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連載

#23 WEB編集者の教科書

検索と向き合い続けて見えた〝泥臭いSEO論〟本数より大事なこと

インタビュー記事は検索結果上位に表示することはできるのか?

ウェブライダー代表・松尾茂起さん=栃久保誠撮影
ウェブライダー代表・松尾茂起さん=栃久保誠撮影

目次

WEB編集者の教科書

情報発信の場が紙からデジタルに移り、「編集者」が担う仕事も多種多様になっています。新聞社や雑誌社、テレビ局などはウェブ上でも積極的な情報発信を始め、ウェブ発の人気媒体も多数登場しています。また、プラットフォームやEC企業がオリジナルコンテンツを制作する手法も一般的になりました。

広大なネットの海原で、どうやって読者にコンテンツを届ければよいのか? その一つの手段として、WEB編集者が知っておくべきキーワードの1つがSEOです。過去には、SEOが悪用された事例もありましたが、検索エンジンは多くの人に記事を届ける重要なチャネルであることは今も変わりません。

Yahoo!ニュース、編集プロダクション・ノオトとの合同企画『WEB編集者の教科書』プロジェクトの第23回でお話を伺うのは、最新のWEBマーケティングに精通するウェブライダー代表の松尾茂起さん。日々アップデートされ続けるSEOの本質に迫ります。(取材・執筆=波多野友子、編集=鬼頭佳代/ノオト)

ウェブライダー代表・松尾茂起さんの「SEO」の極意
・リアルなニーズに寄り添った濃密な記事を検索エンジンは評価する
・優れたSEO記事は、ユーザーに解決策を提供し、行動変容を促す
・インタビュー記事での上位表示は難しい場合があるが、工夫によっては可能性がある

SEO記事は「検索者の悩みを解決するためのソリューション」

松尾茂起(まつお・しげおき)さん。2010年より、京都に本社を置く株式会社ウェブライダー代表。著作に、『沈黙のWebマーケティング』『沈黙のWebライティング』(MdN)などがある=栃久保誠撮影
松尾茂起(まつお・しげおき)さん。2010年より、京都に本社を置く株式会社ウェブライダー代表。著作に、『沈黙のWebマーケティング』『沈黙のWebライティング』(MdN)などがある=栃久保誠撮影

SEOは「Search Engine Optimization」の略語で、日本語訳では一般に「検索エンジン最適化」と記されます。これは、検索エンジンで特定のページを上位表示させることを目的とした施策を指すのですが、松尾さんは「少し違う視点でSEOを捉えている」と話します。

「私は、SEO=『Search Experience Optimization(検索体験最適化)』と定義しているんです。つまり、検索エンジンそのものに対してではなく、ユーザーが検索をしたときの“体験”を最適化すること。さらに噛み砕くと、SEOは検索者の悩みを解決し、願望を叶えるための『ソリューション』であるべきである、と。この考え方は、Googleが目指す方向性とも合致しています」

検索エンジン業界は現在、Googleの一強状態が続いています。そんなGoogleの検索結果ページには、テキストメインの記事ページに限らず、画像や動画が表示されるケースもあります。

例えば、『転職 女性』と検索したとき、上位に表示されるのは転職ノウハウ記事ではなく、希望の勤務地・職種・エリアなどを入力し、条件に見合った仕事を探すことができる転職サイトです。これは一体、何を意味するのでしょうか。松尾さんはこう説明します。

「まさに、検索結果にはユーザーの悩みに対するソリューションそのものが提示されているんです。こういった現状を鑑みると、従来のように『とりあえずサイトを立ち上げて記事を量産すればいい』という手法は、もはやSEOの施策として成り立たなくなってきたことがわかります」

読者の行動変容を促せるのが最強のコンテンツ

めまぐるしく変化するSEO分野で、10年以上にわたってクライアントと向き合いながらコンテンツを作り続けているウェブライダー。そのメイン事業は受託のコンテンツ制作ではなく、自社で運営するWEBサービスです。

これまでに、クラウド型の文章作成アドバイスツール『文賢』やバナー作成アプリ『バナープラス』など、新サービスをローンチしてきました。これらの売り上げは、全体の約6割を占めるそうです。

「私はずっと『サービスを提供する事業』をしてきました。実際に商売をしてみると、なにかを売るためには、いかに困っている人を助け、悩みを解決に導くことができるかを考え抜く必要があると分かります。ユーザーにとって最適なソリューションを考え続け、提示することこそがSEOの本質なんです」

こうしたビジネスの現場で培った力が、コンテンツ制作の成果にもつながっています。同社が制作したコンテンツ「会社や仕事を辞めたい人必見! 辞めたい理由別の賢い対処法11選」は、「会社 辞めたい」の検索ワードで1位を獲得しています(2021年3月時点)。

