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落語とラジオの融合「Clubhouse寄席」偶然の出会いから広がる可能性

2月27日までシーズン2が開かれているClubhouse寄席
2月27日までシーズン2が開かれているClubhouse寄席

目次

1月末から日本で急速に広まった招待制音声SNS「Clubhouse」で、新しい形の寄席「Clubhouse寄席」が新たな上方落語ファンを増やしています。1月末に一早く始め、3月には大阪・東京でリアルイベントも開催予定、ファンの一人がClubhouse寄席のLINE公式アカウントを開設するなど、Clubhouse外に活動の幅を広げています。シーズン2は2月27日に千秋楽を迎え、今後はClubhouseを利用しながら、「紅楽葉寄席」(くらはよせ)として各地でリアルイベントをする予定です。Clubhouse寄席の場を回す、大阪のFM局「FM802」のDJ・樋口大喜さん(29)と、初回からの出演者の一人、上方若手落語家の桂九ノ一さん(25)に寄席ができた経緯やClubhouseだからこその利点、これからの展望などを公開取材の形で聞きました。

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樋口大喜さん、桂九ノ一さんへの取材はClubhouse上で行われた
樋口大喜さん、桂九ノ一さんへの取材はClubhouse上で行われた

トータス松本さんの一言も奇跡のはじまり

――1月末からClubhouse寄席を毎日続け、2月7日にシーズン1の千秋楽を迎えました。

樋口:Clubhouse寄席、実は事故みたいな間違いから始まりました。ポップアップをタップしたら、落語家の桂紋四郎さんが立ち上げたルームに入ってしまい2人だけに……。そこから「クラブハウスで寄席できるんじゃないか」という話になって、そこからこのスピード感です。

Clubhouseが出てきたから、寄席をやろうって表面的には安直に見えますが、安直ではない部分もあるんです。実は私自身が趣味の延長で落語をやったことがありまして。まだClubhouseが始まる前、縁あってウルフルズのトータス松本さんとお話させてもらったときに「落語好きやろ、落語やってみたらええんちゃうか」と言われたことがあるんです。

実際に桂あおばさんを紹介してもらって、1月19日に大阪市の天満天神繁昌亭で「電波寄席」という企画で落語をやりました。そこにゲストで出たのが桂春蝶師匠で、その弟子が紋四郎さん。挑戦したらおもしろいんちゃうかっていうことに一歩踏み出したことが今につながった。こうして集まれたのは偶然だけど奇跡だと思います。

九ノ一:Clubhouseが日本で流行りだした頃に、みなさんが行く場所、聞く部屋を探していた時間が2、3日あったと思うんですよ。その中の一つがこの寄席小屋。行く場所を探していた人たちが僕たちのところに寄り道してくれましたね。

サーバー落ち、「落語リレー」が強い絆に

――樋口さん、九ノ一さん、ほかに桂紋四郎さん、笑福亭笑利さん、桂雀太さんがシーズン1の初期メンバー。ずっとつながっていたような強い絆ですが、元々つながっていたのでしょうか。

樋口:私は誰ひとりつながっていなかったですね。1回目のクラブハウス寄席は、大阪市此花区の此花千鳥亭というところで、リアルとオンラインのハイブリッドでやったんですよ。

そこで、紋四郎さん、笑利さん、雀太さんの落語を拝見、1メートル離れてディスタンス挨拶しました。

始めて5日目の夜にサーバーが落ちまくることがあり、噺の下げ(落ち)までいかないこともあって。残っている人が落語をつなぐ「落語リレー」になったんです。このトラブルが、聞いている方と演者の絆をつくりましたね。

声だけの媒体、新たに学んだこと

――Clubhouseは声だけで伝え、アーカイブも残らないですが、落語をしてみてどうでしたか。

九ノ一:僕ら落語家はコロナ禍でしゃべる機会が少なくなってしまい、毎日、ネタを変えてしゃべらさせていただく機会はありがたいです。お客さんは対面ではいてないけれど、いてる感じして、すごい楽しくて。

声だけの媒体で、台詞をちょっと付け足すなど、やりながら考えていました。演者それぞれの考えがあると思いますが、登場人物の誰が話しているのかはっきりと描いてわかりやすく、感情表現をより豊かにという部分を気をつけました。

Clubhouse寄席で学んだことは、普段の寄席でも、めちゃくちゃ生きています。大切な、落語のテクニックを学ばせてもらっています。「なるだけわかりやすく、親切に」というのは特に勉強になりました。

――無料で落語するということに抵抗感はありませんでしたか。

九ノ一:紋四郎兄さんが始めたYouTubeの企画「テレワーク落語」があったので、抵抗感はなかったです。これは紋四郎兄さんの功績だと思います。今、「落語を知ってもらおう」、「初めて聞いていいと思ってくれた人に、落ち着いたときに寄席にきてもらおう」という考え方をできるようになりました。

Clubhouseの一番ええとこは、聞いたことない方がたくさん聞いてくれたことなんですよね。私の舞台を今まで聞いてくださった方は落語ファンの方やったり、昔から落語好きだった方やったりとかだったので、それ以外の方に広がったのは大きかったですね。

