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連載

#72 コミチ漫画コラボ

「専業主婦は、いつも家にいるんだから…」我慢の限界が思わぬ結果に

「家の仕事」を完全に休めるのは、いつ――?

家事や雑務に追われて休みなく働いていた主婦が、急に眠りから覚めなくなって――
家事や雑務に追われて休みなく働いていた主婦が、急に眠りから覚めなくなって―― 出典: emixさんのマンガ「ママの冬眠」

目次

子どもと夫のため、食事や洗濯・掃除といった日々の家事や雑務に追われていた専業主婦が、急に眠りから覚めなくなって――。SNSでマンガを発信しているemixさんは、家の仕事で多忙だった母が〝冬眠〟するフィクションの作品を描きました。「家族の抱える大変さをお互いに理解しないと、いつか軋轢が生まれてしまう。それに気づいてもらうきっかけになったら」と振り返ります。

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「お前はいつも家にいるんだから」

作品は「ママの冬眠」。マンガ投稿サービスを運営する「コミチ」とwithnewsがコラボし、「#わたしの長いお休み」をテーマに作品を募集したところ、都内在住のemixさん(45)の作品「ママの冬眠」が大賞に選ばれました。
主人公は39歳の誕生日を迎えた専業主婦の冬子。思春期の娘は反抗期まっただ中で、下の息子もまだまだ手がかかります。コミュニケーションがとりづらい娘のことを夫に相談しても、「お前はいつも家にいるんだから」と言われてしまいます。その翌朝、冬子が眠りから覚めなくなって……。
――なぜマンガで「冬眠」というテーマを選んだのでしょうか?

私は一人息子と夫の3人家族ですが、数年前のお正月にふと「煮炊きしないように『おせち』があるというけれど、洗濯だって片付けだってしなければいけない。じゃあ母親が『お母さんの仕事』を完全に休めるのっていつなんだろう?」って考えたんです。
家のことをすべて任されていたお母さんは――。
家のことをすべて任されていたお母さんは――。 出典:emixさん「ママの冬眠」
完全に起きない状態にならないと「お休み」にはならないし、ほかの家族に家事の大変さや煩雑さが分かってもらえないと思って、冬眠というテーマを選びました。
ママは眠り込んでしまって……
ママは眠り込んでしまって…… 出典:emixさん「ママの冬眠」

根強く残るステレオタイプな家族観

――これまで母に任せきりだった家事を、残された夫や子ども2人がやろうと思っても、なかなかうまくいかない姿が描かれます。

母の日に「ありがとう」くらいは言うかもしれませんが、実際にやってみないと大変さって分かりませんよね。
そしてお母さんが一生懸命やっていることが「当たり前」になってしまうと、それにいつも感謝を示して行動するのは難しいです。

食事、ゴミ捨て、そうじ、洗濯、集金……夫と子どもで「家の仕事」を代わろうとしましたが――
食事、ゴミ捨て、そうじ、洗濯、集金……夫と子どもで「家の仕事」を代わろうとしましたが―― 出典:emixさん「ママの冬眠」

幸い自分の夫はマンガに登場する夫とは正反対ですが、ラジオや記事の人生相談を聞いたり読んだりしても、まだまだステレオタイプな家族観は根強く残っていると感じてキャラクターに設定しました。

好きで結婚したはずなのに

――作品では、家族みんなが母の存在の大きさに気づき、1年かかってようやく家事をこなしていけるようになります。冬子は「私がいなくても大丈夫ね」と起きようとしませんが、結婚当初を振り返る夫が「大切にするって誓ったのにごめん」「目覚めてくれ」と呼びかけることで、ついに目を覚まします。

自分がいなくても家族の生活が回るなら、自分がいなくてもいいのかな?と思ってしまいますよね。「しんどい現実の生活」に戻っていきたいと思わせるものは何だろう?と考えました。
1年経っても目覚めない冬子に、夫は……
1年経っても目覚めない冬子に、夫は…… 出典:emixさん「ママの冬眠」

最初は夫と妻がお互いに好き合って結婚したはず。
けれど、仕事や家事に忙殺されて、相手のいやなところしか見えなくなったり、なぜ家族のために頑張っているのか分からなくなったり――。

目の前のことを必死でやって生活しているから、最初に思っていたことって忘れちゃうんですよね。当時の気持ちを思い出せば、目が覚めるんじゃないかと考えました。

家事だって仕事なのに……

――マンガでは、「家の仕事」を理解しない夫に対して、冬子が「どうせ家の中のことはママゴトだと思ってるんでしょ」と感じているモノローグが印象的でした。

そういう考えの人ってまだいると思うんです。
子どもの学校のPTAでも、あるお母さんが自虐的に「自分は働いていないから……」と言って役員を引き受けようとしていました。