現在、こちらの記事は合計50万PVを超えたという
現在、こちらの記事は合計50万PVを超えたという 出典:「会社や仕事を辞めたい人必見!辞めたい理由別の賢い対処法 11選 | Betters(ベターズ))

「文字数は約3万字。正直、記事のクオリティに対する評価は千差万別だと思います(苦笑)。ただ、この記事を書く際に、貫き通したことが一つだけあるんです。それは『会社 辞めたい』と検索して記事にたどり着いた人たちが、なんらかの解決策を見出して、行動変容を起こせる記事にすることでした」

検索をする人の多くは、ただの情報ではなく、自身の悩みごとの解決策を求めています。この部分が「多くのメディアにとって盲点」だと松尾さんは指摘します。

「読者に新たな視点を与えたり、深い思考を促したりするコンテンツの提供は、メディアの役割の一つです。しかし、検索上位にくるような記事を目指すなら、やはりソリューションの提供が大切になってきます。さらにその先で、読者になんらかの行動を促すことができれば、最強のコンテンツになるでしょう」

しかし、ソリューションの提示が重要とは分かる一方で、世の中には「答えの出ないテーマ」があります。明確なソリューションを導き出せない企画の場合、検索エンジンでは評価されないのでしょうか。

「必ずしも、一つのソリューションだけにこだわる必要はありません。選択肢を網羅的に整理する、つまり答えをたくさん置いてあげる。そして、その中から選ぶのはあなたですよ、というスタンスを取れれば十分です。むしろ、人は『説得されて選ばされる』よりも、『自分で納得したものを選びたい』もの。そこに訴えかけるようなコンテンツは、SEOに強い記事といえるでしょう」

インタビュー記事を上位表示するには?

WEB編集者が手がけるのは、コラム記事だけではありません。特定のテーマを持って専門家に話を聞くインタビュー記事を企画・編集するケースも多々あります。

SEO的な視点に則って考えれば、インタビュー記事であっても例外ではなく、読者にとっての悩みに解決策を提案できない限り、検索上位には表示されないことになります。では、こうしたSEO的視点を実際にインタビュー記事に応用することはできるのでしょうか。

「できないことはありませんが、正直に言えば、すごく難しいと思います。というのは、そもそも多くのインタビュイーは記事上で個性を発揮したいのであって、読者の求める答えを提供するSEOの“機能”として扱われることを嫌がるはずですから」

たしかに、コンテンツ企画を「SEOのためのインタビュー」に定めると、まるでインタビュイーその人を商品やサービスのように捉えるように感じられるかもしれません。

=栃久保誠撮影
=栃久保誠撮影

しかし、視点を変えると、インタビュイーの価値を新しく発掘することにもつながることも。松尾さんは「このインタビューを受けることが、自分や会社のマーケティングにつながる」と取材相手に感じてもらえる提案を進めます。

「例えば、仮に『松尾 論理的思考』で上位表示を狙いましょうと提案されたら、自分では気づかなかった価値を見出してもらえたように感じてうれしくなることもありますよね。そしてその記事がもし検索上位に表示されれば、論理的思考に関するセミナーの依頼だって来るかもしれません。専門家の人生をより豊かにするようなSEO×インタビューという手法は、これから新たな市場になっていくかもしれません」

クライアントの望みと「広く届ける」の狭間で

では、企業が運営するオウンドメディアにおいて、SEOは成立するのでしょうか。「クライアント企業が発信したいと望むメッセージ」と「多くの人に届くコンテンツ」は、合致しないことが少なからず発生するのですが……。

「当然、作り手にはクライアントのリクエストを形にする能力が求められます。しかしSEOを意識するなら、クライアントの求める文脈を一旦切り離した上で、企画を立て始めることが重要だと考えます。まずは、読者の悩みごとや欲求に立ち返ることから始めるべきではないでしょうか」

=栃久保誠撮影
=栃久保誠撮影

検索上位に表示されるコンテンツを考える際、具体的に意識すべきはGoogleが判別できる「クエリ(質問文)」です。具体的には、「Knowクエリ(知りたい)」「Goクエリ(行きたい)」「Doクエリ(やってみたい)」、そして「Buyクエリ(買いたい・申し込みたい)」の4つが挙げられます。

例えば、デニムの販売を強化したいと考えるアパレル会社が、『デニム コーデ』のキーワードを選定し、SEOで上位を目指すケースを想定してみましょう。

「この場合、キーワードに関係するのは主に2つのクエリです。具体的には、『このデニムにはこんなコーディネートの仕方があり』(Knowクエリ)、『あなたに似た体型の人が着るとこのようなイメージで』(Doクエリ)。その上で『こんなデニムがあるのなら、このデニムを購入してみたいな』(Buyクエリ)というクエリが生まれることもあるでしょう」

このように適切なクエリの掛け合わせによって記事の方向性を定め、さらにユーザーのニーズを掘り下げて分析。読者に離脱されない記事の長さを割り出し、記事を作っていきます。

