連載
#11 眠れぬ夜のレシピ
眠れぬ夜のDIY、好きな本が「お守り」になる〝リボン付きカバー〟
自分にとって大切なものを大切にする
夜の孤独。大切なものを大切にするための、簡単なDIYをすることで、少しでもあたたかい気持ちで過ごせるかもしれません。あなたに贈る、真夜中のレシピです。手紙を添えて、お届けします。(漫画・コラム、午後)
午後さんのプレイリスト
不安に襲われる夜。午後さんの身近にあった音楽を教えてもらいました。
あなたの夜の隙間も、少しでも埋められたら、幸いです。
こんばんは、午後です。
私には、お気に入りの文庫本をお守り代わりに持ち歩く習慣があります。
この習慣ができたのは、学校が嫌で仕方がなかった学生の頃でした。集団生活が大の苦手で、団体の中でよく浮いてしまっていた私にとって、休み時間は穏やかな拷問でした。
大抵は寝たふりをしてやり過ごすか、図書室に行くか、晴れの日は中庭を散歩するなどしてやり過ごしていたのですが、ある日、好きな短編小説を持って登校すると、いつもより少しだけ楽なことに気がつきました。
10分程度の休み時間には図書室や中庭などへの遠出はできませんでしたが、本はページをめくるだけで私を別世界へと連れ出してくれました。特に、何度も読み返したお気に入りの小説には、その話の登場人物と私だけしか知らない秘密基地のような温かい場所がありました。私が存在していい空間が、ページの中に確かに広がっていました。
本を開けない間も、鞄の中にそんな小世界を持っているのだと思うだけで、少しだけ強くいられました。本を持ち歩くことは、非力な学生だった頃の、私の唯一の護身術だったのです。
よく『自分を大切にしよう』といった言葉を耳にします。しかし、私にはどうすれば自分を大切にしたことになるのかが、いまだによく分かりません。でも、自分にとって大切なものを大切にすることはできます。
私を守ってくれた大切な本が鞄の中で痛まないようにするために、時間をかけてカバーを作り似合うリボンを選ぶ作業は、大切にしたい物を通して、間接的に自分自身を大切にすることになるのではないかと思っています。つまりは、自分を大切にする方法[間接的バージョン]です。
まずは回りくどい方法でもいいから、そういった作業を繰り返して、身の回りを整えて、無意識に行っている自分を蔑ろにする(いわゆるセルフ・ネグレクトに近しい)行為から、自分をどんどん遠ざけていきたいです。
そうしたらいつの日か、苦しかった学生時代の記憶(トラウマ)を癒す術…つまり、自分を大切にする方法[直接的バージョン]も、見つけられるのではないかと思うのです。
今回はいつもと趣向を変えて、私オリジナルのブックカバーの作り方について載せていただきました。好きな本が、より愛おしく感じられます。お時間のある時に、ぜひお試しください。
それでは、今夜も素敵な夢を見られますように。おやすみなさい。
午後
SNS作家。2020年5月からTwitterに漫画を投稿をしている。今年1月に初の書籍「眠れぬ夜はケーキを焼いて」(KADOKAWA)を出版。Twitterアカウントは@_zengo。
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