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#106 ○○の世論

「安倍路線」引き継ぐべき? 総裁選、自民支持層に起きた異変

世論調査で浮かび上がる「転換」求める気分

安倍晋三前首相を模したゴム製マスク=2021年9月8日、さいたま市大宮区、上田雅文撮影
安倍晋三前首相を模したゴム製マスク=2021年9月8日、さいたま市大宮区、上田雅文撮影 出典: 朝日新聞

目次

「次の首相」を事実上決めることになる自民党総裁選が9月17日にスタートしました。大きな焦点になっているのが、政権復帰してからあわせて9年近く続いた安倍晋三、菅義偉の両政権の「路線」を、各候補者が継承するのかどうか、です。今回は国会議員だけではなく党員票が、かなりものをいいます。候補者は路線継承への世論の見方が気がかりな一方で、安倍氏の党内への影響力も無視できず、難しいバランスを迫られそう――。朝日新聞社が11、12両日に行った全国世論調査(電話)で、そんな様子が浮かびました。
(朝日新聞記者・磯田和昭)

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安倍路線「引き継がない方がよい」58%

昨年9月、菅首相がポスト安倍に名乗りをあげた際、安倍氏の取り組みを「継承し、前に進める」としていました。そこで今回の調査では、次の首相が安倍さんや菅さんの路線を引き継ぐ方がよいかどうかと質問してみました。「引き継がない方がよい」が58%と過半数を占め、「引き継ぐ方がよい」は28%と少ない結果でした。

安倍氏が退陣表明した直後の世論調査では、「引き継ぐ方がよい」45%、「引き継がない方がよい」42%と割れていました。1年たって、安倍路線継承への否定的な見方が増えているのです。

自民支持層に限ってみても、昨年は62%あった「引き継ぐ方がよい」という割合が、今回は44%と大きく減りました。

ボリュームが全体の半分を占め、選挙の際はその行方が注目される無党派層でみると、「引き継ぐ方がよい」はわずか19%。「引き継がない方がよい」が64%とかなり多い状況です。新総裁になってすぐに衆院選(10月21日に任期満了)を迎える総裁選の候補者も、世論を意識するのであれば、安倍路線と距離をとらざるをえないといえそうです。

 

河野氏支持の人では……

今回調査の主眼は告示前であっても、総裁選に立候補を表明したり、検討したりしている政治家のなかでだれが自民党総裁にふさわしいのか、いち早く報じることにありました。

だれが「次の総裁」にふさわしいか、5人の名前を挙げて聞くことにし、調査時点では出馬を検討し、15日に不出馬を表明した石破茂・元幹事長も選択肢に含めました。

結果は、河野太郎・行革担当相が33%でトップ。石破氏16%、岸田文雄・前政調会長14%、高市早苗・元総務相8%、野田聖子・幹事長代行3%と続きました。

安倍路線継承への見方を、各議員への支持模様で見てみると、河野氏が次の総裁にふさわしいと思う人では、「引き継がない方がよい」が59%、岸田氏を推す人でも、54%が「引き継がない方がよい」と答えました。

一方、高市氏を推す人は、「引き継ぐ方がよい」50%、「引き継がない方がよい」40%と、継承を支持する割合の方が高くなっています。高市氏は安倍氏の支援を受けています。

「安倍路線」と一口に言っても、受け取る人によってそのイメージは様々かもしれません。「異次元の金融緩和」などを柱とする経済運営、「敵基地攻撃能力の保有」を視野に入れる安全保障政策、「敵と味方」を峻別する政治姿勢……といろいろあるでしょう。ただ、政治信条が近いとされる高市氏を推す人で、安倍路線継承を支持する人が多いところをみると、路線のイメージは、いわゆる「保守派ファクター」と重なっているところが多いようです。

 

安倍路線を「引き継がない方がよい」と答えた人では、最後まで出馬を探ったものの、結局断念した石破氏を推す割合が21%と、比較的多くを占めていました。党員の中ではこれまでも石破氏の支持はなかなかのものでした。その「石破票」がどう動くのか、総裁選の成り行きで大きな注目点です。

そろそろ「転換」求める気分も 

今回の総裁選は、2012年暮れの政権復帰の後、安倍政権が憲政史上最長となり、それを引き継いだ菅政権が幕を閉じるという大きな節目の中にあります。そこで「第2次安倍政権以降の約9年間の自民党と公明党の政権は、全体としてよかったと思いますか。よくなかったと思いますか」と聞きました。結果は「よかった」が49%、「よくなかった」が40%と大きく割れました。

「よかった」という人でみると、安倍路線を「引き継ぐ方がよい」が46%の一方で、「引き継がない方がよい」も39%と一定割合を占めています。

自公政権を評価しつつも、安倍路線の継承に否定的な人たちにどう浸透するか。総裁選の候補者が少しでも幅広い支持を得ようとすると、それが問われることになります。

 

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