落語とラジオの融合、それがClubhouse寄席

――樋口さんは普段、FM802のDJをされています。進行役をする際に生きたところはありますか。

落語家さんのアイディアやスピード感はすごいので、私がClubhouse寄席に入らなくても、いずれできていたと思います。FMラジオは音楽が主役、Clubhouse寄席は落語が主役。ラジオでも落語会でもない、いわば落語とラジオを合わせた新しいコンテンツがClubhouse寄席だと思っています。

それを踏まえた上で、ラジオDJとしてできたことはオープニングトークだったり、落語家さんと話す進行の部分だったりは普段のラジオ番組で培ってきたことなんじゃないかなと思っています。

――そんな樋口さんが一度いない日があったそうですが……。

九ノ一:大変だったんですから! まず噺家は一人でしゃべるもんですから、人とコミュニケーション取りづらい人がたくさんいてます。一人でしゃべる芸をしているもんですから。場をつくるのことができかねる生き物です。

その日は、笑利さんが進行役を名乗り出たんでございますけど、案の定ぐだぐだ……。樋口さんの名前を呼び続けるという。その時に、樋口さんのおかげなんだなと感じました。(笑)

「会いたい」からリアルイベントに

――3月11日に天満天神繁昌亭(大阪市北区)、3月17日にお江戸両国亭(東京都墨田区)でリアルイベントがあります。

樋口:3回目だったか、エンディングで舞い上がってしまいまして……。コロナ禍で会えなくて、いつかみなさんと顔を合わせて会いたいと思いまして、みんなで集まろうよって言うところで、生クラブハウス寄席を提案しました。言葉も面白くって、どっちがどっちかわからないですよね。

九ノ一:僕らもそこまで頭がまわっていなかったんですけど、「できるわ」ってなってその後はさくさく動いていきました。リアルに反応いただけたからこそ、ぼくらも一歩踏み出せた。反応があまりいただけなかったら、さくさく動けてなかったと思います。上方落語界で最もフットワークが軽い、紋四郎兄さんがこの中にいたのも大きいですね。

リスナーが公式LINE作成、みんなでつくる寄席

――聞いていた方がClubhouse寄席公式LINEを作成し、とてもいい発展の仕方をしていますね。

九ノ一:途中でトークに上がってきてくれて、つくっていただき感謝しています。うれしくて逐一チェックして、自分のプロフィールを何度開いたことか。

樋口:Clubhouse寄席は聞いてくださる方と一緒につくっています。みんなで新しいこと面白いことをやっていこうと。意見をいただけるのは、ラジオ的なカルチャーだと思いますね。ラジオのいいところ、寄席のいいところが合わさったのがよいところですね。

ゴールは「生の寄席へ、ラジオ番組へ」

――シーズン2では江戸の落語家も参加しています。これからの展望は。

九ノ一:毎日、落語会をやる中で、Clubhouse寄席を聞いてきましたという人に会うのが夢ですよね。「Clubhouse寄席で落語知りました」っていう人と10年後、20年後でもいいんですけど出会いたいと思うのはあります。

僕らの落語を聞くのがゴールじゃなくて、「あす新宿末廣亭に行ってみよう」と落語を聞いてもらえたらいいんですよね。そういった動きになって、僕らとまた出会えたらなと思います。

樋口:Clubhouseでは1千人、2千人に聴いてもらうなど、数を目標にすることはしていません。SNSはフォロワー数で評価される時代でしたが、そうじゃない時代になってきているんじゃないかなと思っていて、ダイレクトにその人の心に響いたかどうかが大切じゃないかなって思っています。

寄席に行ってもらう、生の会場で落語を体感してもらうというのが目標です。落語の門戸広げたいという思いがあります。Clubhouseでちょっと面白そうだなっていう入り口で入ってきて、面白いと思ってもらう。そこから落語を好きになってもらい、好きでい続けてもらうことがゴールです。その輪が広がったらなと思います。

また、私もラジオDJをしているので、「司会の人誰やろ」って思って、自分の番組を聞いてもらうのも意識しています。Clubhouse寄席で知って、メッセージを送ってくれる方がいてうれしかったですね。

〈Clubhouse寄席〉
上方若手落語家の桂紋四郎さん、桂九ノ一さん、笑福亭笑利さん、桂雀太さんと「FM802」のDJ・樋口大喜さんが1月末からClubhouse上で始めた「寄席」。樋口さんを進行役に、それぞれの自宅から落語を届けている。シーズン1は2回目の1月31日から2月7日まで夜22時に連日配信。10日から始まったシーズン2は水曜日と土曜日の22時~23時半の配信で、2月27日に千秋楽を迎える。

シーズン2では桂竹千代さんや立川かしめさんら江戸の落語家も出演している
シーズン2では桂竹千代さんや立川かしめさんら江戸の落語家も出演している

※今回は記事化が前提であることを樋口さん、九ノ一さんも承諾した上で、Clubhouse上で取材を行いました。

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