検索エンジンはリアルなニーズに寄り添った濃密な記事を評価する

企業がSEOコンテンツを考える上で、気をつけることや知っておくべきことは何なのでしょうか。松尾さんの回答はシンプルかつ明快でした。

「ブランド力があり、信頼性の高い大企業のオリジナルコンテンツは、やはり検索結果の上位に上がりやすいですね。その点で、ブランド力がまだない知名度の低い企業は太刀打ちできないので、別の角度から戦略を練る必要があるでしょう。もっとも効果的なのは、しっかり時間を使って、1記事の濃密度を高めていくことです」

例えば規模が小さな企業なら、小さいながらのフットワークの軽さを生かし、消費者と近い距離でリアルな声を拾い集める。ニーズを的確にキャッチすることで、よりソリューションを満たすような濃厚な記事を作る。こうした地道な信頼の貯金は、有効なSEOにつながっていくはずです。またSNSなどを通して、消費者とコミュニケーションを密にしていくことも重要だと松尾さんは指摘します。

=栃久保誠撮影
=栃久保誠撮影

「大企業の多くはソーシャルメディアガイドラインが厳しく、その点で中小企業にも勝算があります。消費者の口コミはSEO強化においても有効ですから、ユーザー参加型コンテンツを活用し、自社メディアや記事を拡散させる工夫を施すことも一つの手段となります。この際に気をつけるべき点が、口コミの“深さ”です」

ただ「いいサイトだった」ではなく、「このサイト中のこの記事の、この一文が良かった」まで言及されることで、多くの人の参考となる具体性のある口コミが生まれていく。それらの口コミはユニークな情報となり、Googleにインデックスされます。

その結果、自社のコンテンツだけでなく、外部のコンテンツが上位表示し、自社のブランディングの強化につながることもあるといいます。

検索エンジンの進化の先を行くコンテンツを目指す

このように、SEOの専門的な知識を網羅することは難しくても、メディアの仕事に関わるのであれば、最低限の知識は身につけておきたいもの。どうやってSEOを学んでいけばよいのでしょうか。そのコツを教えていただきました。

「常に『なぜ、この記事が上位なのか?』と思考しつづけることです。自分は読みたいと感じなくても、世の中の多くの人がどんな情報を求めているかを知れば、さまざまな応用ができますから」

SEOの向こうにあるものを探す行為は、ニュースに携わる編集者は世論を知ることにもつながり、小説家であれば世の中が追い求めている流れと逆張りをすることで、新たな物語を紡ぐきっかけになるのではないか。松尾さんはさらに言葉を続けます。

=栃久保誠撮影
=栃久保誠撮影

「検索エンジンを使わないという人の中には、満足のいくソリューションが得られず、不満を感じたからという人もいるかもしれません。しかし、最近のGoogleは常にアップデートを続けており、できる限りユーザーの求めるソリューションに根ざしたコンテンツを上位に表示させるようになってきているんです」

ただし、その進化は決して速いものではありません。Googleの後追いをしていては、さらに遅れを取ることになってしまうでしょう。いま、松尾さんが目指すのは「Googleが上位表示をせざるを得ないような良質なコンテンツを作ること」だと主張します。

「『自分こそがGoogleのデータベースを作ってやるんだ』くらいの気概を持って、日々のコンテンツ作りに取り組んでいます。『これはどうだろう?』と、どんどんチャレンジしていれば、評価は勝手に追いついてくる。今後、新しい形のSEOコンテンツに挑むメディアが増えれば、検索結果がさらに豊かになっていくのではないかと予想しています」

=栃久保誠撮影
=栃久保誠撮影

SEOを知ることは、人間の思考や行動を分析すること。すなわち、人間自体を知ることにもつながっていく――。読者のニーズと向き合い、良質なコンテンツとは何かと思考を重ね続ける日々。

いかに正しいSEOの知見を身につけ、実戦をするのか。WEB編集者がより良質なコンテンツ作りを目指すうえで大切なことを改めて突きつけられました。

ウェブライダー代表・松尾茂起さんの「SEO」の極意
・最強のコンテンツは読者に行動変容を促す
・検索上位に食い込むには、明確なソリューションを
・口コミこそがユニークな情報。細部まで濃密に

 

さまざまなジャンルのメディアや会社で活躍する、WEB編集者へのインタビューを通して、現代の“WEB編集者像”やキャリアの可能性を探ってきた連載「WEB編集者の教科書」が書籍になりました。『現場で使える Web編集の教科書』というタイトルで、朝日新聞出版から7月20日に発売されます。Web担当者から業界志望者向けにコンテンツ製作の基本から現場の工程、ビジネスモデルまで網羅した「Web編集の基礎知識」を書き下ろしで追加しました。
『現場で使える Web編集の教科書』(朝日新聞出版)
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