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連載

#2 SDGsイノベーション部

寄付したいけどできない…悩み 簡単に「渡す」仕組みから考えるSDGs

買った瞬間に「1缶10円」配送料を支援できるのです。

筆者の提案から生まれた非常食のパン(左)と水
筆者の提案から生まれた非常食のパン(左)と水 出典: 筆者提供

目次

多くの企業で浸透してきている「SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)」。社会課題はたくさんありますが、「社会課題同士はうまく掛け合わせることによって相殺できる」そうです。数々のSDGs関連プロジェクトに関わる一般社団法人こども食堂支援機構の代表理事・秋山宏次郎さんが、自身の関わったソーシャルビジネスの一例を紹介します。

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「余って困っている」と「足りなくて困っている」

私は通信会社のサラリーマン時代に、防災関連のITシステムに少しだけ関わりました。防災について全くの門外漢だったのですが、仕事で関わる中で気付いた社会課題がありました。「まだ食べられるのに大量の非常食が捨てられている」ことです。

大量に捨てているのは企業でした。地域によって状況は異なりますが、自治体によっては災害に備えて全従業員の食料などを備蓄することを条例で企業に求めています。例えば東京都では、3日分の水や食料の備蓄が努力義務となっています。

しかし、非常食と言っても永遠に食べられるわけではありません。多くの企業は賞味期限が近くなると購入した新しい非常食と交換しています。社員に配る企業も多いのですが、産業廃棄物として捨ててしまう企業も少なくないのです。企業が廃棄するにはお金がかかりますから、まだ食べられる食品を捨てるためにわざわざお金を払っていることになります。

その一方で、世の中には食料が必要な人もいます。私が応援している”こども食堂”も、多くの場合運営者が身銭を切って食料を調達しています。最近の非常食には普段の食事にしても十分においしいものも増えているので、少し高品質な非常食を寄付するととても喜んでもらえることがあります。コロナの影響でテイクアウト形式で密を避けるこども食堂も増えていますが、その場で食べなくても”おみやげ”として渡せることも強みです。

一方はお金を払って食料を捨てている人がいる。一方では食料を求めている人がいる。それなら求めている人に捨てている人が食料を渡せば全部解決ですね。

画像はイメージです
画像はイメージです 出典: PIXTA

簡単に「渡す」ことができないリアル

ここで必要になるのが譲渡手段です。

寄付するためにも物理的な課題があります。大きな企業だと一度に数万個の寄付をしたいと言われるのですが、こども食堂は大きいところでも参加者は200名くらい。単一のこども食堂で処理しきれる量ではありません。そこで寄付者の手元から全国のこども食堂への配送手段が必要になってきます。

企業が配送してくれることもありますが、配送費の稟議(りんぎ)が通らない企業もあります。最近は非常食以上に、食品関連企業から作り過ぎた一般食品の寄付をしたいと連絡があるのですが、物理的に移動することができないと結局捨てることになってしまいます。

食料の過剰と不足を、食料で解決

この配送費をなんとかできないか悩んでいた時に、SDGsイベントでたまたま出会ったのが株式会社パン・アキモトでした。同社は世界で初めてパンの缶詰を大量生産したメーカーで、こどもたちからもおいしいと評判でした。こども達の口に合わない非常食はこども食堂でも引き取り手がつかないので、私としてもおいしいものを買う企業が増えてほしいと思っていました。

一方でシェアを拡大していきたいのはメーカーとして当然ですし、こどもの健全な成長を後押ししたい気持ちは両者とも同じでした。相談の結果、1缶あたり10円が寄付になるこども食堂支援の非常食を作ってくれることになりました。

この寄付金は、リアルタイムで発生しているフードロスや善意の寄付食材の配送に使われます。非常食においしいものを選ぶだけでフードロス問題を解決しつつこどもたちの健全な成長を後押しできるのです。

出典: 筆者作成

簡単にまとめるとこうなります。
・食料が余って困っている人がいる
・食料が足りなくて困っている人がいる
・余ってる人から足りない人に食料を送れば解決
・しかしそれには送料が必要
・この送料を生みだす寄付つきの商品を作ってもらった

「保存水」のソーシャル化も考える

防災対策に必要な備蓄は食料だけではありません。食料と同様に「水」も重要です。

これも寄付したいところですが、蛇口からいくらでも飲み水が出てくる日本ではあまり喜ばれません。そして水は重いので思いのほか多額の送料がかかってしまいます。そのため寄付はあまり現実的ではありません。

防災上、とても重要な水ですが、ここで注目したのが来社した客に水やお茶を出す企業があることです。賞味期限内ならおいしく飲めますから、期限が近くなったものを応接時に配れば消費できます。

とはいえ「5年保存水」などと書かれた水を賞味期限1カ月前に出されたら大抵の客はドン引きです。大義無き在庫処分なのが見え見え。そこで、あえて保存水としての機能性ではなく、これも売り上げの一部がこども食堂の支援になることを訴求したデザインの保存水を作ってもらいました。作ってくれたのは大手コンビニブランドのミネラルウォーターも手がける製品力の高いメーカーです。大手コンビニのミネラルウォーター品質なので安心して提供してもらえます。

コロナのこともあり、しばらくの間リアル商談は少なめかもしれません。しかし、コロナが落ち着いた数年後に接客用に水を買うくらいなら、将来的に使える可能性のある保存水を選んだ方が良いのではないでしょうか。数年後に使えれば、ゴミが減らせる上に応接用に水を買う必要もありません。そしてパンの缶詰と同様に、これを選ぶだけでフードロス問題を解決しつつこどもたちの健全な成長を後押しできます。

出典: 筆者作成

製造は「受注の都度、必要量」

ということで、パンの缶詰と保存水についてそれぞれ別メーカーに提案をして製品化を実現してもらいました。これらの製品自体がフードロスになっては元も子もないので、基本的には受注の都度、必要量を製造してもらっています。

このように、社会の課題と課題を相殺する製品設計をすることで新たなビジネスを創ってもらった結果、一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会から、2製品を併せてソーシャルプロダクツ賞というアワードを受賞しました

しかしあまりヒット製品になっていないのが実情です。なぜでしょうか?

そこまでヒットしていないシンプルな理由と、今後のテコ入れ方法についてはまた別の機会に考察してみようと思います。
 
出典: 筆者提供

秋山宏次郎

一般社団法人こども食堂支援機構・代表理事。大手企業の社員時代から他社や行政に様々な提案をし、10以上の新規プロジェクト発起人として多くの案件を実現に導く。SDGs関連のイベントも主催。監修した「こどもSDGs なぜSDGsが必要なのかがわかる本」は5ヵ月で7刷のベストセラーに。その他、大学での授業、講演、執筆活動など幅広く活動している。

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withnewsでは、秋山さんのコラムを不定期で配信します。
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