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マンガ

幽霊はかわいそう?固定観念崩す漫画「優しい世界」驚きの結末で描く

作者が大切にした「想像する楽しさ」

雨が降る中、踏切前でたたずむ女性。幽霊の少女は、彼女の隣で過ごすのですが……。待っていたのは、予想の斜め上をいく結末でした。
雨が降る中、踏切前でたたずむ女性。幽霊の少女は、彼女の隣で過ごすのですが……。待っていたのは、予想の斜め上をいく結末でした。 出典: カキさんのツイッター(@kakinuma31)

目次

幽霊は、かわいそうだ……。そんなイメージを覆す漫画が、ツイッター上で人気を博しています。雨の日に紡がれる、今は亡き少女と、ある女性の、ちょっと不思議な交流。その先に待つ予想外のラストが、固定観念を心地よく崩してくれるのです。優しい物語を作り出した漫画家に、思いを聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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雨が降るとやってくる女性

6月4日、『雨の日の二人』と名付けられた、5ページの漫画がツイートされました。

そぼ降る雨の中に浮かぶ、人影が一つ。踏切の前でたたずむ、少女の幽霊です。かつて雨の日に、この場所で亡くなってしまいました。

他に行く当てもない彼女には、ひそかな楽しみがあります。天候が崩れた日の夕方、決まってやってくる女性の観察です。

女性は踏切の前で、傘をさしたまま誰かを待ちます。その様子を見ながら、幽霊もこっそり寄り添い、雨宿りさせてもらうのです。

でも毎回、女性のもとを訪れる人はいません。そして、空から晴れ間がのぞくと、傘をたたんで帰ってしまいます。

待っているのは友達? 家族? なぜ、その人は来ないのだろう……。幽霊は不思議がりつつ、女性について、こんな風に考えるのです。

「きっと 誰からも認識されていない私のように かわいそうな人」
出典:カキさんのツイッター(@kakinuma31)

突然の急展開に困惑する少女

別の日、雨に降られながら、いつものように踏切を訪れる女性。ところが、普段と様子が違います。夜になるまで、ずっと居残り続けたからです。

「今日こそ誰か来るのかもしれない」「声は届かなくても 私が文句を言ってあげる」。心の中でつぶやく幽霊を待っていたのは、予想もしない展開でした。

「ねえ……」「今日は雨が強いし ウチくる?」。何と女性が、隣にいた幽霊に話しかけてきたのです。実はずっと、彼女の存在に気付いていたのでした。

一体、どうして知らない振りを? 幽霊が尋ねると、女性は「見てるのバレると呪われるっていうから……」。思わず、「私はそういう幽霊じゃないですよ」と返します。

雨が嫌いなんでしょ。もし動けるなら、ウチにおいでよ――。温かい言葉を受けて、彼女は思うのでした。

「かわいそうな人なんて 一人もいなかった」

出典:カキさんのツイッター(@kakinuma31)

幽霊の固定観念を壊したい

「すごく温かい、優しい世界」「幸せな結末で良かった」。ツイッター上には、そんな読者のコメントがあふれています。

今回の漫画は、どういった経緯で生まれたのでしょうか? 作者の漫画家・カキさん(@kakinuma31)は、創作のきっかけについて次のように語ります。

「明るい内容の漫画を描きたかったんです。最後に作品への印象が変わる、ショートショートのような話をつくりたいとも思いました」

カキさんはこれまでにも、幽霊が登場する漫画を創ってきました。元来の暗いイメージを壊すストーリーを生み出せたとき、読者に驚いたり楽しんでもらえたりする。そうした点で、好きなモチーフなのだそうです。

だから今回も、「かわいそうな幽霊」という固定観念を覆す、というお話を考えました。

【カキさんの漫画関連記事】「え、なんで成仏するの?」思い込み覆す幽霊漫画の「やさしい結末」

想像しながら読む楽しさ感じて

漫画のアイデアを練り始めた日は、ちょうど雨が降っていたそうです。読み手に、憂鬱な空気を吹き飛ばし、雨の日を少しでも明るく感じてもらいたい。キャラクターや、場面の設定には、そんな思いも反映しました。

そして、物語を注意深く読むと、色々な解釈ができるように描かれていると気付きます。

女性が踏切前でたたずむ理由とは? 少女は、なぜ命を落としたのか? あえて答えを明示しないことで、読者に想像する楽しさを感じてもらえるよう、心がけたといいます。

実際、漫画を読んだ人々からは、「驚きの結末」といった喜びの声が上がりました。カキさんは、一連の反応について、こう受け止めています。

「色々と予想しながら読むと面白いかな、と考えて描いた漫画です。でも、そうした事情はあまり気にしないで、楽しんでもらえたら嬉しく思います」

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