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連載

#21 「きょうも回してる?」

誰が買う?「お湯張りボタン」再現したガチャガチャ 人間の欲求刺激

「誰が押すの…」それが醍醐味

音が出る系ボタンの数々
音が出る系ボタンの数々

目次

「やっちゃダメ」と言われるとどうしてもやりたくなる。そんな気持ちを解消してくれる「音が出るボタン系ガチャガチャ」が活況です。玄関のチャイムをモチーフにした商品を発売した会社は、数年前までまったく別事業に携わっていた会社でした。次なるボタンは――。ガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が取材しました。
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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

元は版権管理会社「0からのスタート」

音が出るボタン系のガチャガチャが昨年から注目を浴びています。

ボタン系のガチャガチャが話題になったのが、昨年2月に発売されたトイズキャビン(このコラムでも取り上げました)の、「バス降車ボタンライトマスコット」でした。その次にボタン系の商品を販売したのが、カプセルトイメーカーのアイピーフォーです。

ファンシーなアイテムはじめ、女性向け、女の子向け商品を展開するアイピーフォーは、毎月15アイテムを販売し、そのうちオリジナルは約半分を占めています。
アイピーフォーはもともと、版権管理の会社としてライセンシー事業で2002年に設立しましたが、2014年に親会社のシステムサービスから、カプセルトイ事業を譲渡されました。
当時はアイピーフォーでガチャガチャを作るメンバーは4人だけ。「ガチャガチャに詳しい人間がおらず『何が売れているか』『何を作れば売れるのか』が全くわかりませんでした。まさにゼロからのスタートでした」と話してくれたのが、ベンダー営業部の桂川太一さん。

「スライム」からの快進撃

桂川さんはベンダー(機械を設置する業者)さんや関係者に顧客のニーズを聞き、試行錯誤しながら売れる根拠もないまま、ファンシーなアイテムやキャラクター商品を作り続けますが、なかなかヒット商品が出ませんでした。そこで、「ガチャガチャと言えば、こてこての雑玩具。たとえばスライムなんかいいんじゃない?安全基準を満たせば売り場に置いてあげるよ」というベンダーさんのアイデアから、安全基準を満たしたスライムを商品化します。これが大ヒット。50万個以上売れはじめたことを機に、アイピーフォーの商品全体の認知度を高めました。

現在は、商品実績と経験を積み重ね、売り場の1~2割程度はアイピーフォーの商品になっています。知名度も高まってきたアイピーフォーの商品のうち、昨年一番売れたのが昨年10月に発売した「ダッシュ無用!ピンポン」です。

「ダッシュ無用!ピンポン」シリーズ
「ダッシュ無用!ピンポン」シリーズ

在宅勤務の新人営業に「企画考えて」

「ダッシュ無用!ピンポン」商品化のきっかけは、昨年入社したばかりの営業担当の加藤卓将さんのアイデアでした。
昨年はコロナ禍で加藤さんは営業できず、在宅勤務が多かったそうです。それを見かねた上司の桂川さんは、「せっかくだからこの機会をいかして、毎日2~3個の企画を考えてみて」と加藤さんに伝えたそうです。そこから生まれたのが「ダッシュ無用!ピンポン」。

企画に立てる上で、桂川さんは「『営業だから』『企画だから』という線引きはせずに、とにかくおもしろいものを出していきたい」と話し、「若い世代のアイデアはお客様の感覚に近いから、若い人の感性は大事しています」と教えてくれました。

また、営業が企画から参加することで、商品に愛着をもって販売することができる理由もあるそうです。

商品を押してもらうことで露出↑

コロナ禍での在宅勤務中に加藤さんは、「ガチャガチャのバスボタンのように、身近な商品で押しまくりたいけど、なかなか押せないもの」と考えた時に、玄関のチャイムが浮かんだそうです。営業と企画も加藤さんの企画に賛同し商品化となりました。

そんな思いが詰まった商品でしたが、、フタを開けてみると、同時期に発売された他社の類似商品に対し受注数で敗北。

悔しさを感じた桂川さんは「お客様にお買い上げいただく前に、商品がどういうものかわかるように、実際の商品をガチャガチャの機械に貼って、お客様に押してもらう」という、露出度を高める戦略を立てます。

4月に発売された「我が家のお湯張りボタン」の音声

人間の欲求を再現しヒット

徐々にこの戦略が功を奏し、現場の反応が良くなってきます。第1弾と、今年2月に発売された「ダッシュ無用!ピンポン ver.2」も受注数が多く、結果的に約50万個のヒット商品になりました。まさに、「押しちゃダメと言われてしまうと、つい押したくなる」という人間の欲求を再現した商品だと言えます。

桂川さんは「昔、大ヒットしたスライムと比べるとコスト面では大変でしたが、メーカーのイメージを考えると、目に見えない部分で貢献してくれた商品になりました」と話してくれました。

「見慣れているものが手のひらにある楽しさ」

この、音が出るボタン系のヒットの流れに乗った最新作が、今回紹介する4月に発売された「我が家のお湯張りボタン」。確かに何度も押せないけど、押したくなる商品です。
ただ、誰が買うのか不思議に思うのがガチャガチャの醍醐味。音声は「お風呂がたまりました」と「お風呂で呼んでいます」の2種類あり、リアルに音を表現しました。背面にマグネットがついているので壁にも貼り付け可能です。

この魅力について、加藤さんは「身近にあるものがミニチュアサイズでなり、なおかつ本物と同じように音が出ます。見慣れているものが手のひらサイズにあると楽しいのかな」と話してくれ、取材を通じて、営業と企画がともにアイデアを出しあえるほど、アイピーフォーには風通しの良い職場環境があるんだなと感じました。

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我が家のお湯張りボタンは1回300円で、長方形(白)、長方形(ベージュ)、正方形(白)、正方形(ベージュ)の全4種類。

「我が家のお湯張りボタン」。手のひらサイズだ
「我が家のお湯張りボタン」。手のひらサイズだ
ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

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ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。
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