連載
#24 「きょうも回してる?」
口からティッシュのポーチ 攻めすぎずヒット、ガチャガチャ市場
その人の熱意が伝われば、商品化!
キン肉マン、ガンダム、妖怪ウォッチ、鬼滅の刃――。ガチャガチャの歴史の中でも、様々なキャラクターが注目を浴び、キャラクターが牽引しガチャガチャがブームになった歴史があります。
しかし、ここ最近ではガチャガチャの売り場が注目を浴びています。2010年あたりから、ショッピングモールが全国で拡大することで、ドリームカプセルの「ドリームカプセル」、ルルアークの「ガチャガチャの森」、トーシンの「#C-pla(シープラ)」などのベンダー(ガチャガチャの機械を運営する会社)が店舗を広げており、最近ではバンダイナムコアミューズメントの「ガシャポンのデパート」が参入し、全国で売り場が増加傾向となっています。
売り場の運営面でガチャガチャが注目を浴びるようになったのは、今までの歴史のなかではありませんでした。
各メーカーは売り場が増えたことで、それぞれが特色を打ちだし、ベンダーに商談を行っています。商談の仕方もSNSが普及するにつれ、SNSで話題になっているかどうかも発注数を決めるひとつの基準となってきました。
数あるメーカーのなかで、アイピーフォーには20年以上前から販売している「スパイラックス」というガチャガチャの機械があり、機械からカプセルが出てくるコロコロという音から「KOROKORO」ブランドを展開。女性や女の子向けにファンシーなアイテムやキャラクターを中心に、オリジナルの商品も作っています。
アイピーフォーのオリジナル商品は、このコラムでも取り上げた押しボタン系の商品のほか、パズル、ぬいぐるみ、インテリアアイテム、ポーチなど多種多様な商品を出しています。「理想とするアイテムラインナップは、『ごった煮感』です。ベンダーさんが売り場の構成を考える時に、大手メーカーさんの商品はマストですが、それ以外の部分に当社の様々なジャンルの商品を投入していただきたいです」と話すのはベンダー営業部の桂川太一さん。
この『ごった煮感』は、ショッピングモール以外の売り場でも活かされています。
たとえば、外食産業の回転ずしでガチャガチャの機械を見たことがありませんか?そこではアイピーフォーのパズルの商品を見かけることがあります。これは待ち時間を活用してもらう戦略があり、どこの売り場でも商品構成にマッチできるように、アイピーフォーは商品を作っているのです。
最近発売したポーチの商品では、20年11月に発売した「お腹ぽっこり?スッキリ?ポーチ」、21年1月の「どうぶつの口からティッシュ?!ポーチ Vol.2」、3月の「中もリアル!魚介ポーチ」があります。
「お腹ぽっこり?スッキリ?ポーチ」は、雑貨屋で流行っていたことをヒントにしましたが、発注数は少なかったそうです。桂川さんは「攻めすぎちゃうと売れない。この商品はPOPの見せ方でもどうにもなりませんでした」と笑って話してくれ、「確かに縫製力が 高いことは当社の強みです。生地感や生地質、そして印刷技術も商品づくりに反映しています。ただ、発注数が少なくても真面目に力の抜きどころがないほど、一生懸命に作ってしまうんです」と話してくれました。ここがオリジナルの商品の販売が難しいところであり、何が当たるかわからないガチャガチャ業界の面白いところです。あまりに尖りすぎた企画は当たる可能性もありますが、ハズレる可能性もあります。まさに、運試しです。
今回紹介するのは、オリジナルのポーチのなかでも、ヒットした「どうぶつの口からティッシュ?!ポーチ Vol.2」です。動物がティッシュをくわ えている動画をモチーフに商品化し、コロナ禍でも販売が好調だったそうです。ラインナップのなかには、ハムスターがありますが、これは営業担当の加藤卓将さんがハムスター好きとのことから、どうしても入れたいと企画に申し出たことで実現したそうです。その人の熱意が伝われば、商品化になってしまうこと も、他の業界にはないガチャガチャ業界ならではの話です。
アイピーフォーの今後の展開を聞くと、桂川さんは「ガチャガチャ業界は不景気に強いと言われます。商品が内税なため、増税になるたびに売上が上がっている傾向があります。他の業種の景気が悪い中、ガチャガチャの市場が良いというのは、逆にいうと、コロナが収まれば、落ちる可能性があるということでもあります」と見ており、「厳しい状況になっても、バリエーション豊かな商品展開を続け、お客様に欲しいと思ってもらえる商品を作っていきたいですね」と話してくれました。
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「どうぶつの口からティッシュ?!ポーチ Vol.2」は1回300円で、スコティッシュフォールド、ヒョウ、パグ、ミミズク、ハムスターの全5種類。
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