70種以上の料理を手作りで調理するフルサービスレストランなので(ファストフード店の)カテゴリーには少々違和感を感じますが、どのジャンルでも1位の獲得は大変ありがたい」と、違和感を感じつつも1位を喜んでいた。
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