お金と仕事
新人教育、やってはいけない「残念な研修」リモート時代の落とし穴
私の会社は世界33カ国400人のメンバーがおり、フルリモートという形で勤務しています。
リモートワークは柔軟な働き方ができ、場所や時間に拘束されないという魅力がありますが、「相手の顔が見えていないため、心理面や理解度などを把握するのが難しい」という課題は創業当初からあり、長い時間をかけて向き合っています。今回は取り組みの中で分かってきた、オンラインでの教育方法をお伝えします。
新人を組織に定着させ、現場での戦力化までもって行くことを『オンボーディング』と呼びます。リモートの環境ではまず、「全てのコミュニケーションが完全に足並みが一致することが難しい」「人の育成には段階を踏んでいくことが大切である」という二つを念頭におきましょう。
組織に入ってすぐ新メンバーのオンボーディングが順調に行くことは「まず無い」と言っていいでしょう。だからこそ、フェーズを区切って段階的に目標設定をすることが大切です。それぞれのフェーズで何を行う必要があるのか、どのような対応が適しているか内容を作り込んでいく必要があります。
残念ながら、自社でも入ったばかりの方が短期間で辞めてしまうことがあったのですが、当時はフェーズを区切らない教育をしていました。最初からかなりレベルの高い目標を設定していたため、入社したばかりの人にとっては大きな負担になっていました。
また、「これができるようになって当然」というメッセージを与える形で研修を行ってしまうことにも注意が必要です。「この企業でこのまま自分はやっていけないかもしれない」と不安になり、誰にも相談できないという状況が生まれがちになります。
これは決して「高い目標を与えるな」と言うことではなく、「目標の見せ方」にポイントがあります。
「最終的にはここまでできるようになってほしい」「マネージャーにはこういうことまでお願いしたい」という目標は伝えてもいいのですが、その代わり「1カ月間でここまで達成してほしい」「次の1カ月はここまで」というように段階を踏み、直近の目標をセットで伝えることが大切です。これにより背伸びした目標ではなく、段階を踏んでチャレンジすることができます。
ニットでは入社から2カ月で「新メンバーが独力で業務を獲得し、自律的に働ける」という状態を「オンボーディングに乗っている」と定義しています。その上でフェーズごとに区切って新メンバーが業務の軌道に乗るようにサポートしています。
また、新人と言っても新卒と中途入社の前提とするスキルや管理職側の思いは異なります。
さらに大切なことは「育成担当者を誰にするか」です。そしてこれは、新卒・中途で好ましいタイプが異なります。
フェーズに応じて会社の流儀と仕事の進め方を伝えながら、オンボーディングを目指すこと目標にしましょう。
次は、日々のやりとりでどのようなことを意識したら良いかです。フェーズごとの成長にはコミュニケーションの積み重ねが欠かせません。管理職が持つべき四つのモットーをご紹介します。
企業としては「早く新人に成長してもらい、事業へ貢献してほしい」と思いがちです。しかし、自分の新人時代を思い出してみましょう。入社してからは「何がわからないかもわからない」という状態で、「自分が成長できているのか」という不安な気持ちはありませんでしたか。
新人育成は、一つずつコツコツと知識と経験を積み上げていくことが大切です。事業をオンライン化し、働き方をリモートワークにすることで「何か特別な施策があり、それを行うことによって組織運営もうまくいくのでは」と思いがちですが、それも誤りです。
リモートワーク導入後であっても「施策を根付かせるためには繰り返し試行錯誤していく必要がある」「マネジャーとしてメンバーを注視する」という組織に必要な根本部分はオフィスで出社していた時のコミュニケーション方法と変わりません。
この春は特にリモートワークで新人教育という新たなチャレンジをする企業も多いと思います。今回の内容がみなさまにとって一歩ずつ進んでいくヒントになれば幸いです。
小澤美佳 株式会社knit(ニット)広報。2008年に株式会社リクルート入社。中途採用領域の営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で、キャリア・就職支援の講演を実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。2018年 中米ベリーズへ移住し、現地で観光業の会社を起業。2019年にニットに入社し、カスタマーサクセス→人事→営業を経て、現在、広報に従事する傍ら、オンラインでのセミナー講師やイベントのファシリテーターを実施。副業で嘉悦大学の大学講師。キャリアや就職などに関する授業を担当。Twitterアカウントは2.2万のフォロワーがいる。
Twitterアカウント:https://twitter.com/mica823
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