夫が「ママゴト」と思っているだろう家事も、実は――
夫が「ママゴト」と思っているだろう家事も、実は―― 出典:emixさん「ママの冬眠」

外で働いていないからって暇だとは限りませんし、家事だって仕事ですよね。もちろん役員をやりたいならやればいいと思いますが、誰かのことを引き合いに出さなくてもいいのにと感じました。

「家事や子育てを当たり前にやるのが母親の無償の愛」なんて言われてしまうと、それは違うんじゃないかと思います。

人生折り返し「やりたいことをやろう」

――emixさんの家庭ではどうしていますか?

子どもが中学生になったこともあって、子どものことだけではなく自分のやりたいことをしっかりやろうと考えて、家事を片付けたあと子どもが帰ってくるまではずっとマンガを描いています。

いい塩梅で家事の手を抜いているのもありますが、集中して家事に取り組む時間を決めています。

中学生の息子の部屋は自分でそうじしてもらいますし、洗濯物もたたまず渡しています。息子だっていつか一人暮らししたら自分でやらなきゃいけないことです。
冬眠したママのことを家で看ながら、夫と子どもは家のことをやり始めますが――
冬眠したママのことを家で看ながら、夫と子どもは家のことをやり始めますが―― 出典:emixさん「ママの冬眠」
――確かに、家事をするのに性別は関係ないですよね。マンガを集中して描くようになったとのことですが、emixさんはいつからマンガを描いていたのでしょうか?

小さな頃から絵を描くのが好きで、短大の頃はマンガの投稿もしていました。同人誌即売会に向けて描いていたこともありましたが、アニメ会社に就職したり、子どもが生まれて仕事を辞めたりして、描けない期間もありました。

でも、40歳になった時に「人生折り返しだな」と気づきました。これまで学校の集まりなど頼まれたことは全てやってきましたが、「自分のやりたいことを後悔のないようにやろう」と思うようになりました。

コロナの感染拡大で、それまで勤めていた週3回のアルバイトを辞めて、自宅でマンガを描いています。収入が減ってしまう不安はありましたが、何とかやりくりすれば問題ないかな、と考えています。

「それぞれが成長した日常」に戻る

――コロナ禍でありがたみを改めて感じた人も多いように、今回のマンガでは、日常の「当たり前の尊さ」が描かれているようにも感じました。

当たり前にやっていることが、実はすごい大変なんですよね。それを分かったうえで、アップグレードした日常にまた戻るということが大切なのかなと思います。
あのお休みは、神様からのプレゼントだったのかも?と考える冬子
あのお休みは、神様からのプレゼントだったのかも?と考える冬子 出典:emixさん「ママの冬眠」
だからマンガでは、みんなが家事の大変さと「母の存在の大きさ」を理解して、それぞれ成長した日常に戻るラストを描きました。目を覚ました冬子が以前と同じように家事に追われる生活を送っていたら、全くハッピーエンドではありません。

「すれ違い」を向き合い直すチャンスに

――家族が互いに向き合うことの大切さを感じました。

今回は専業主婦の家庭を舞台にしましたが、共働きの家族でも人間関係の問題ってあると思うんです。
お互いの立場や環境が違えば、分かり合えないないこともあるし、軋轢も生まれます。

ちゃんと話し合ったり、相手の考えていることを理解する努力をしたり、そういう気持ちがないと、どんな家族であってもすれ違ってしまう。

「相手が分かってくれない」と言い合うのではなく、「もしかしたら相手のことを理解できていないのかも?」と考えてみて、すれ違いを相手と向き合い直すチャンスだと思えれば、きっといい方向にいくんでしょうね。
それぞれが成長した「日常」では、家族がさまざまな家事を分担するように――
それぞれが成長した「日常」では、家族がさまざまな家事を分担するように―― 出典:emixさん「ママの冬眠」
現状を変えることはなかなか難しいですが、マンガを読んでキャラクターの目線を通して体感することで、「気づくきっかけ」になればうれしいです。

読んだあとにちょっと気持ちが変わったり、何かを考えるきっかけになったり……そんなマンガをこれからも描いていきたいなと思っています。
 
emixさんの「コミチ」のページはこちら→https://comici.jp/users/emix
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