連載
#10 眠れぬ夜のレシピ
「無数の表現者」に励まされた夜の底 眠れぬ夜のレシピ
この世界には「交流の証」があふれている
不安に襲われる夜は、誰かとつながろうとした「無数の表現者」に思いを馳せると、ほんの少し楽になる気がします。一人の夜を少しでもあたたかい気持ちで過ごせるように。あなたに贈る、真夜中のレシピです。手紙を添えて、お届けします。(漫画・コラム、午後)
午後さんのプレイリスト
不安に襲われる夜。午後さんの身近にあった音楽を教えてもらいました。
あなたの夜の隙間も、少しでも埋められたら、幸いです。
こんばんは、午後です。
徐々に迫り来る熱帯夜の気配に怯えながら、なんとか夜を乗り越える日々を送っています。いかがお過ごしでしょうか。
どんなに足掻いても苦しみから逃れられない夜は、湿度が高い場合があります。薄着に着替えて除湿をするだけで、さっきまであんなに苦しかったのが嘘みたいに、スっと楽になる時があって、何度経験しても毎回呆気に取られてしまいます。これからの季節、是非お試しください。湿度は意外と盲点です。
しかし、どんな手を打っても、夜の底から這い上がれない時も数え切れないほどあります。そんな時、私はある事実を反芻すると、まるで心の鎮痛剤みたいにほんの少し楽になることができます。それは、「誰かが世の中に向かって訴えかけた声が、作品という形をとって世の中に残り続ける」という事実です。
『生きる意味とは?』という聞き飽きた問いがあります。私はこの問いに対して『生きるということに意味はない』というアンサーを持っています。全員、虫や、雑草や、微生物や、雲や、風と同じように、ただ生まれて死ぬだけです。全ては宇宙が誕生した影響で発生したただの現象です。
しかしそんな中でも、顔も知らない誰かに向かって、何かを伝えようとしている人たちがいます。そしてその声を受け入れる人たちも存在します。私はこういった交流の存在が、この世の唯一の救いであるように思うのです。こんな世界でも価値を見い出して、知らない誰かと作品を通して繋がろうとする意志・行為は、私にとっては最も尊いもののように感じます。
そんな作品たち、いわば“交流の証”が時代を超えて数え切れないほど存在するこの世界は、まだまだ捨てたものではないのかもしれないと、少しだけ希望を抱くことができます。そうして私はちょっとだけ安堵して、布団の中で目を閉じることができるのです。
それでは、今夜も素敵な夢を見られますように。おやすみなさい。
午後
SNS作家。2020年5月からTwitterに漫画を投稿をしている。今年1月に初の書籍「眠れぬ夜はケーキを焼いて」(KADOKAWA)を出版。Twitterアカウントは@_zengo。
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